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限られた環境で創意工夫を愉しむ第53次 日本南極地域観測隊員堀川秀昭

昭和基地から1000km離れた「ドームふじ基地」へ向かう雪上車の隊列。一瞬たりとも同じ表情を見せない南極の美しい風景が続く。

人生、何があるのかわかりません。ある日、大工の棟梁から、携帯電話で「南極へ行くか?」と聞かれたのがそもそものきっかけでした。海外旅行はおろか、飛行機にも乗ったことのない私が、まさか南極大陸で越冬することになろうとは......。
私の任務は、昭和基地建物のメンテナンスと、自然エネルギー棟建設です。南極に到着以来ようやく生活に慣れてきた頃、なんと南極観測船「しらせ」が接岸できないという事態に。そうなると、「しらせ」から基地に運び込まれる物資には限りがあり、燃料、食料、観測用資材が最優先。建設用の資材までは手が届かず、結果的に自然エネルギー棟の建設を終えることはできませんでした。

それでも、日々、たくさんの仕事があります。わずか31人の隊員で食事からそれぞれの任務まですべてをこなすのですから、お互いに助け合わなくてはなりません。それがとても楽しいのです。というのも、そこでは誰もが知恵を絞り、次々にアイデアを出し、そのアイデアを実現するために、さらに見事な創意工夫が生まれる。南極での生活は、考える力、実現する力をどこまでも広げてくれるのです。
その延長線上? ともいえるのが、4〜5人の仲間でつくった「気まぐれスイーツくらぶ」です。限られた材料で、生チョコレート、パウンドケーキ、レアチーズケーキに、なんと生八つ橋までつくりました。八つ橋の中身はズンダでしたが。

「ドームふじ基地」で望遠鏡の架台設置を終えての記念撮影。ここへは限られた隊員しか来ることができない。

また、仕事では1000㎞離れた「ドームふじ基地」への旅もありました。この基地は、映画『南極料理人』の舞台になったところで、現在は無人。そこへ天文観測用望遠鏡の架設台を設置し、観測データを収集するための布石を打つのが任務でした。5台の雪上車が隊列を組んで進むのですが、時速はなんと5〜7㎞。日中はもっぱら雪上車の運転で、食事も睡眠もほとんどが雪上車の中。

1000㎞を走破するのに約2週間も費やす長旅でした。雪と氷に埋もれたかつての基地を掘り返してみると、10年前の燃料や牛乳などを発見。燃料はもちろん凍ってはいません。牛乳も温めて飲んでみると、とても美味。
こんなふうに、南極での生活は発見と感動に満ちていて、何ものにも代えがたい素晴らしい経験をもたらしてくれました。

堀川秀昭(ほりかわ・ひであき)

1972年生まれ。1997年より東京ミサワ建設(株)にて大工として住宅の施工に従事。2011年「第53次日本南極地域観測隊 越冬隊 建築・土木部門」に参加。夏期は自然エネルギー棟建設工事等の建築工事に携わる。越冬期後半には日本最南端の基地「ドームふじ基地」の内陸旅行に同行して、天文観測架台建設工事の指揮をとる。2013年3月に帰国後、ミサワホーム(株)MRD・法人推進部にて「南極クラス」の南極先生として南極講演活動を行う。同年7月より現場復帰して大工をしながら南極先生として全国を飛び回る。

カタログ「南極のミサワホーム」
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