マイナス45℃の過酷な自然環境 南極の建物に求められる性能とは第58次日本南極地域観測隊長本吉洋一
夕暮れの南極昭和基地。写真中央の建物が管理棟。 撮影/第55次南極観測地域隊 鯉田隊員
第1次南極地域観測隊が観測船「宗谷」で日本を旅立ったのが、1956年11月のこと。 今年60周年を迎えた南極観測は、その長い歴史のなかで数多くの成果を上げてきた。 活動拠点である昭和基地の建物と暮らしについて、3度の隊長経験を持つ本吉洋一さんに伺った。
1957年の昭和基地建設によって、本格的な幕開けを迎えた日本の南極地域観測。その前年に始まった観測隊の派遣は、2016年11月に出発した隊で第58次を数えるまでになっている。
「南極は、わずかな油断で、あっという間に命を落としてしまう場所なんです」
南極の自然環境の過酷さを語ってくださるのは、8回もの南極観測隊の参加経験を持つ本吉洋一さんだ。
隊長が暮らす「居住棟」。秒速60mのブリザードが吹き荒れると、風向きによっては56tの凄まじい力がかかる計算になる。3日以上も続く暴風雪にも耐えるためには、強靭な構造と高い施工精度が不可欠だ。 撮影/中山由美 写真提供/朝日新聞社
「とりわけ厳しいのは、気温と風です。昭和基地では、最も下がったときの気温がマイナス45℃。ブリザード(暴風雪)では、ひどいときで秒速60mもの強風が吹き荒れます。視界が奪われ、ときには自分の手の指すら見えないほどです。もちろん外出は不可能。建物内でブリザードが過ぎ去るのを待つしかありません。そこでは建物が命綱です。建物が壊れてしまったら命を守るすべがないのですから」
3~4日間ほどは続くというブリザード。その間、隊員たちは、かなりの恐怖感と戦わなければならないのではなかろうか。
「いいえ、意外とふつうに暮らしていますよ。建物が非常に頑丈にできていますから。室温も20℃以上に保たれて、とても快適です」
第10居住棟(1968年建設)の120mm木質パネル。室内と室外の温度差が最大70℃にもなる過酷な環境で快適に暮らせる断熱性能を備える。
快適性を実現しているのは、優れた断熱性・気密性をそなえた木質パネルと、高い強度が得られるモノコック構造だ。
木質パネル工法による南極基地の建物は、耐久性にも優れている。場所が場所だけに簡単には建て替えられない。最も古いのは、第1次の観測隊が建てたもの。築60年になるが、今も現存している。
南極で隊員が暮らす約4畳の個室。室温が常に快適に保たれているため、Tシャツなどの軽装で過ごす隊員もいる。
こうした南極の建物は、日本で一度仮組をして強度などを検証し、その後、解体して現地へ運ばれる。現地での施工は、専門家の指揮のもと、研究者など職種に関係なく、多くの隊員が手伝って行うという。
「建築の素人である隊員が施工しても、高い精度で組み立てられるようによく考えられています」
本吉さんは、最後にこう付け加えてくださった。
「南極の生活は、建物への信頼があるから成り立っています。屋外での活動を終えて建物に入った瞬間、心からホッとします。まさに我が家という感じですね」
安心と快適を実現している南極の建物。高断熱、高気密、高耐久、高精度など、ここで鍛え上げられた技術は、日本での高度工業化住宅の発展に活かされている。
本吉洋一(もとよし・よういち)
1954年生まれ。大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所教授。極域科学資源センター長、極地工学研究グループ長、広報室長を務める。専門分野は地質学。2016年11月に出発した第58次南極地域観測隊の隊長。南極地域観測隊に参加するのは、1981年から2009年の間に計7回、今回で8回目となる。
南極をもっと知ることができる!
