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暮らしのすべてをデザインする ミサワホームの設計思想ミサワホーム株式会社 商品開発部長白浜 一志

創立以来、住宅デザインの新しいスタンダードを切り拓き続けてきたミサワホーム。
30年連続のグッドデザイン賞の受賞歴は、群を抜いて高いデザイン力の証といえるだろう。
住まいだけでなく、暮らしのすべてをデザインするというその設計思想について、白浜一志執行役員にうかがった。

── ミサワホームでは、デザインの基本理念に「シンプル・イズ・ベスト」を掲げています。

白浜 住まいに限らず、デザインは「人」のためにあるものです。人の暮らしをどう豊かにするのか、心身ともに健康に暮らせるためにはどうあるべきなのか。それを考えることが大切です。とりわけ住宅は、長きにわたって使い続けられるデザインであることも必要です。とはいえ、人の価値観は時間とともに変わっていきます。当然、インテリアの好みも変わるでしょう。場合によっては住む人自体が変わることさえあります。そうした将来の変化に対応しやすくするためには、住まいという器をできるだけシンプルにしておいた方がいいわけです。

── シンプルは決して「単純」を意味するのではなく、実は非常に奥が深い世界だと思うのですが。

白浜 おっしゃる通り、「シンプル」でも「上質感」や「高級感」を表現することができます。本質的な上質感や高級感は、均整のとれた空間フォルムと、統制のとれた色、柄、サイズなどのディテールでつくられます。それは、ミニマムなスタイルでもクラシックなスタイルでも共通するところです。加えて、将来は違うインテリアも楽しみたいと思うなら、基本の空間はシンプルな方が模様替えもしやすいのです。

── ディテールへのこだわりも、ミサワホームの特徴ですね。

白浜 弊社の「CENTURY Primore」で採用している内と外が一体化した軒天井などはいい例ですね。室内と室外では耐候性や耐久性、メンテナンス性などに求められる性能が異なりますから、見た目は同じでも内と外とで使っている素材が違います。ですから、色を揃えるだけでも大変なことなのです。複雑なものをシンプルに美しく見せること。それもミサワホームの「シンプル・イズ・ベスト」のあり方のひとつです。

── ミサワホームは、住宅業界で唯一の30年連続グッドデザイン賞受賞を果たしています。応募する意義と受賞の意味とは何でしょう。

白浜 ひとつは、社内の評価だけでなく、第三者的な評価を得たいということです。私たちは独りよがりなものをつくってはいないか。あるいは、社会から認知されるものなのかどうか。それらを外部の目でしっかりと評価してもらうことが応募する意義です。そしてもうひとつ、私たちが提案する新しい価値が、一歩先を見ている専門家の先生にどう評価されるのかを問うということもありますね。

── グッドデザイン賞の受賞は、生活者には信頼に足る商品であるという安心感にもつながります。

白浜  応募を継続しているのは、いわばミサワホームの企業姿勢でもあります。1年や2年で終わらせず、新しい価値をつくり続けていくこと。そして、生活者が気づいていない価値に、いかに気づき、それを提案できるかが大事だと考えています。

── ミサワホームのデザインは、これから、どんな方向に向かうのでしょうか。

白浜 環境問題や超高齢社会など、社会にはさまざまな問題が山積みです。そうした背景を考えながら、住宅メーカーとしてできるあらゆることをやっていくという方向になるでしょう。ミサワホームでは50年近く前からエネルギー技術にも取り組んできましたが、当時は住宅メーカーがなぜそんなことをするのかと首を傾げる方もいらっしゃいました。ですが、住まいも電気を消費する場所から、今は電気をつくる場所になっています。今後は水や食料についても、住宅メーカーとして取り組んでいくことになるかもしれません。

── 今まで以上に暮らし全体をデザインしていくということですね。ありがとうございました。

白浜一志(しらはま・ひとし)

1963年、宮崎県宮崎市生まれ。ミサワホーム株式会社執行役員、商品開発部長。代表作は大収納を設けた「蔵のある家」、ゼロ・エネルギー住宅「ミサワホームZ」、都市型住宅「MACHIYA」など。その他、数多くの住宅でグッドデザイン賞を受賞。

インテリアで叶える四季を愛でる暮らしテキスタイルデザイナー本田純子さん

自然を身近に感じながら、四季の変化を楽しむ暮らしをしてきた日本人。
そうした楽しみは、現代の住まいにも採り入れることができる。
世界的な評価を受けているテキスタイルデザイナー、本田純子さんにお話をうかがった。

