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長寿社会の二世帯住宅住宅資産研究所倉田剛

税制改正による相続税の優遇措置もあって、「二世帯住宅」に関心が高まっている。具体的にはどんなメリットがあるのだろう。そして高齢化社会の「共住」はどう変わっていくのだろう。住宅資産研究所主宰の倉田剛さんにお伺いした。

強まる同居志向、資金面でもメリット大

人々が「絆」の大切さを見直すようになった今、家づくりにおいても親子二世帯の同居志向が強まっている。ひとつ屋根の下で子ども家族と暮らしていれば、老いていく親は何かと心強いし、子どもにとっても日頃から親の健康状態がわかるので、介護が必要になったときも早めに対応できる。子育ての面でも安心だ。昨今は夫婦共働きの家庭が多いが、親に子どもの面倒を見てもらえれば心置きなく働けて、保育所の待機児童問題などで悩むこともない。一方、親は孫の成長と向き合える喜びがあり、暮らしにメリハリも生まれる。孫にとっても、祖父母とのふれあいから得るものは貴重だろう。
「資金面で考えても二世帯住宅にするメリットは大きいですね。実家を建て替えれば土地代がかからず、土地から購入する場合も1軒分でいいから安くすみます。建築費用も別々に建てるより軽減できますから」と倉田剛さんは語る。

小規模宅地の特例が緩和、二世帯住宅が相続税対策に

さて、2013年度の税制改正で、2015年1月より相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられ、路線価の高い都市部では相続税の負担が大きく増えると予想されている。一方で二世帯住宅の宅地相続については優遇特例の要件が緩和されたことから、今、有利な相続税対策としても二世帯住宅が関心を集めている。
優遇特例とは「小規模宅地等の特例」と呼ばれるもので、子が親と同居していた住宅の宅地を相続する場合、適用条件を満たせば一定の面積まで相続税の評価額が80%減額されるというもの。この適用面積が330㎡に引き上げられたのだ。
それだけではない。二世帯住宅といっても、玄関やキッチンや浴室を共有する「完全同居型」、玄関は1つで他は別々の「玄関共用型」、玄関からキッチン、浴室まですべて独立した「完全分離型」といったさまざまなタイプがある。これまで内部で行き来できない「完全分離型」の場合、同居とはみなされず、優遇特例が受けられなかった。「完全分離型」でも優遇特例の対象となり、二世帯住宅の設計を考える上で選択肢が広がったのだ。将来、親が亡くなって相続した場合、完全分離型で建築した二世帯住宅なら、親が使っていた居住部分を賃貸に転用して資産の有効活用を図ることもできるからうれしい。

民間リバースモーゲージで老後の経済的自立を実現

長寿命社会では高齢者の経済的自立が求められる。それを支援する仕組みとして、倉田さんが推奨するのが、持家を年金化する「リバースモーゲージ」だ。
「自分の家に住み続けながら、その家を担保に老後の生活資金を年金の形で借り入れ、死後に一括返済する仕組みで、欧米では古くから普及しています」
ただし、日本では認知度が低く、利用件数も少ないのが現実。厚生労働省の公的制度リバースモーゲージもあるが、生活困窮者を対象にした適用要件になっているため、この先も利用は限定的だろう。そこで倉田さんが新たに提唱するのが「個人型リバースモーゲージ」ともいうべき持ち家活用である。
「持ち家を相続財産とみなすのではなく、老後の家計を助ける経営財と考えるのです。具体的には、二世帯住宅を親子の共有名義で建てたら、きちんと契約を交わして親の持ち分を毎月割賦払いで子どもに買ってもらい、毎月収入を得ます。子どもは親からちゃんと購入したわけですから、兄弟間の不毛な相続争いも避けられます」

倉田さんは他人世帯との共住型リバースモーゲージも提案する。たとえば、今は離れて暮らす子ども家族と親が将来同居したい場合など、完全分離型の二世帯住宅を建てておいて、10年間の定期借家権で当面は他人家族に貸すといったプランだ。
「あるいは高齢者が境界壁を共有するテラスハウス型の二世帯住宅を他人と区分所有で建てる。生前に持ち分をその人に割賦払いで購入してもらい、死後に引き渡すといった契約も個人的なリバースモーゲージとして検討できます。フランスでは18世紀頃からこうした契約が老後の生活資金調達の自助的な手法として定着しています」
本格的な少子高齢化社会を迎えた日本。老後の居住福祉を考えるとき、今後は他人世帯との共住も積極的に視野に入れた方がいいと倉田さんは説く。血縁関係を超えて人と人が心豊かにつながり、支え合って暮らしていく。「二世帯住宅」という建て方には、そんな未来型の居住福祉を叶える可能性も秘められているといえるだろう。

倉田剛(くらた・つよし)

1944年生まれ。住宅資産研究所主宰。一級建築士・土地家屋調査士。法政大学経営学博士、愛知工業大学経営情報科学博士、日本大学法学修士。法政大学現代福祉学部・同校大学院非常勤講師。NPO法人リバースモーゲージ推進機構理事長。国際ジャーナリスト連盟会員。日本フリーランス・ジャーナリスト連盟会員。著書に『リバースモーゲージと住宅』(日本評論社)、『居住福祉をデザインする』(ミネルヴァ書房)、他

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