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北海道の大自然に佇むログハウスの書斎 作家・動物学者畑正憲さん

フィンランドから丸太を輸入

書斎の南面の窓の外は梨や林檎の木が立ち並ぶ。今は一面の銀世界だが、春には花のトンネルになり、秋には実をつける。ここから眺める夕焼けの美しさは格別で、夕陽が雄大に沈む。

北海道・中標津町の「ムツ牧場」に建つ畑正憲さんの住まいは、赤味を帯びた丸太が深い味わいを醸し出す築32年のログハウス。
「当時、よく北欧を訪れていて、フィンランドで泊まった宿がログハウスだったのです。すごく気に入って、丸太はもちろん、建具や家具も欧州アカマツ材でオーダーして輸入しました。ヘルシンキからはるばるシベリア鉄道経由で苫小牧の港まで運ばれてきたんですよ。新築の頃は白木でしたが、年月を経て、ほら、こんなにいい飴色になりました」と微笑む。

牧場は70万㎡にも及ぶ広大な敷地で、数十頭の馬が草をはみ、野鳥やエゾモモンガなどさまざまな野生動物が棲息する。キタキツネがやってくると愛犬たちが騒ぎ始めるので、すぐにわかるそうだ。

真っ赤に染まる夕暮れが好き

デスクの後ろに飾られたユーカリの木の絵はブラジルで出会った一枚。忘れられないエピソードが秘められていた。

畑さんが最も長く過ごすのが南側にある書斎。続きに膨大な蔵書を収めた書庫もある。執筆に熱中し、気がつくと丸一日経っていることも珍しくない。この部屋から『人という動物と分かりあう』『ムツゴロウの動物交際術』など、多くの名著が生まれた。そんな畑さんの姿を見守るかのように、デスクの背後の壁にはユーカリの木を描いた大きな絵が飾られている。
「ブラジルのリオグランデという町の古いゴルフクラブを訪れたとき、壁にかかっていた絵です。僕が見とれていると、白髪の大男が『お前、買わないかい?』と声をかけてきました。絵を描いた本人だったんです。値段を聞くと、1000ドルでいいという。後から彼はグレウスという名の知れた画家だとわかりました。眺めているとブラジルの空気が伝わってくるようで、この絵だけは手放さずにずっと大切にしています」

「旅行に行くとトランク1個分の本を買ってくるから、書庫の本は増えるばかりです」と目を細める畑さん。

書斎の窓の外には300本以上もの梨と林檎の木が育っている。今は一面の雪景色だが、北国の遅い春を迎えると、ピンクや白の花が咲き誇り、まるで桃源郷のよう。そして秋にはたわわに果実がみのり、人間だけでなく、小鳥や動物たちのご馳走となる。
「窓から広がる夕暮れの景色が大好きなんです。火事になったかと思うくらい真っ赤な夕焼けが広がって、溜息が出る美しさです」
物音ひとつしない静かな大自然の中で、時間を忘れて心おきなく読書にふけり、ときに絵筆を握る。世界を旅してまわり、仕事で東京に滞在することも多い畑さんにとって、木の温もりに包まれた書斎は、自分に還ってホッとするかけがえのない場所なのだろう。

畑正憲 (はた まさのり)

1935年福岡市生まれ。東京大学理学部卒業後、学研映画に入社し、記録映画の制作に携わる。その後、作家として著作活動に従事する一方、1972年に北海道に動物王国を建国。1980年より21年間にわたって放映された「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」により、「ムツゴロウ」の愛称で人気を博す。1968年に『われら動物みな兄弟』で日本エッセイスト・クラブ賞、1977年に第25回菊池寛賞、2011年に第1回日本動物学会教育賞を受賞。

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
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