日本人の感性をデザインで表現

春(チェルカーレ):揺れ漂う桜の薄い花びらをデザイン。

企画・デザインから織物設計までを手掛ける、数少ないテキスタイルデザイナー本田純子さん。ご自身の名前が冠されたブランド「Sumiko Honda」のカーテンは、日本の四季をテーマにデザインされており、光の加減でさまざまな表情を見せる深い味わいが魅力だ。そんな本田さんが考える「インテリア」とはどのようなものなのだろうか。

夏(エリカチェア):ツツジとヤマボウシをボーダー状に表現。

「楽しみ方は無限にあると思います。ですが、その空間にいる人が居心地のよさを感じられることが大前提です。今はストレスが非常に多い時代です。ご自宅などを心からやすらげる場所にすることも、インテリアの大きな役割です」
本田さんが日本の四季をデザインのテーマにしているのも、不安定でストレスフルな暮らしに、やすらぎやうるおいをもたらしたいという願いからだ。

秋(ソラリタ):グロリオサとラナンキュラスの花をシルエットでデザイン。

「季節のうつろいに美しさを見出すことは、日本人ならではの感性であり、喜びだと思います。私自身も、緑とふれあうとすごくリラックスできますし、自然に励まされているという実感を味わったりします。そうした喜びをお客さまにも感じ取っていただけたらうれしい。そう考えながらデザインしています」

冬(バイードウⅡ):満月を連想させる大胆な円に光効果で裏面の織柄が透けて重なる。

たとえば春先なら桜の花、クリスマスにはアマリリスの花。四季の変化に合わせてカーテンを変えるのも楽しみ方のひとつだろう。
「花をいけるような楽しさで、季節の変化に合わせて、自分の感性に合うデザインを選ぶなど、自由に楽しんでいただきたいですね」

ファブリックの無限の可能性

エリカチェアの図案。糸は職人が染め上げた多数の色糸から丹念に選定。
ファブリックという素材には、「自然」を表現できる力があると語る本田さん。
「ファブリックはとてもやわらかな素材です。ファブリックのカーテンは光を通せますから、陰影のうつろいで時間の流れが感じられたり、風にそよぐ姿から自然が感じ取れたりします。空間を仕切るという意味では『壁』と同じ役割を持っていますが、やわらかく動き、閉塞感を感じさせないことは、『壁』のように動かないものでは得られない魅力です。自然界には『直線』というものがありません。ですが住まいは、間取りや家具など、ほとんどが直線や角で構成されています。それが悪いということではなく、もう少しやわらかい感覚が室内にあれば、空間をもっと人に寄り添える場所にできるはずです。ファブリックは自由に加工ができますし、縫製のスタイルも無限です。カーテンだけでなく、クッションなど、さまざまなスタイルでインテリアをやわらかくまとめ上げることが可能です」

チェルカーレのカーテンが空間に自然の繊細な伊吹を注ぎ込んでいる。

そんな本田さんの考え方を追求しているのが「Sumiko Honda」というブランドだ。元になるデザインは、本田さんが手描きの水彩画で作製、水彩ならではの滲みや偶然性も美しさの表現として採り入れている。華やかさと落ち着きという、本来なら相反する魅力が両立した精緻なデザインは、日本の伝統的な織物技法に、最新技術を融合させることで実現したもの。自然の美しさがデザインされ、ふわりと軽く仕上げられたファブリックは、自宅用として人気があるだけでなく、病院や介護施設などの採用も増えている。本田さんに、これまでに手掛けてきた数多くの仕事のなかで、思い出深いエピソードをうかがった。
「ご年配で、病にふせっていた男性のお客さまが、ご自分の終の棲家にと選んでくださいました。いつでもあたたかい気持ちになりたいからとピンクのファブリックをお選びになりました。楽しみとして、そして生きる力の支えとして選んでいただけたのだと思います。私にとって、本当に忘れられない仕事になりました」
ファブリックには、まだまだ可能性があると語る本田さん。それは住まいにも、もっともっと素敵にできる可能性があるという意味にもなるはずだ。

本田純子 (ほんだ・すみこ)

㈱川島織物セルコン インハウスデザイナー
米国国立スミソニアン協会の所蔵となるファブリック設計を手掛けた実績を基に、1998年にSumiko Hondaブランドを発足。以来、他ジャンルのデザイナーやアーティストとのコラボレーション、Maison&Objet editeurusへの出展などを通じ、国内外から高い評価を受ける中、その世界を結実させるコレクションの拡充と飛躍を目指し、挑戦を続けている。

