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庭はもう一つの部屋という想い英国園芸研究家ケイ山田さん


長野県蓼科高原にある「バラクラ イングリッシュ ガーデン」は、ケイ山田さんが創り出した日本初の本格的な英国式庭園だ。
ケイ山田さんがデザインするイングリッシュガーデンには、「庭はもう一つの部屋」という想いが込められている。

自然のハーモニーに満ちた英国庭園の美に魅了されて

緑のアーチの向こうに素焼きの壷を配置してひとつの景色をつくる。

クレマチスで覆われたドーム型のエントランスをくぐると、レモンライム色の葉を天高く広げた黄金アカシアの大樹が抱擁するように出迎えてくれた。オープンして26年。「バラクラ イングリッシュガーデン」の歴史と共に生長してきたシンボルツリーである。約1万平方メートルにも及ぶ敷地を散策すれば、つるバラのアーチやオベリスク、素焼きの大鉢などがバランス良く配され、樹木や草花が織りなす美しい景色に目が潤う。
ケイ山田さんがイングリッシュガーデンに初めて出会ったのは、今から30年以上前のこと。「バラ色の暮し」という自身のオリジナルブランドのデザイナーとして、服の素材を求めてヨーロッパの国々を巡るなかで、ひときわ心惹かれたのが英国の庭園だったのだ。

大きなコンテナはどれも花盛り。素敵な洋館と植物の調和が美しい。

「人の手が加えられているのに、全く人工的だと感じさせないナチュラル感のある庭づくりに心が打たれたのです。四季折々の植物が楽しめるのはもちろん、樹木が葉を落とす冬の景観までも美しくデザインされているのが素敵で。日本でこんな英国風の庭のあるゲストハウスをつくって、自然のなかでお客様をもてなしたいという想いが私の中に沸き上がりました」 しかし、今でこそ店頭にさまざまな苗種が並ぶが、当時はイングリッシュガーデンにふさわしい植物の種類が日本にはほとんどなかった。「つくるからには真似はイヤ」と本物にこだわったケイさんは、英国からまず2500種の輸入を試みる。ところがたった1種の植物に虫がついていたために検疫で全部返されてしまったのだ。

プライベートガーデンの入口。壁を這うツタは秋には赤く紅葉する。

「心の底からガッカリしましたが、気を取り直して翌年は土をきれいに落として輸入し、畑で養生させてから植え込みました」
また、レンガの張り方、剪定の仕方ひとつ日本とは違うことから、地元の業者はお手上げだった。ならば石工もガーデナーも本場イギリスから呼ぶしかない。試行錯誤を繰り返し、ようやく庭園の形をなす7年目までは苦労の連続だったと振り返る。

ライフスタイルによって理想の庭のあり方は変わる

つるバラやパンジーで彩られた外壁も素敵な雰囲気。

イングリッシュガーデンに憧れる人は多いが、住む人のライフスタイルによって理想の庭のあり方は異なってくる。眺めるだけでいいのか、そこでくつろぎたいのか、庭いじりをとことん楽しみたいのか。「まず庭とどういう付き合い方がしたいのかを明確にしてから植栽プランを立てて」とケイさん。たとえば忙しさのあまり、庭の手入れに時間を取られるのがストレスになるようでは本末転倒である。
「そんな方には、草花ほど手間がかからない高木や灌木を多用した庭をおすすめしたいですね。種類を選べば花や実も楽しめますから」

もうひとつ忘れてならないのが環境である。土壌の性質、風向き、日当たり、気候などを知って、環境に合った植物を選びたい。
イングリッシュガーデンでもっとも大切なのは、「骨格」をつくることだとケイさんは考えている。
「よく失敗しがちなのが、最初に骨格、つまり全体のデザイン構成を考えないで、好きな植物を手当たり次第植えてしまうことです。生長してから手が付けられなくなり、困って相談にみえる方は多いですね。特に高木はどこまで高く生長するのかを確認し、庭の大きさに合わせて選んでください」

庭を家と一体になったアウトドアリビングに


庭と建物は別々の存在ではない。両者が一体となって、一つの住環境をつくりあげてゆく。したがって庭をつくるときには、家とどのようなつながりを持たせるかもあらかじめ考えておきたい。
「私の師であるジョン・ブルックス氏は、『庭はもう一つの部屋』という気持ちでデザインしなさいと言いました。この言葉を聞いたとき、なんと素晴らしい考え方だろうと心の眼が開かれた思いがしたものです。ですから私は屋内から出入りしやすい形やリビングのソファーからの眺めも考慮して庭を設計しています」

緑に覆われた風情豊かな洋館。

そんなケイさんが暮らすのは園内に佇む3階建ての木造の洋館。リビングの外にはレンガ敷きのテラスがあり、芝生の美しいプライベートガーデンが広がる。このテラスでお客様とお茶を飲んだり、本を読んだり、庭をアウトドアリビングとして活用している。まさに「もう一つの部屋」である。

ケイ山田さんが暮らす洋館の前に広がるプライベートガーデン。季節の草花が美しく咲き誇る。

バラクラ イングリッシュ ガーデンを見てもわかる通り、良い庭は一日にしてならず。ガーデンライフを楽しみながら、年月をかけて育てていくところに醍醐味がある。「決して焦らないで。そして神経質になりすぎないで。失敗したら、またやり直せばいいのですから。子どもの成長を見守るように、ゆっくりと慈しみながら育てていきましょうよ」とケイさんは素敵な笑顔の花を咲かせた。

ケイ山田 (ケイ・ヤマダ)

英国園芸研究家。ライフスタイルを提案するブランド"バラ色の暮し"を1972年に設立。服の素材を求めてヨーロッパをまわるうちに、英国の庭の美しさに魅せられ、1990年に長野県茅野市に本格的英国式庭園「蓼科高原バラクラ イングリッシュ ガーデン」をオープン。2002年、世界で最も権威のある「チェルシー・フラワーショー」の最難関部門で準金賞を獲得。現在、公共や個人の英国庭園のデザインなど幅広く活躍中。

バンクラ イングリッシュガーデンはこちら

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