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街や自然とほどよくつながる住まいアーバンデザイナー猪狩 達夫

心地よい暮らしは、外とのつながりを抜きにしては考えられない。エクステリアの植栽計画にはどんな工夫が必要なのだろう。エクステリア&ガーデンアカデミー前学長の猪狩達夫さんにお話を伺った。

個人、家族、近隣、3つの小風景づくり

エクステリアデザインの目的は、①個人単位の小風景づくり、②家族単位の小風景づくり、③近隣単位の小風景づくりの3つに大きく分けられると猪狩達夫さんはいう。
「1つ目は、庭やバルコニーなど、個人と自然が対話できる空間づくり。植物を愛で、水やりや土いじりでやすらぐ『癒やしの景』です。窓辺に置く寄せ植えやハンギングバスケットもこれに入るでしょう。2つ目は、『団らんの景』。家族で屋外生活を楽しむスペースづくりです。みんなで菜園や花壇をつくったり、屋外パーティーなどミニイベントも開ける活動的なシーンですね。そして3つ目は、花と緑に彩られた街並みづくり。地域に根ざす『社会の景』です。家の前庭や花台・バルコニーを植栽や花鉢で飾り、隣人たちと共同で道路に面した生垣等を剪定管理することで、美しい街並みを創り出すことができます」。

常緑樹と落葉樹をバランス良く配置する

エクステリアをプランニングするときは、まずアプローチ、駐車場、門扉やフェンスなどの要素と住まいのつながりを考えて、機能的な動線を決めたい。ただし、アプローチは住まいの顔になり、街並みにも影響を与える存在なので、「路」としてとらえるだけでなく、潤い豊かな「空間」として演出することも大切だ。屋内の窓からどう見えるか、あるいは歩いてくる人の目にどう映るかなど、景色を意識して、アプローチを含めた庭づくりを進めたい。
「エクステリアに命を吹き込むのが植栽の緑ですが、ここで大事になるのが樹種の選定です。常緑樹ばかりを植えると暗さや圧迫感が生まれ、うっとうしくなりがちですし、かといって落葉樹だけだと冬は葉が落ちて寂しい風景になってしまいますから、バランス良く配置したいですね。花や実が楽しめる樹種を植えると、より豊かな表情になって楽しいですよ」

猪狩さんは「マイ・アウテリア」と称し、パーゴラ、デッキ、テラスなどを使った自然浴や団らんが楽しめるスペースづくりを提唱している。住宅まわりの空き空間を活用して、「瞑想空間」「夫婦の対話空間」「ミニパーティースペース」など、自分たちのライフスタイルに合ったスペースを創り出そうという提案だ。
「庭にウッドデッキやテラスを設ける場合は、どんな使い方がしたいのか、具体的なシーンを思い浮かべて計画すれば失敗がありません。たとえばバーベキューを楽しむなら、緑陰や日除けはどうしようか、何人集まるのか、テーブルからの眺めはどうか、水場は必要か...というふうに課題を明確にしていくのです」
また、隣地や道路との境界に塀をつくるときは、高さに気をつけたい。高いほど防犯に効果的だと考えがちだが、実はそうではない。いったん侵入されてしまうと外部から中が全く見えなくなるため、かえって逆効果になりかねない。透過性のあるフェンスや生け垣で、乗り越えにくい程度の高さにするのがおすすめだ。

壁面を上手に活用すれば、狭くても豊かな緑化が叶う

植物は温度が上がれば葉から水分を蒸発させ、気化熱によって周囲の温度を下げる働きがある。従って庭に樹木を植えたり、屋上緑化をすることによって冷暖房エネルギーが節約でき、都市のヒートアイランド現象の緩和にも役立つ。地表を低く覆う性質を持つササやシバなどの地被植物を植えるのも緑化に効果的だ。
また、落葉樹を窓の近くに植えれば、夏場は繁った葉で強い陽射しや放射熱の室内への侵入を防ぐことができ、冬場は落葉して暖かな陽だまりを室内に取り込めるので、エアコンだけに頼ることなく快適に暮らせる。

ただ、ゆとりのない植栽スペースに無理をして植物を植えても、環境が整わず立ち枯れさせてしまう恐れもある。そんな場合は、壁面を活用すると効果的だ。フェンスやブロック塀にツタなどのツル性植物を絡ませてもいい。
「壁から離してワイヤーメッシュを張り、緑化植物を這わせれば、小さな地面でも豊かな緑化ができますし、植物の根で建物を傷めることもありません」と猪狩さんはアドバイスする。
エクステリアと建物は切り離せない関係だ。一体にデザインすることで美しいハーモニーが生まれ、心地よい住環境が得られる。敷地条件や建物の設計にマッチした外構プランを描き、枕木やレンガ、テラコッタといったエイジングが美しい素材と植栽を組み合わせて、年月を経るほどに味わいを増す佇まいを創り出してはいかがだろう。

猪狩 達夫(いかり・たつお)

アーバンデザイナー。エクステリア&ガーデンアカデミー前学長。1959年早稲田大学建築学科卒業。菊竹清訓設計事務所に入所。カナダに渡り、トロント大学大学院アーバンデザイン専攻修了後、ロンドン滞在を経て帰国。1968年より大阪で都市計画に携わる。1972年、(株)イカリ設計を設立。2000年、兵庫県より「人間サイズのまちづくり・街並み設計賞」受賞。著書『戸建て集合住宅による街づくり手法』、編著『イラストでわかるエクステリアデザインのポイント』など。

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