環境・健康・安心をつくるエクステリアの役割1級造園施工管理技士鷲見 法泰

ミサワホームにおけるエクステリアのスペシャリスト(1級造園施工管理技士)鷲見法泰さんに、エクステリアの役割や、エクステリアを整える意味、そして、ミサワホーム独自のエクステリアの設計手法についてうかがった。

── エクステリアとは、住まいに対してどのような役割を果たすものなのでしょうか。

鷲見 ひと言でいうと、住まいをより心地よい空間にすることです。「住まいに対して」とおっしゃいましたが、そもそもエクステリアと建物とを分ける必要はありません。作業の効率や専門性などから便宜的に分けているだけで、本来は建物の設計と一緒に考えることが理想です。たとえば庭に植えた樹木の緑は、それだけでも自然の心地よさを味わえますが、室内からどのように見えるかを想像しながら間取りや窓の大きさを設計することで、住まいという空間が、さらに心地よいものになるのです。

── ミサワホームが考えるエクステリアには、どのような特長があるのでしょうか。

鷲見 環境をデザインすること、健康をデザインすること、そして安全・安心をデザインすること。この3つの要素を大きな柱としていることが特長です。「微気候デザイン」という設計手法を取り入れていることも他にはありませんね。微気候デザインでは、陽射しや風などの住まい周辺の局地的な気候をコントロールしたり、植物に備わる温度調節機能を利用して、空気を冷やしたり、風のないところに風をつくり出したりということも行っています。庭と建物を一体として設計すれば、樹木がつくり出した風を室内に送ることができますし、それによってエアコンの稼働率を下げられますから、より健康的な暮らしができます。

── まさに環境と健康をデザインしているわけですね。

鷲見 五感で四季を楽しみ、身近な自然に親しむことのできる住まいは、ストレスを軽減し、地域のコミュニケーションも育みます。これもまた健康をデザインすることのひとつですね。

── 安全・安心のデザインは、どのようなことなのでしょうか。

鷲見 防犯性を高める工夫をトータルで考え、法令や設計基準書を遵守し、外からは見えない構造部にも目を配った安全設計などを行っています。わかりやすい例を挙げるなら、たとえばブロック塀ですね。弊社の場合、ブロック塀でも必要に応じてしっかりと構造計算を行った断面図を使用し、施工をしています。そうした安全性へのアプローチも、住宅メーカーだからできることのひとつといえるでしょう。

── 他にも住宅メーカーとして大切にしていることはありますか。

鷲見 植物が生きるのにもっともよい土壌である「表土」の保全ですね。1cmの表土ができるまでには100年以上もの時間が必要です。住宅の建替えの際、一般的には表土が捨てられるケースが多いのですが、土壌育成のために可能な限り表土は残したいですね。

── 都市部の住まいのエクステリアについてはいかがでしょうか。敷地面積に制約があることも多く、緑を取り入れることをあきらめている方もいらっしゃいます。

鷲見 たとえば、駐車スペースのコンクリートにスリットを入れて、そこに緑を植えるだけでもずいぶんと違います。また、駐車スペースやアプローチなどに透水性、保水性のある素材を使えば、雨水が浸透することで地下水の枯渇を軽減して環境保全になったり、水が蒸発するときの気化熱で温度を下げることができたりします。これも微気候デザインの応用です。

── 自然をうまく取り入れた快適なエクステリアは、環境保全にもつながりますね。本日はありがとうございました。

写真は、海外の一流ガーデンデザイナーたちと競い合った浜名湖花博ワールドコンペティションで、グランプリを受賞した鷲見さんデザインのエクステリア。禅の思想「和敬清寂」をキーワードに、「本来の自分に還る場所」「日本人の心の奥底」「日本の美しい景色」を表現している。

鷲見法泰 (すみ・のりやす)

ミサワホームのエクステリア部門を担当する、ウィズガーデン(株)設計建設部部長。2004年の浜名湖花博で開催された「ワールドガーデンコンペティション」に日本代表として参加、グランプリ(しずおかガーデン日本大賞)を受賞。

住まいの「レジリエンス」はどう備えるべきか東京大学大学院教授清家 剛

レジリエンス性にすぐれた住まいとは、具体的にどのような家なのか。 求められる性能や、必要な機器、ZEHとレジリエンスの密接な関係性などの話を 官公庁の建物における耐震基準の策定にも携わる東京大学大学院の清家教授にうかがった。

