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ご縁とタイミングこそ家づくりの鍵イラストレーターめぐろみよさん

記念樹のキンモクセイがアクセントになっている外観。

16年前、土地を購入してアトリエを建てたイラストレーターのめぐろみよさん。
自分にとって居心地のいい空間を求めて、約1年間、契約から竣工に至るまで、アトリエづくりに奮闘しためぐろさんに、当時のことを伺いました。

絶妙のタイミングで出会った運命的な土地

アトリエにはめぐろさんの素敵な作品がところ狭しと並ぶ。

私がアトリエを建てた経験から、思うのは「家づくりはご縁とタイミングが大事」ということです。
もともと自宅近くにアトリエを借りていたのですが、税理士さんに「家賃を考えたら買ったほうが得策ですよ」と言われ、その気になりつつあったとき、たまたま一枚のチラシに目をとめました。
それは自宅近くに建設中の新築マンションの広告で、部屋のつくりは私の希望に叶うものでした。ワクワクしながらモデルルームへ行ったのですが、そこは思い描いていたイメージとはまるで異なる空間でした。アトリエには愛犬パトも一緒に通勤したかったのですが、ペットも不可。これではマンションを諦めざるをえず、がっくりと気落ちして帰ってきたのです。
それでも、買おうという気持ちのボルテージは高まるばかり。そんなときに、自宅のすぐそばで、土地が売り出されていることに気づいたのです。それは、建築条件付きの土地で、私は「ここしかない!」という運命的な出会いを感じました。「ここなら自分が欲しいと思うアトリエがつくれそう!」と、ピンときたのです。
3日後には、土地売買の仮契約を交わしていました。まさにご縁とタイミングがピタリと合ったからこその早ワザです。

2階は打ち合わせスペース。3階への吹き抜け部分から下げられた吊り椅子は、めぐろさんのこだわりのひとつ。エレガントな曲線が空間にやさしく揺れる。これはめぐろさん自身が天井から吊り下げたという。

ほんの少し前までは、自分が家を建てるなんて思いもしませんでしたから、当時の私はずいぶん向こう見ずでした。「建築条件付きの土地って何?」「この価格は高いの?それともお買い得?」「契約はどうしたらいいの?」といった具合で、不動産については何も知らなかったのです。むしろ知らないことが幸いし、タイミングを逃さずにすんだともいえます。
土地を買う、家をつくるという行為は、少し結婚と似ているのかもしれません。結婚も、男女の出会いというご縁と、「今なら」というタイミングが肝心。実際、私の場合はまさにそのふたつが重なることで、居心地のいいアトリエを手に入れることができたのですから。また、アトリエを建てようと思った16年前は、景気が低迷していたとはいえ、現在ほど深刻な状況ではありませんでした。そんな時代も家づくりを後押ししてくれたと思います。

プロの現実的なアドバイスでしっかりできた資金計画

1階には和室があり、客間としても利用。京都で見つけたうさぎの屏風がよく似合う。

土地を見つけたのはいいのですが、今度はお金を準備しなくてはなりません。買いたい気持ちは一人前でも、お金については不動産と同じぐらいの素人。そこで税理士さんに、現実的かつプロフェッショナルな視点からのアドバイスをいただきながら進めることにしました。
そもそも、どれほどの資金を用意したらいいのか。不動産を買うなら、総額の1割以上のお金を別に用意しておくようにとは聞いていました。消費税や不動産屋への仲介手数料、印紙税、登記料、不動産取得税のほか、各種事務手続きにかかる費用も必要になります。それに引越しや新しい家具の購入代金まで加えると、相当の余裕をみなくてはなりません。
ある程度の自己資金はありましたので、不足分を銀行ローンで補うことにしたのですが、銀行の審査がまたドキドキものでした。有限会社とはいえ小さな個人事務所の代表にすぎない私に、多額のお金を貸してくれるのかどうか。税理士さんと相談し、銀行へは必要書類のほかにこれまでの作品をいくつか持参して頼むことに。偶然にも、銀行のローンセンターにいた女性担当者が私のイラストを知っていたというラッキーもあったのでしょう。私の心配をよそに、すんなり審査もパス。それでもまだまだ油断は禁物でした。

めぐろさん手づくりの表札が迎えてくれるエントランス。

というのも、私のような注文住宅では、いったん工事が始まると、「払えなくなりました」ではすまされません。建築条件付きの土地は、土地の売買契約から3ヵ月以内に工事を始めなくてはならず、いつ、どれだけの金額を支払うのか、計画的に考える必要がありました。結局は、上棟式、木工事の完了時、引渡し時の3回に分けて支払いましたが、総額は当初を大幅に上回ってしまいました。
なぜなら追加でいろいろとオーダーしてしまい、完成までの間にいくつかの変更があり、そのたびに金額が変わっていったからです。私は、埋め込み式スピーカーを付けたい、建具にチェッカーガラスを入れたい、ワイヤー照明にしたいなど、あれやこれやと思いが募り、それに比例して請求額もどんどん膨れ上がったのです。

めぐろさんがアトリエを建てたときの様子をつぶさに語った『私とパトが建てた居心地のいい家』(講談社SOPHIA BOOKS)。間取り、建具、パーツ選び、材質や色など、自分らしさへのこだわりがイラスト入りで描かれている。ちなみに愛犬パトちゃんはすでに安らかに眠り、今はパト丸君がめぐろさんとともにアトリエで過ごしている。

契約したのが冬晴れの1月。桜も散った4月に着工し、以来毎日のように愛犬パトと現場に通い、工事をつぶさに見ていました。同時に、たくさんのショールームへ足を運んで設備やパーツなどを選ぶ日々。もちろん仕事をしながらの奮闘でしたが、自分の目と足で納得のいく家づくりをしたという実感があります。そして約半年後の秋も深まる頃に完成、引越しました。師走の慌ただしい12月に工事費用の最終精算をすませたときには、心の底からほっとしました。
あれからもう16年。こうして思い起こしてみると、家づくりへのトキメキが懐かしく思い出されて、歴史を重ねてきたこのアトリエが、ことさら愛おしく感じます。

めぐろみよ

新潟県に生まれる。イラストレーター。テキスタイルデザイナーを経て、セツ・モードセミナーを卒業。女性誌や広告のイラスト、本の装幀画などで活躍するほか、エッセイやオブジェも手がけている。著書に『もののなまえずかん』(学研)、『手作りスケッチ』(ほるぷ出版)、『みつける・集める・つくる』(集英社be文庫)、イラストで綴るマクロビオティックの本(大和書房)などがある。

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