Column│新しいライフスタイルのご提案や、子育て、オーナーさまのこだわりのお宅拝見、
著名人によるコラムなど、毎月厳選した住まいに関する情報をお届けいたします。

暮らしのなかに幸せがある ジオラマを通して描く生きる力ジオラマ作家山本高樹

ミニチュア模型で情景を表現する「ジオラマ」。
数々の作品をつくりだしている作家・山本高樹さんにジオラマ制作の舞台裏や徹底したこだわり、作品に込めた想いなどをお聞きした。

人間ドラマを凝縮した世界

昭和初期の賑わう銀座をジオラマに仕立てた「モダン都市銀座」。道行く人の服装や郵便ポストなど、小物の細部も忠実に再現。

2012年に放送されたNHKの連続テレビドラマ「梅ちゃん先生」。そのタイトルバックに使われたジオラマをご記憶の方は多いのではないだろうか。かつての建物を再現しただけでなく、当時の人々の生活感まで表現されたジオラマは、その時代を体験したことのない人までノスタルジックな気分にさせ、作品に入り込ませる不思議な魅力に満ちている。
「まさにそれが自分の描きたいものです。住まう、商う、暮らす、ときにはお酒を飲んで酔っ払ったり。そんな人間のドラマを凝縮させて注ぎ込むことで、ぼくのジオラマは完成するのです」と語る山本高樹さん。昭和の懐かしい風景と、そこでの人々の暮らしを、ミニチュアで表現し続けているジオラマ作家だ。

SF映画の特撮美術なども担当

昭和40年代の景色を描いた「あの日の駄菓子屋」。ショーケースに詰まった色とりどりのお菓子など、ノスタルジックな味わいが作品の隅々に。

「私がつくるジオラマは25分の1スケールですが、その理由も建物と人間の両方がつくり込めるちょうどよい大きさだからです。当時のディテールをしっかり再現できて、なおかつ人の豊かな表情を表現できるこの大きさは、自分の作品にはぴったりです」
ジオラマに配置する自動車や人形なども既製品は一切使わない。作品のすべてをカッターや定規などを使って手づくりする。唯一無二の世界観は、そんな徹底したこだわりがあるからこそだ。ちなみに25分の1というサイズは、実は「ウルトラマン」といった昔の特撮ドラマのミニチュアで採用されていた寸法だ。ジオラマ作家として活動する以前に、SF映画の特撮美術なども手がけていた山本さんにとって、そのサイズはとても親しみのあるものなのだろう。

工房でジオラマ製作中の山本さん。

「子どもの頃は特撮ドラマに夢中でした。おもちゃもたくさん売られていましたよね。仮面ライダーの変身ベルトや超合金のロボットとか。当時は今のようにモノがあふれた時代ではなかったし、身近な材料で工夫しながら自作して遊 んでいました。今にして思えば、簡単にモノを買ってもらえなかったことが、現在の仕事につながっているのかもしれません」
ジオラマ作家として独立する以前、映像美術制作会社で働いていた20代半ばの頃には、すでに失われ始めていた昭和の風景に強く惹かれていたという山本さん。
「城下町や街道沿いの宿場町など、日本全国の古い建物を見て回っていました。その頃から、いずれはこういう世界をミニチュアでつくりたいなと思っていました」

「気持ち」まで伝わる作品

作品用の建具のストック。わずか1㎜のホゾを切って部材を組み合わせるなど、驚くほどの精緻なつくりだ。

藁ぶき屋根の家や、蔵の残るまちなみといった日本各地の景色だけでなく、少年時代の身近な風景も作品を生む原動力になっている。「都内でもたくさん空き地が残っていましたよね。当時の子どもは、整えられた公園よりも、建築資材が無造作に積み上げられたような、そんな空き地が大好きでした。日が暮れるまで泥だらけになって遊んでいましたよね」
その「場所」だけを描くのではなく、その場所にいる人たちの「気持ち」まで伝わってくるジオラマ作品。山本さんならではの作品の個性は、そんな思い出の一つひとつを大切にしているからこそ生まれたものなのだろう。

屋根装飾や瓦などの小さな部品もすべて手づくり。自作のシリコン型に樹脂を流し込んで制作する。

「私の作品をすごく精密だとおっしゃってくださる方が多いのですが、実は設計図面のようなものは一切書きません。簡単なイメージスケッチを描いたら、後はどんな風にでき上がるか自分でもわからないうちにつくり始めます。つく っている間は悩みっぱなし。階段や部屋を加えるたびに、この空間はこんな風に使えたら面白いぞとか、こんなつくりなら自分もここに行ってみたくなるなとか、イメージを増殖させながら完成させていくのです」
そこでの暮らしや営み、楽しさや幸せを想像しながら建物をつくり上げていく。それは私たちの住まいづくりにも通じる大切なことかもしれない。

山本高樹(やまもと・たかき)

1964年千葉県生まれ。映像美術制作会社の社員として、映画、TV番組、CMの特撮美術や博物館の展示美術などの制作を手がけた後、2001年にジオラマ作家として独立、「昭和の心象風景シリーズ」の制作を開始。2012年にはNHKの朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」のオープニングタイトルに使用されたジオラマで注目を集める。著書に『昭和幻風景―山本高樹ジオラマ作品集』(大日本絵画・刊)ほか。公式ホームページ『模型日和下駄』 (http://www.hiyori-geta.com/

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
  • わが家の建てどきガイド
  • 資金計画タイプ別診断 あなたの資金の傾向をタイプ別で診断!

PAGE TOP