──2019年度の国のZEH支援策の中に「ZEH+R(レジリエンス)」という新しい区分ができるなど、今、「レジリエンス」という言葉が注目されています。レジリエンス性にすぐれた住まいとは、どのようなものでしょうか。

清家 ひと言でいえば「しぶとい家」です。理想をいうならば、普段の快適性を緊急時でも維持できる住まいなのですが、実際に実現するのは簡単ではありません。現実的に考えると、普段は快適で、その快適性をもたらした実力で非常時にもなんとかしぶとく暮らせる家、それがレジリエンス性の高い住まいといえるでしょう。

──具体的にはどのような性能が必要でしょうか。

清家 まずは高い耐震性ですね。かつては建築基準法で定められた基準さえクリアしていればいいという考え方が多かったため、すぐれた耐震性の家を建てようとすると、大きなコストがかかるといった問題がありました。ですが、阪神・淡路大震災以降、世の中の防災意識が非常に高まったこともあり、近年では、単に基準を満たすだけでなく、地震時の建物の変形を少なくして、内装もめったに壊れないという高いレベルの耐震性能をめざしている住宅メーカーも増えてきました。耐震性にすぐれた住まいが以前よりも手に入れやすくなっていると思います。

──耐震性能の他に求められる性能は何でしょうか。

清家 高い断熱性も大切な要素です。たとえば冬季に災害が発生して電気などのインフラが停止した場合でも、断熱性の高い建物なら人が発する熱だけでもある程度の室温が確保できます。直前まで稼働させていた暖房の熱で夜をしのいだりすることも可能です。

──先生は実際に被災地に赴いて被災状況を検証する機会も多いそうですが、やむなく避難所に避難される方と、自宅でなんとか過ごせる方とでは、暮らしにはかなりの違いがあるのでしょうか。

清家 違いはとても大きいですね。常に他人と一緒にいる避難所の暮らしは、精神的にも肉体的にも大きな負担になります。仮設住宅に移れるとしても、早くて3カ月後。移った後も、仮設住宅では、広さも限られていますし、隣家の物音が壁を通して聞こえやすいため、なかには隣に遠慮してトイレを我慢するといった方もいて、皆さんご苦労されています。

──自宅での避難生活と比べると、非常に厳しい環境といえますね。

清家 レジリエンス性にすぐれた住まいに必要な要素はもうひとつあります。太陽光発電などの創エネ機器ですね。普段はつくった電気を売電することで家計の助けになり、インフラが停止した災害時には、電源となって電気製品が使えます。再生可能エネルギーを使用することで環境保護に貢献できるというメリットもありますね。

──断熱性や創エネなどは、世界的な住まいの潮流となっているZEHにも必要な要素ですね。

清家 レジリエンス性にすぐれた住まいとZEHは、とても親和性が高いといえます。言い換えると、ZEHはレジリエンス性にすぐれた住まいにしやすいということです。ちなみに、ゼロ・エネルギー住宅という考え方は、再生可能エネルギーの拡充にシフトするという世界的な流れのなかで、住まいに何ができるかという観点からスタートしたもので、国も本格普及に向けた後押しをしています。最終的にめざしているのは、「LCCM住宅」ですが、ZEHはゼロ・エネルギー住宅のいわば標準という位置付けといえるでしょう。

──先生は一般社団法人日本サステナブル建築協会の「レジリエンス住宅チェックリスト※」の監修もなさっていますね。

清家 平常時の「免疫力」、災害発生時の「土壇場力」、災害後の「サバイバル力」という3つの観点から住まいのレジリエンス度を確認しようというチェックリストです。

──チェックリストには、「災害時に出先から帰宅する方法を検討しているか」や、「階段や廊下で転ばないための対策の有無」、「運動や体力維持に努めているか」など、防災や健康に対する意識を確認する設問も多いですね。

清家 たとえば、災害時に冷静な判断を下して、瞬発力のある対応をするためにも、健康は大切です。インフラの復旧を待つ間も、体力的な不安を感じにくくなるはずです。普段暮らしている家の中には、身体に負担をかけていたり、思わぬ事故の原因が潜んでいたりすることがあります。防災や日頃の健康に意識を向けることも、住まいのレジリエンス性を高めることにつながるのです。

──平常時、災害発生時、災害後と、それぞれの健康リスクや災害リスクを理解して、その備えとなるよう考えて住まいを設計することが大切といえそうですね。本日はありがとうございました。

※ 健康を支え災害に備える住まいと暮らし「CASBEE レジリエンス住宅チェックリスト」
http://www.ibec.or.jp/CASBEE/cas_home/resilience_checklist/index.htm