国立極地研究所 南極・北極科学館
住所/東京都立川市緑町10-3
http://www.nipr.ac.jp/science-museum
南極や北極ではどんな観測や研究がおこなわれているかを紹介する広報展示施設として、2010年にオープン。南極観測で実際に使用された数多くの「実物」が展示された館内では、南極の氷や隕石をはじめ、南極点まで走破した雪上車などの実物に触れることができる。入館無料で、撮影も自由だ。
お子さまを健やかに育てるための住まい(2)
お子さまが安全に暮らせるための住まいは、ちょっとした設備の工夫から実現が可能です。お子さまの安全のための例を住まいのスペースごとにご紹介します。
リビング
▶ソフトクローズドア
子どもの家庭内事故の上位である指挟み対策として、危険性の高い引き戸や開き戸、折戸にソフトクローズ金物を採用してはいかがでしょう。ダンパー機能により扉が閉じきる手前からゆっくりと閉まるまで、家族みんなに安全です。閉め忘れ防止にもなるうえ、気になる開閉時の騒音も軽減することができます。
▶滑らない床材にする
フローリングには、滑り止め機能をもつワックスを塗るのが効果的です。また、コルクのように滑りにくく、柔らかい素材をフローリング材に選ぶことで、さらに安全性を高めることができます。
▶収納を設ける
たばこや電池などの小物類を片付けられる収納スペースを設けることで、お子さまの誤飲事故を防ぐことができます。さらに、収納スペースの扉や引き出しにロック機能を取りつけるとより安全です。
▶マグネット&扉付きコンセント
アイロンやストーブ、ホットプレートなどのコードに足を引っ掛けてやけど・・・想像だけでも怖い事故を予防するため、マグネットが外れる安全設計のコンセントを採用するとよいでしょう。
キッチン
▶出入り口にフェンスを設ける
子どもの行動は予想がつきにくいものです。火や刃物を使うキッチンにはなるべく入れないようにしましょう。
▶コンセントの設置
床に長い電気コードを這わせると転倒の原因になりかねません。ミキサーや炊飯器などを使う時は、キッチンまわりにコンセントがあると危険を減らすことができます。
▶ソフト排気タイプの食洗機
一般的な食洗機は蒸気の吹き出し口がちょうど子どもの顔の高さにあります。蒸気を低温にしてから排出するソフト排気タイプなら、万一蒸気に触れても火傷を防止できます。
階段
▶滑り止めを設置する
階段は滑り止めを設置することで踏み外し事故を防ぐことができます。市販の滑り止めには、フチ部分に貼りつけるシールタイプと置くだけのマットタイプなどがあります。いずれもしっかりと階段に固定できるものを選ぶようにしましょう。
▶足元灯をつける
足元に照明をつければ安全度が高まります。自動で点灯・消灯するセンサー付きの省エネタイプもあります。
▶手すりをつける
階段の手すりの高さは踏み板から70〜90cmが適当とされていますが、お子さま用にもう一本低めの位置につければさらに安全です。
浴室
▶手すりをつける
浴室の出入り、洗い場の立ち座りの時など、自然に手のいく位置にしっかり取り付けましょう。
▶滑りにくい床材を選ぶ
滑りにくいザラザラした感触の床材を選ぶことで、入浴中の転倒を防ぎます。
▶高温のお湯が出ない混合栓にする
サーモスタット付きの混合栓にすれば、温度調整ができ、安全ボタンがついているので急に高温のお湯が出ることがありません。
お子さまが安全に暮らすためのポイント
毎日の心がけで安全な住まいを実現
日々のちょっとした心がけでお子さまにとって安全な住まいが実現します。
<事故を防ぐための5つの注意点>
1.お子さまがイスの上など高い場所にいる時は目を離さない
2.入浴中は目を離さない。入浴以外ではお子さまを浴室に近づかせない
3.火や電気製品に近づかせない
4.タバコや電池など誤飲の心配のあるものをお子さまの目に触れるところに置かない
5.お子さまが使用するものはできるだけキッズデザインの商品を選ぶ
光や木々の美しさを楽しむ居心地の良い住まい
[新潟県 Iさま邸]
