子どもをすくすく育む家 2
AERA with Kids ☓ ミサワホーム
「AERA with Kids」前編集長の中村正史さんとミサワホーム商品開発部の佐藤悦子による、「子育てと住まい」の対談第2回。
コミュニケーションしやすい家、地域の中のつながり......。
お話しは、深く静かに盛り上がっていきました。
会話上手は子育て上手 「縁側空間」でコミュニケーションを
中村 子どもがいくつの時に家を建てるか。子どもの年齢によって、間取りや部屋に求める機能が変わります。どうお考えですか?
佐藤 これまで日本では、住まいをいったん建ててしまうと、増改築などの手をあまり入れてこなかったのですが、住まいというのは「硬い箱」ではなく、家族が幸せに暮らしていくための「巣」であってほしいですよね。もっと優しく、柔軟に考える必要があると思います。住まい手のニーズの変化に応じて「編集できる家」。それに、日本的な感性を育んでくれる家ですね。重厚な壁でがっちり囲まれていないと部屋と認識できないのが西洋の人々ですが、日本人は従来、柱や障子を部屋の境界として認識できる感性を育んできたのです。子どもの年齢に応じて、そういう日本人ならではの感覚を上手に育みながら住めるように、私たちは住まい手の方々と一緒に住まいづくりを考えていきたいんです。
中村 なるほど。家は子どもの成長、家族の成長の場だから、状況に応じて変わっていくべきものだという考え方ですね。そもそも家ってなんだろうって考えると、コミュニケーションを育む場だと思うんです。私どもの編集部では「会話上手は子育て上手」と言っていますが、親子の会話は子どもが語彙を覚え、聞く力を持ち、自分の意見を伝え、そして社会への関心を広げることにつながっていく。つまりは、コミュニケーションこそが、子どもの知性を育む有効な方法なんですね。そう考えると、子育て中の家は、いろんな人が「こんにちは」と入ってこれる、コミュニケーションの機会がどんどん広がる家が理想でしょうね。
佐藤 たとえば縁側から、いろんな人が「こんにちは」と入ってこれる家とか?(笑)。じつは、私たちは「縁側空間のある家」を提案したことがあります。
中村 縁側?私は九州出身なので、育った家には縁側も土間もありました。懐かしいなぁ。
佐藤 縁側は、建物の外でもあり、内でもある。いろんな人がちょっと立ち寄って、段差に腰掛けやすい空間ですよね。それに、室内の土間には、少々の汚れは気にしない気楽さや、夜のひんやりした空気から蓄えた「冷気」を日中に放出する機能もあり、自然を活かした暮らしが可能です。気のおけない人同士がコミュニケーションをするための恰好の空間なんです。
中村 そういえば、子どもの時に私が「いろんな大人がいるんだ」と学んだのも、縁側でした。今なら、縁側のある家の子は、人気者になれそうですね(笑)。塾やお稽古ごとで忙しい今の子どもたちは、友だちの家に遊びに行くことが減っていますが、縁側があれば、みんながもっと自然に集まってきそうですね。
佐藤 建物の外側、それに軒下の縁側だけでなく、「腰掛けられる段差」が土間と一緒にそのまま室内に入り込ませた提案も併せて、「縁=en空間」と呼んいます。「新しい"縁"を育める縁側、いかがですか?」と消費者インタビューでお聞きしたら、あるご主人は「友だちの家にあったらいいな。いつでも遊びに行くぞ!」って。
中村 「友だちの家」ですか?自分勝手ですねぇ(笑)。
共働き家庭が求める「地縁」のつながり
中村 教育媒体をつくっている立場から思うのは、とにかく子どもが小さいうちに親子でいろんな話をする習慣をつけてくださいということです。大学生、社会人になってからだと、もう手遅れなんです。リビングルームで勉強させようという風潮もありますね。よかれと思って与えた個室が"孤室"になってしまいがちだからと。
佐藤 そうですね。結局子どもにとって最も大切なのは、家の中に"大好きな空間" "家族と話せる空間"があること。ひと昔前でいう「みかんと炬燵」のある部屋かもしれません。
中村 働くお母さんが増えたから、なおさらでしょう。働くお母さんたちは、限られた時間の中で、子どもとどう密度を上げてコミュニケーションしていくかを考えていらっしゃる。佐藤さんも、そのお一人ですよね。
佐藤 ええ。家族の協力のおかげで成り立っていますから(笑)。それでも、ときとしてキャパ・オーバーになることもありますが。そんな時にありがたいのが、学校の先生やご近所の方など、両親以外の大人の目なんです。
中村 まさに「地縁」。暮らす地域の中の、プラスアルファの目ですね。共働きで、子どもが両親のいない家に帰ってくるのが当たり前の今、たとえ一戸建ての家でも、庭と庭をつないでしまうとか、先ほど話に出た縁側空間をオープンにするとか、集合住宅的につながっていく、つなげていく必要が出てきているんではないでしょうか。
佐藤 はい。当社も、「点」としての「住宅」を提案するだけでなく、点と点がつながり、そこから生まれる「面」=「地域」としての提案も考え始めています。住宅メーカーの責任は大きいとあらためて思っています。
中村 住まいと子どもの話題は尽きませんね。住まいづくりのこれからが、ますます楽しみです。
中村正史(なかむらまさし)
「AERA with Kids」(朝日新聞出版)前編集長。長年にわたって教育問題に携わり、「週刊朝日」副編集長、「AERA」誌面委員、教育・ジュニア部部長などを歴任。「AERA with Kids」「AREA with Baby」の企画・発行に携わる。

佐藤悦子(さとうえつこ)
商品開発部で戸建住宅の企画・設計に従事。
「住まいは巣まい」という企業理念の下で、子育てを強く意識した住宅の企画開発やキッズデザイン関連の業務を担当。自身の子育て経験を生かしながら、子どもと家族とともに成長する家づくりを目指している。

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