新しい日常を安心して送るために在宅避難も視野に入れた災害対策NPO法人プラス・アーツ理事長永田宏和
被災地の調査や多くの被災者の方へ取材を行い、防災教育に取り組む永田宏和さんに、災害発生時のリスクや対策、平常時の暮らしでできる準備などについてお聞きしました。
災害時のリスクを把握しよう
── 永田さんはこれまでに、数多くの防災マニュアル制作にも携わっています。そうした活動を通して感じている、防災における一番の課題とは何でしょうか。
永田 実際に災害が発生した場合に、自分がどんなリスクに見舞われるのか。それをイメージできていない方がとても多いことですね。
── 知っておくべきリスクとはどのようなものでしょうか。
永田 一つは、自分の住む場所の自然災害リスクです。国土交通省が公開しているハザードマップでは、洪水や土砂災害、津波のリスク情報をはじめ、その土地の特徴や過去の災害事例など、さまざまな情報が得られます。本来ならそこに住む前、家を建てる前に知っておきたい情報ですが、住んだ後でも、それを知っているかどうかで、災害発生時の対処の仕方に差が出ます。
NPO法人プラス・アーツの防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」の一幕。家具の転倒防止などを学べるプログラムだ。
── 対処の仕方を教えてください。
永田 たとえば水害発生時の対処ですが、川の氾濫リスクがある場所とない場所とでは、家にとどまるべきか、すぐに避難すべきか、その判断も大きく異なります。
── 今や水害はあらゆる地域で起こりえるリスクといえます。2019年10月に発生した台風19号では、東京都内でも避難所が収容しきれないほどの人であふれかえる事態になりました。
永田 足の踏み場もないほどの状況だったそうです。避難所での生活は、精神的・肉体的に大きな負担がかかります。たとえば、トイレ。大勢の人が使うため、掃除が間に合わない。仮設トイレは和式が多く、高齢者はしゃがむことができず、子どもは慣れていないためうまく使えない。結果、汚れもニオイもかなりひどい状況です。 使うのを我慢して体調を崩す方もいます。他にも、明るくてうるさくて眠れない。ストレスのためにあちこちで言い争いが起こったり。 新型コロナウイルスの感染リスクも考えなければなりませんね。避難所はなくてはならない場所ですが、可能ならば在宅避難を考えるべきだと思います。
普段から在宅避難の準備を
「避難生活サバイバルキャンプ」では、チラシや新聞紙を使って食器づくりにもチャレンジ。
── 永田さんが監修された「防災イツモマニュアル」でも、在宅避難を推奨されていますね。
永田 そのためにも我が家の安全を確認しておくことが大切です。まずは地震などに耐えられる家かどうか。家具が転倒しないように工夫することも必要です。なんといっても大切なのが非常食や防災用品の備蓄です。少なくとも1週間分は備蓄量が必要です。
── 家族4人分では、どの程度の量になるのでしょうか。
永田 たとえば飲料水なら、2Lのペットボトルを30本は用意したいですね。
── その他の食料品や防災用品のことも考えると、置いておく場所を探すのも大変です。
永田 人がいる場所に積み上げておくと逆に危険です。災害に強く、在宅避難に適した家とするためには、「備蓄庫」などを用意する配慮が必要です。備蓄した食料や飲料水は、日常生活で消費して使った分を補充するという「ローリングストック法」をおすすめします。これはトイレットペーパーのような日用品やペットの餌や猫砂などでも使える方法です。
スポーツで楽しく防災を学ぶ「防リーグ®」。"毛布"を担架代わりに負傷者を安全に速く運ぶレスキュータイムアタック。
── ミサワホームの住まいでは、備蓄にも適した大収納空間「蔵」の設計が可能です。
永田
それはすばらしいですね。在宅避難できる家が増えれば、避難所の密集を減らせます。
「 密 」を避けなければならない昨今の情勢を考えると、在宅避難は社会への貢献にもなります。けれど、たとえ在宅避難をした場合でも、落ち着いたら避難所には通った方がいいですね。物資の配給や給水などは避難所が中心です。家にいても情報が回ってきません。避難所を情報の入手拠点として活用したいですね。
永田宏和(ながた・ひろかず)
NPO法人プラス・アーツ理事長。兵庫県西宮市生まれ。大学で建築を学び、大学院ではまちづくりを専攻。大手ゼネコン勤務後、企画プロデュース会社「iop都市文化創造研究所」を設立。家族が楽しみながら防災を学ぶプログラム「イザ!カエルキャラバン!」の開発をきっかけにNPO法人プラス・アーツを設立。2012年からデザイン・クリエイティブセンター神戸の副センター長も務める。
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