シンプルなスクエアを組み合わせた美しい外観が目を引くIさま邸。若いご夫婦のデザインイメージを叶えたお住まいは、空間にも素材にもこだわりが光ります。
2m85㎝の天井高が伸びやかさを生むLDKは、板張りの天井とミャンマーチーク無垢材のフローリングが調和した木の温もり溢れる空間。くつろぎのリビングは、床から天井まであるフルハイトサッシの効果で、まるで庭とリビングがひと続きに繋がっているかのようです。
5.1Chサラウンドのスピーカーから流れるジャズを聴きながらソファでくつろぐIさまは「この空間は格別ですね。窓から庭の木々を眺めるひととき、ほっと心が和みます」と微笑みます。
一方、ダイニングはあえて窓から離して、お家に優しく包まれた心地よさと安心感のある雰囲気を出しています。床暖房の入った無垢のフローリングは「暖かくて、肌触りや香りが良く住み心地も満点です」と笑顔の奥さま。
照明は、ダウンライトで壁を照らしてアクセントにしたり、間接照明を使って明るさのメリハリをつけてお部屋を演出しています。
ダイニングキッチンは賑やかに会話をしながら食事が楽しめるよう、天井の間接照明とペンダントライトで明るく演出。リビングは一人でもゆっくりとくつろげるよう、テレビの上のダウンライトだけに絞り、落ち着きがありリラックスできる環境にしています。
「一つのLDKの中に、庭へのつながり方や明るさに違いがあり表情豊かで、気分に合せて居場所を変えて楽しんでいます」とIさまは語ります。お二人の美意識をデザインしたお住まいで心地よい暮らしを満喫されています。
江戸時代には五節句のひとつでもあった七草の節句
お正月のシメにお腹にやさしい七草粥
1月7日の朝に七草粥を食べる習慣がありますが、皆様は実践されたことがありますか?七草粥とは、春の七草(セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ)を入れて炊いた粥のこと。どうして7日に七草粥を食べるのか、由来や簡単な作り方などをご紹介します。
中国の汁物を食す習慣が、日本風に変化したのが七草粥
かつて中国では、1月7日を「人日(じんじつ)」といって人を大切にする日とし、7種類の若菜を入れた汁物を食べて、無病息災を祈る風習がありました。
一方日本では、年の初めに若菜を摘んで食べ、自然から新しい生命力をいただく「若草摘み」という風習がありました。さらに、小正月の1月15日に小豆粥を食べ、邪気を払い一年の健康を願うという風習もありました。
中国の人日の風習が日本に入り、若菜摘みと小豆粥の風習に影響を受けて出来上がったのが、1月7日に春の七草を入れた粥を食べる七草粥の風習です。
七草粥を食べ無病息災を願うのは、若々しい青菜の生命力にあやかるといったまじない的な意味だけでなく、青菜の不足しがちな時期にそれを補うという栄養学的な意味もあります。また、正月のご馳走を疲れた胃腸をいたわり、日常生活へ戻る節目の意味も込められています。
レシピはいろいろ。最終的にはお好みで
それでは、七草粥をどのようにして作るのでしょうか?
①米1合を研ぎ、30分ほど水に浸します。②水を切った米を土鍋に入れ、水1リットルを入れて軽く混ぜます。③蓋をして最初は強火で、沸騰してきたら弱火にして40〜50分ほど炊きます。④米が柔らかくなったら刻んだ七草を入れます。⑤七草に火が通ったら塩で味付けし、しばらく蒸らせば、4人分の七草粥が出来上がりです。
春の七草は、昔は野に出ればすぐ手に入る馴染み深い青菜だったと考えられますが、現在はスーパーなどにセットで売られています。七草は刻んで入れますが、かつては刻む際に"七草囃子"を歌ったそうです。
ご紹介したのはシンプルな塩味ですが、お好みでだしや醤油をいれてもいいでしょう。小さく切ったお餅を入れると腹持ちがよくなります。青臭さが気になる人は、あらかじめ軽く塩茹でしてからお粥にまぜてもよいです。時間が無い場合は、炊いたご飯を2〜3倍の水で炊き直す"入れ粥"という方法もあります。
お好み・生活スタイルに合わせて、七草粥を楽しんでください。
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