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コロナ禍の状況で住まいづくりを決断 今だからこそ手に入れる意味とはコミュニティデザイナー山崎 亮

15年前に「コミュニティデザイン」という言葉を提唱し、デザイナーとして活躍中の山崎亮さん。そんな山崎さんに、コミュニティデザインを通して得た住まいに対する考え方をうかがった。

高齢化や人口減少、市街地の衰退などのさまざまな地域課題を、住民と一緒に解決する。そのための人と人とのつながり方やしくみをデザインするのがコミュニティデザインという仕事。山崎亮さんは、その草分け的な存在だ。
「15年前までは住宅の設計も手掛けていました。ですが住まいを建てたことがゴールになって、その先の暮らしについて考えない仕事に違和感を覚え、住宅設計から離れてしまいました。その後に始めたコミュニティデザインはむしろ逆。どう暮らしていくか、つまりモノよりコトを考える仕事です。そのせいか、私自身は家を所有することに関心がありませんでした。ところが今年の1月に土地を購入し、今はそこに建てる自宅を設計中です。自分でもびっくりする考えの変化ですね(笑)」

住まいの一部に設けた「パブリック」な空間は、人と人とをつなぎ、人とまちの結びつきをうながし、地域で暮らす人々の人生を豊かにする。人のつながりの大切さは、いつの時代でも変わらない。

人と人とのつながりを大事にする一方、住まいにはひとりになる空間も必要。仲の良い家族でも、適度な距離感を保てるように設計するのも大切。

きっかけとなったのは、新型コロナウイルスの感染拡大。社会や人と人とのつながり方が変わり、住まいの重要性も高まるはず。その考えが土地の購入を即断させた。
「設計中のプランでは、1階の道路に面した空間は、地域の人がいつでも自由に立ち寄れるパブリックスペースになる予定です。近所の子どもたちも集まりやすいように、お菓子を置いておこうと思っています。その奥にあるのが私の仕事場。間には開閉できる仕切りがあって、私の機嫌がいいときは開け、悪いときは閉じて仕事をします(笑)。上階は居住空間。家族が適度な距離感を保てる設計です。どんなに仲の良い家族でも、ひとりの時間は大切ですからね」

リモートワークなど通勤を必要としない働き方の増加は、居住する地域をより自由に選択できる機会に。自分にとっての「適疎」となる地域について考えてみよう。

山崎さんが手掛けるコミュニティデザインでは「適疎」という考え方が提唱されている。適疎とは、適度にまばらであるという意味。
「どの程度が適疎かは人によって異なります。渋谷のような過密が適疎な人がいれば、自然が豊かな郊外が快適な人もいます。『過疎と過密』は70年代からの問題ですが、自分にとっての適切な密度を見直し、住む地域を選択することは、問題解決の鍵になるはずです」
適疎の考え方は住まいづくりにも通じる。設計中のプランでは、家族が集まりたいときは集まることができ、ひとりにもなれ、パブリック空間では地域の人々に出会えるという、3つの適疎がデザインされている。

山崎さんが携わった北海道沼田町でのコミュニティデザインのワークショップ『これから塾』。住民とともに地域の拠点づくりを目指す。

「プライバシーを過剰に確保した住宅では、人と人とのつながりが失われます。日常的な会話がなくなると、人は虚弱な状態に陥り、体を動かす意欲も無くなります。今の日本は超高齢化社会。このまま加速すると、医療や介護の税金負担が増え、限界を迎えます。人のつながりを生むパブリックな空間のある家は、健康寿命を延ばし、高齢化社会の課題を解決する一助にもなるはずです」

島と人をつなぐ観光まちづくりイベント『瀬戸内しまのわ2014』。会期終了後も地域を元気にする「まちづくり」活動をサポート。

この他、オンラインのつながりに対応できる在宅ワーク空間の必要性など、コロナ禍以降の住まいには、より多くの役割が求められていると語る山崎さん。
「私たちのワークショップもオンラインでの開催が増えていますが、しぐさや表情などの情報量は対面に比べてぐっと少なくなりました。場所の空気感や、自分たちを取り囲むいろいろなモノなど、感性を刺激する要素も無くなります。その弱点を補うためには、参加者各自の環境にお互いを刺激し合える要素を用意することが必要です」

沖縄県名護市で開催された『よってたかってゆんたく』。名護市をどんなまちにしていきたいかを、地域の市民が楽しく語り合うワークショップだ。

設計中の自宅プランにも、その考え方は反映されている。1階の仕事場は、仕切りを開けておけば、遊んでいる子どもたちの姿がオンライン会議に映し出される。予定調和でない刺激は、クリエイティブな発想の燃料になるはずだ。 「家自体の価値だけでなく、家がもたらす人とのつながりや、新しい発想が生まれる場としての価値。私はそこに惹かれているのです」
住まいの役割が増えることは、人生をより豊かにしてくれる歓迎すべき変化――。山崎さんのお話に、そんな住まいの可能性を感じた方も多いはず。

山崎 亮(やまざき・りょう)

studio-L代表、慶應義塾大学特別招聘教授。
1973年愛知県生まれ。地域の課題を地域に住む人たちが解決する「コミュニティデザイン」の第一人者。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザインなどに携わる。主な著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、『ケアするまちのデザイン』(医学書院)など。

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