働き方が変わると暮らしが変わる 暮らしが変わると住まいが変わるテレワーク・コンサルタント田澤由利
コロナ禍による社会の急激な変化により、一斉に数多くの人が経験することになったテレワーク。
国のテレワーク推進事業のアドバイザーも務める専門家、田澤由利さんにテレワークが変える暮らしについてお話をうかがった。
テレワークに必要な環境とは
── 外出自粛といった社会の要請によって、テレワーク人口が増えています。なかには戸惑いを覚えている方もいらっしゃるようです。
田澤 本来、通勤を必要としないテレワークには家族との時間が増やせるといったメリットがあるのですが、ここ数カ月の急激な変化に、逆の現象も起きています。家族との時間が増えることがあまりハッピーとは思えず、家族とずっと顔を合わせ続けることでストレスを感じてしまうという状況です。在宅で仕事をする環境が整っていないままテレワークをせざるをえなくなり、家族の声が邪魔になって仕事がやりづらいと悩んだり、オンライン会議の画面に子どもが映り込んでしまったり、ご苦労されている方がたくさんいらっしゃるようです。
── 仕事の書類に触ろうとした子どもを、ついキツイ口調で叱ってしまったという話もあります。
田澤 家族とギクシャクする原因の一つは、部屋数と防音性ですね。テレワークではそれほど広い空間は必要ありません。最小限の空間さえあればよく、望ましいのは個室です。仕事の書類や道具を子どもが触れず、ドアを閉めればある程度の音も遮断されるという環境があれば、オンライン会議で家族の姿や声が入ってしまうこともありません。そうした仕事のための空間がないことが、多くのストレスを生んでいるのです。やむをえずリビングや寝室で仕事をするケースも多いようですし、スマートフォンを使ってクルマの中でオンライン会議をする方もいらっしゃいます。庭にテントを張って急ご しらえのオフィスとして使っている方がいるというニュースも見ました。
── 実際にはどんな悩みが多いのでしょう。
田澤 時間がルーズになったという悩みも聞きます。会社なら昼になるとみんなが席を立って食事に行きますが、自宅で仕事に没頭すると、気づけば食事を抜いてしまったということも。逆に上司や同僚の目がないために気持ちが緩んでしまうというケースもあります。
── テレワークでもオンとオフの切り替えはとても大事なのですね。
環境次第で数多くのメリットが
田澤 快適な仕事環境が整えられれば、テレワークはとても多くのメリットをもたらしてくれます。たとえば1日8時間働くとして、テレワークなら午後2時から3時までを子どもの幼稚園の送り迎えのために中抜けしても、夫が帰ってきた後にその1時間分の仕事をするという柔軟な働き方が可能です。従来なら午後2時までの時短勤務しかできなかった人が、フルタイムと同じ内容の働き方ができるわけです。他にも、地方に暮らしながら仕事ができるなど、今までは仕事のために諦めるしかなかったことを両立できるなど、数多くのメリットがありますね。
── 長い通勤時間から解放されて、自分のための時間が充実するのもメリットですね。テレワークは暮らし方を大きく変えるし、住まいにテレワークの環境が整っているかどうかで、享受できる恩恵に大きな差が出そうです。
田澤 2007年には国が「テレワーク人口倍増アクションプラン」を打ち出すなど、テレワークの重要性は長くいわれてきました。2016年の「働き方改革」から伸びたテレワーク露出度が、今年5月末時点で、前年の4倍になっています。少子高齢化などの課題を抱えている日本では、いかに働き手を確保できるかは切実な問題です。今回の事態が収束しても、 世の中のすべてがこれまで通りに戻ることは考えづらく、テレワークの普及がさらに加速することは間違いないでしょう。今までの一般的な住まいは、家で仕事をする前提ではつくられていませんでした。これからは、そうした面にも しっかり配慮した住まいが必要になるでしょうね。
田澤由利(たざわ・ゆり)
㈱テレワークマネジメント代表取締役/㈱ワイズスタッフ代表取締役
1962年、奈良県生まれ。会社員、フリーライターなどの経験を経て、1998年にワイズスタッフ、2008年にテレワークマネジメントを設立。企業等へのテレワーク導入支援や、国や自治体のテレワーク普及事業等を実施。内閣府の政策コメンテーターや総務省の地域情報化アドバイザーなども務める。平成28年度「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」など、多数の賞を受賞。
うまくいく二世帯同居 - 干渉しすぎずプライベートを重視した「別々同居」-
必要最低限の要所だけを共有し、一軒の中を完全に区切って暮らすスタイル。「プライバシーを守ることが、お互いリラックスして暮らせる」という考え方の家族におすすめです。区切り方には、「上下分離」と「左右分離」の2つの方法があります。
上下分離
外階段で2階にも玄関を設ける方法と、玄関は一つで、内階段で2階へ出入りする方法。
左右分離
1階に二世帯分の玄関を設ける方法。「左右分離」では、日照の違いや、上階の生活音が下の階に響くなどの不満がなく、平等な住まいづくりができます。
「別々同居」のメリット
- 二世帯が完全に分かれた作りなので、どちらかの世帯が空いたら、賃貸への転用が可能。
