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住まいの「強さ」を実現する技術とは明治大学梶川久光准教授

住まいにおける強さとは? そしてその強さを実現する構造とは?
木質構造を専門分野として研究を続けている明治大学の梶川久光准教授に、
強さを実現するための技術について、基礎的なことから教えていただいた。

●固さイコール強さではない?

強い住まい。その表現は、住まいづくりを検討している方なら、一度は聞いたことがあるはずだ。けれど、住まいの強さとは何なのだろう?具体的に考えようとしてみても、頭に浮かんでくるのは、ガチガチに固められた塊のような漠然としたイメージだ。
「固さイコール強さといったイメージを抱いている方は、確かに多いかもしれませんね。けれど、住まいの強さに必要なのは、固さよりもバランスなのです」
 そう語るのは、明治大学理工学部で木質構造建築物を研究している梶川准教授である。
「ひと口に住まいの強さといっても、何に対して強いのかという前提によって強さの種類が違ってきます。地震や台風、大雪に対する強さなのか。あるいは、傾斜地などで高い部分から低い部分にかかる『土圧』に対する強さなのか。住まいにはさまざまな強さが求められます。そういう意味では、ありとあらゆるものに対する強さが必要といえるでしょうね」
 梶川准教授の専門分野は「主に木質構造」である。強い住まいには、どのような構造体が適しているのだろうか。梶川准教授から返ってきたのは、「真のモノコック構造である木質パネル接着工法」という答えだ。
「モノコック構造とは、力を全体で瞬時に分散して受け止める『一体構造』を指します。ジェット機などにも採用されていますが、実は自然界にもある構造なのです」
 卵もそのひとつ。大事なヒナを守る卵の殻は、自然界が生み出した精緻なモノコック構造だ。

●適度な柔らかさが強さを実現

「モノコック構造は、固すぎると、全体でバランスよく外からの力を受け止めにくくなります。少しだけ柔らかいことが必要なのです。ジェット機がしなるようにつくられているのも、それが理由です」
 ジェット機のアルミ合金製の外板は、厚さがわずか1〜2㎜程度。あの巨大なボディの安全性が、そんな薄い外板で実現できるのはなぜなのだろう?
「外板ばかりが強すぎると、外からの力で接合部が先に破損してしまいます。一体構造として最大限の強さを発揮するには、全体でバランスが取れた強さが必要です」
 あの薄さだからこそ、構造体全体での強さを実現できているというわけだ。
「木質パネル接着工法のすぐれた点は、パネル同士を接着剤で強固に面接合していることと、パネルに使用している構造用合板の厚さが絶妙であることですね。加工しやすいギリギリの厚さであり、なおかつ接合部分との強度のバランスも最適になる厚さです。木質パネルはそれ自体の剛性※がきわめて高いですから、構造用合板をこれ以上の厚さにしてしまうと、外力に対して結合部が破損してしまいます。実に絶妙なバランスです」

 2×4工法(枠組み壁工法)や木造軸組み工法でもモノコック構造と呼ばれるものがあるが、違いはあるのだろうか。 「それらは構造部材が面ではなく、点で接合されています。そのため、外力が点接合部分に集中し、全体で分散して受け止めることができません。住まいにおける真のモノコック構造と呼べるのは、木質パネル接着工法だけだと思います」
 モノコック構造となる住まいは、素材に鉄を使っても実現できるのだろうか。
「0.1㎜といった薄い鉄板に置き換えれば不可能ではありません。ですが、重量はかさみますし、熱を伝えやすいため、大量の断熱材が必要になってしまいます。現実的には難しいでしょうね。その点、木は面接着も容易ですから、モノコック構造に向いた素材といえますね」
 木質パネルの強度に着目し、新構法の研究にも取り組んでいる梶川准教授。木質パネル接着工法は、これからも新たな可能性を見せてくれそうだ。

※構造物・構造部材が変形に対して示す抵抗の度合い。荷重と変形の関係を示す曲線の傾きで表される。

梶川久光(かじかわ・ひさみつ)

明治大学理工学部建築学科専任准教授。工学博士。建築構造分野における木質構造建築物に関する研究や、被災度判定計を用いた建築防災技術の研究などを手掛ける。

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
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