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住まいの「レジリエンス」はどう備えるべきか東京大学大学院教授清家 剛

レジリエンス性にすぐれた住まいとは、具体的にどのような家なのか。 求められる性能や、必要な機器、ZEHとレジリエンスの密接な関係性などの話を 官公庁の建物における耐震基準の策定にも携わる東京大学大学院の清家教授にうかがった。

──2019年度の国のZEH支援策の中に「ZEH+R(レジリエンス)」という新しい区分ができるなど、今、「レジリエンス」という言葉が注目されています。レジリエンス性にすぐれた住まいとは、どのようなものでしょうか。

清家 ひと言でいえば「しぶとい家」です。理想をいうならば、普段の快適性を緊急時でも維持できる住まいなのですが、実際に実現するのは簡単ではありません。現実的に考えると、普段は快適で、その快適性をもたらした実力で非常時にもなんとかしぶとく暮らせる家、それがレジリエンス性の高い住まいといえるでしょう。

──具体的にはどのような性能が必要でしょうか。

清家 まずは高い耐震性ですね。かつては建築基準法で定められた基準さえクリアしていればいいという考え方が多かったため、すぐれた耐震性の家を建てようとすると、大きなコストがかかるといった問題がありました。ですが、阪神・淡路大震災以降、世の中の防災意識が非常に高まったこともあり、近年では、単に基準を満たすだけでなく、地震時の建物の変形を少なくして、内装もめったに壊れないという高いレベルの耐震性能をめざしている住宅メーカーも増えてきました。耐震性にすぐれた住まいが以前よりも手に入れやすくなっていると思います。

──耐震性能の他に求められる性能は何でしょうか。

清家 高い断熱性も大切な要素です。たとえば冬季に災害が発生して電気などのインフラが停止した場合でも、断熱性の高い建物なら人が発する熱だけでもある程度の室温が確保できます。直前まで稼働させていた暖房の熱で夜をしのいだりすることも可能です。

──先生は実際に被災地に赴いて被災状況を検証する機会も多いそうですが、やむなく避難所に避難される方と、自宅でなんとか過ごせる方とでは、暮らしにはかなりの違いがあるのでしょうか。

清家 違いはとても大きいですね。常に他人と一緒にいる避難所の暮らしは、精神的にも肉体的にも大きな負担になります。仮設住宅に移れるとしても、早くて3カ月後。移った後も、仮設住宅では、広さも限られていますし、隣家の物音が壁を通して聞こえやすいため、なかには隣に遠慮してトイレを我慢するといった方もいて、皆さんご苦労されています。

──自宅での避難生活と比べると、非常に厳しい環境といえますね。

清家 レジリエンス性にすぐれた住まいに必要な要素はもうひとつあります。太陽光発電などの創エネ機器ですね。普段はつくった電気を売電することで家計の助けになり、インフラが停止した災害時には、電源となって電気製品が使えます。再生可能エネルギーを使用することで環境保護に貢献できるというメリットもありますね。

──断熱性や創エネなどは、世界的な住まいの潮流となっているZEHにも必要な要素ですね。

清家 レジリエンス性にすぐれた住まいとZEHは、とても親和性が高いといえます。言い換えると、ZEHはレジリエンス性にすぐれた住まいにしやすいということです。ちなみに、ゼロ・エネルギー住宅という考え方は、再生可能エネルギーの拡充にシフトするという世界的な流れのなかで、住まいに何ができるかという観点からスタートしたもので、国も本格普及に向けた後押しをしています。最終的にめざしているのは、「LCCM住宅」ですが、ZEHはゼロ・エネルギー住宅のいわば標準という位置付けといえるでしょう。

──先生は一般社団法人日本サステナブル建築協会の「レジリエンス住宅チェックリスト※」の監修もなさっていますね。

清家 平常時の「免疫力」、災害発生時の「土壇場力」、災害後の「サバイバル力」という3つの観点から住まいのレジリエンス度を確認しようというチェックリストです。

──チェックリストには、「災害時に出先から帰宅する方法を検討しているか」や、「階段や廊下で転ばないための対策の有無」、「運動や体力維持に努めているか」など、防災や健康に対する意識を確認する設問も多いですね。

清家 たとえば、災害時に冷静な判断を下して、瞬発力のある対応をするためにも、健康は大切です。インフラの復旧を待つ間も、体力的な不安を感じにくくなるはずです。普段暮らしている家の中には、身体に負担をかけていたり、思わぬ事故の原因が潜んでいたりすることがあります。防災や日頃の健康に意識を向けることも、住まいのレジリエンス性を高めることにつながるのです。

──平常時、災害発生時、災害後と、それぞれの健康リスクや災害リスクを理解して、その備えとなるよう考えて住まいを設計することが大切といえそうですね。本日はありがとうございました。

※ 健康を支え災害に備える住まいと暮らし「CASBEE レジリエンス住宅チェックリスト」
http://www.ibec.or.jp/CASBEE/cas_home/resilience_checklist/index.htm

清家 剛(せいけ・つよし)

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 教授・博士(工学)建築構法を専門分野として、建築生産に関わる環境負荷評価に関する研究などを手掛ける。官庁施設の総合耐震計画基準など、公的な基準類の制定に関わる多くの委員を歴任。

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