- 両世帯別々の玄関であれば、来客があっても気遣いなくダイレクトに通すことができる。
注意点
- 居室や生活設備が2軒分必要のため、床面積の広さが必要で、資金の負担増に。
アドバイス
- 住まいが区切られているからといって何日も顔を合わせないのでは、せっかく二世帯で暮らしているメリットがなくなります。別々同居といえども、扉一つの開閉で行き来できるドアを設けたり、親世帯のリビングを広めに設けるなど、二世帯が交流できる工夫があるとよいでしょう。
庭を共有し、二世帯の交流の場に
共有できる庭またはウッドデッキがあると、二世帯間でティータイムやガーデニングを楽しめます。天気のよい休日は、デッキにテーブルと椅子を配置して、みんなでパーティーやバーべキューを楽しむのもよいでしょう。敷地に余裕がない場合は、屋上を活用するのも一案です。
お薦めプラン
空間同士が巧みにつながり合う住まいで家族が心地よく安心して過ごす
[埼玉県 Oさま邸]
Oさま邸は、車2台分を収容できるビルトインガレージのある住まい。明るいベージュの外観正面には一切の窓がないにもかかわらず、室内に入ると圧倒的な開放感に満たされます。その仕掛けは、建物全体を「ロ」の字型に配置し、その中央に中庭を設けていることが挙げられます。
1階のオープンなLDKには中庭に面して豊富な開口部が設けられ、リビングからはガレージの5連窓を通して愛車も見えます。
アイランド型キッチンの横にはステップダウンした土間ダイニングを配置し、ガレージや庭へも出入りが可能。
LDKを中心に、中庭やガレージ、土間ダイニングや和室がつながって、機能的で心地よい空間を実現しています。
「基本的には、妻が快適な日常が過ごせる住まいにしたいと考えました。僕はガレージがあって、室内から愛車が眺められれば十分!」と笑顔のOさま。「子どもが小さいので、見守りができるLDKが望みでした。外からの視線を気にせずにくつろげる中庭があって、カーテンをせずに済む家に住みたかったので、願いが叶いました」と奥さまも微笑みます。
個室などのプライベート空間は2階に集め、2つの大収納空間「蔵」や適所に豊富な収納があるOさま邸。2階には洗濯物を干したり、アイロン掛けをしたりできるスペースや屋根のあるバルコニーもあり、家事がしやすいと奥さまにも好評です。
「冬は温かく、夏も風が通って涼しく快適です。プライバシーがしっかり守られているので、安心してくつろげるのが何より満足です」とご夫妻。ここにはご家族の温かい時間が流れ、豊かな暮らしがありました。
「精進料理」「本膳料理」「懐石料理」... 様々な流れを汲んで成立した「会席料理」
お葬式や法事だけじゃないお盆にも「精進料理」
ご先祖様の霊をお迎えし、供養する「盂蘭盆会」。7月に行う地域もありますが、全国的には8月13~16日に行う地域が多数です。お盆の伝統は地域や時代によって様々ですが、昔は親戚が集まって精進料理を食べ、ご先祖様にお供えするという風景がよく見られました。あらためて、精進料理とはどんな料理なのでしょうか? 他の日本料理との違いなども見てみましょう。
精進料理のキーナンバー「五」
精進料理とは、仏教の戒律に基づき、殺生を避け、煩悩を刺激しないように作られた料理のことです。具体的には、肉や魚を使わずに、豆・野菜・海藻・果物などを素材とした料理です。ただし、臭味のある野菜はタブーで、にら・ねぎ・玉ねぎ・にんにく・らっきょうの5つは、五葷(ごくん)といって避けられます。
避けられる「五」もあれば、重視される「五」もあります。精進料理では、五味・五色・五法を用いることが大切だとされています。五味は「甘・酸・鹹(かん)・辛・苦」で、5つの味のこと(鹹は塩辛さ)。五色は「赤・青・黄・黒・白」で、料理の見た目や食材の色のこと。五法は「生・煮る・焼く・揚げる・蒸す」で、調理法のことです。
こんなにある!日本の「○○」料理
精進料理のほかにも、「○○料理」と呼ばれる日本料理はいろいろあります。それぞれどんな違いがあるのでしょうか?
まず、日本料理の原点であり、最も格式高いのが「本膳料理」です。室町時代に成立した武家によるもてなし料理で、式三献(しきさんこん)という酒宴の作法と結びついた儀礼的な料理です。脚付き膳に決められた数の料理が配され、そのお膳が最大で本膳(一の膳)から五の膳まであります。お膳は一度に並べられます。
懐石料理は、お茶を立てる前に出す簡単な料理を指し、安土桃山時代に茶の湯が確立するとともに生まれました。最初に飯・汁・向付が出され、その後はできたてが一品ずつ出されます。
会席料理は、江戸時代に句会の後の食事会から生まれたと言われ、酒を中心とした宴席料理です。よって、酒の肴となる料理が先に出て、飯と汁が最後になります。本膳料理と懐石料理は作法に厳しいですが、会席料理は酒を楽しむことを主眼としており、厳しい決まりごとはありません。現在、改まった席の和食のコースといえば、会席料理が主流です。
懐石料理と会席料理は音が同じため、混同されることが多いですね。懐石料理と表記しつつ、実質的には会席料理という店も多いようです。本格的な懐石料理は「茶懐石」と呼んで、区別することもあります。もし、和食のコースを食べる機会があったら、どの日本料理なのか、考えてみるのもいいですね。
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