清家 剛(せいけ・つよし)

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 教授・博士(工学)建築構法を専門分野として、建築生産に関わる環境負荷評価に関する研究などを手掛ける。官庁施設の総合耐震計画基準など、公的な基準類の制定に関わる多くの委員を歴任。

住まいができる防犯対策を知ろう!一級建築士・総合防犯設備士相川 隆

1日あたり約101件※も発生しているという、住宅を対象とした侵入窃盗被害。
ふだんの暮らしのなかで、どのように住まいの防犯対策に取り組めばいいのだろうか。
防犯について、専門に研究を続けているミサワホーム総合研究所の相川隆主幹研究員にうかがった。

──最近の被害の実態を教えていただけますか。

相川  住宅が対象の侵入窃盗の認知件数は平成16年から減少傾向にあります。 とはいえ、平成29年の認知件数は約3万7千件。 約15分に1件のペースで被害が発生している計算ですから、誰にとっても他人事ではないですね。

──減少理由を教えてください。

相川  警察庁や国土交通省がともに「安全・安心まちづくり」の推進をしてきていますが、平成15年以降、官民協力して「防犯性能の高い建物部品」の開発が進み、平成18年度の住宅性能表示制度の改定では、評価項目に「防犯に関すること」が追加されました。 現在では、一定の基準を満たしたサッシやドアなどに、「官民合同会議」で認定された「防犯性能の高い建物部品」のみ使用できる「CPマーク」が貼付されるようになりました。 今も、住宅機器メーカーは防犯性能に目を向けた開発に力を入れています。 また、自主的にまちの見回りを行う防犯ボランティアの方々が増えたことなど、幅広い取り組みが減少の理由として考えられますね。

──具体的な防犯対策として思い浮かぶのは、高い塀にぐるりと囲まれ、他人が容易に侵入できない家ですが。

相川  そのような家は、いったん敷地に入ってしまえば、周囲の視線を気にすることなく犯行が可能ですから、むしろ狙いやすい家といえます。 侵入盗は人に見られることを最も嫌います。 そのため、敷地に入ってから建物内に侵入するまでの一連の動作が、周囲から見えにくい家を狙うのです。

──防犯ボランティアなどの地域のつながりが被害件数の減少に貢献するのは、侵入盗が人の目を恐れるからなのですね。

相川  たとえば、外構がオープンな作りになっている家は、道路からの見通しが確保されているため、周囲の人の目が届きやすいですよね。 侵入盗にとっては、狙う家を物色するための敷地内の様子をうかがう行動や、敷地に入り込もうとする不自然な姿、敷地に入って建物に侵入する行動も周囲から見えやすくなってしまうわけです。

──ブロック塀で囲んだ閉じた作りだと、夜も窓の明かりが塀で遮られて道路が暗く、侵入盗が姿を隠しやすいですね。

相川  家人の不在を周囲から不審に思われずに確認できる家も、狙われやすいといえます。たとえばインターホンの位置。 門扉についていれば、インターホンを押す姿が周囲から見えます。返事がないのにもかかわらず、敷地に入って行けば、当然不審に思われてしまいます。 対して玄関にインターホンがあると、侵入盗は誰からも不審がられずに玄関の前にたどり着くことができます。 そこからさらに、侵入しやすい箇所を探すために家の裏手に回ろうとする場合も、途中に木戸などがあれば、入ることに抵抗を感じますが、何もなければ、すっと入って行けます。 侵入盗はそうした違いを一つひとつ見ながら、狙う家を定めるのです。

──侵入盗側の視点に立つと、狙われやすい家がわかりますね。

相川  プライバシーを守ることも大切ですから、オープンにすることに限界がある場合は、防犯カメラの設置もおすすめです。 侵入盗は光や音も嫌います。センサーライトや警告音で侵入盗を威嚇するとともに、音声で知らせるセンサーや受信機なども有効ですね。

──防犯カメラ作動中というステッカーも効果がありそうですね。

相川  狙われにくくする以外にも、防犯性能の高い建物部品を使うなど、建物の中に入りにくくする工夫も大切です。 また、侵入盗は、なるべく短時間で犯行を済ませたいと考えますから、貴重品は探すのに時間がかかる場所にしまったり、分散したりしておけば、万が一侵入されても、被害を最小限に食い止められます。

──侵入窃盗の被害に遭うのは、〝運〞の問題だけではないのだと感じます。

相川  被害に遭っても対策をせず、再び侵入されてしまったという例もあります。ちょっとした防犯対策の積み重ねによっても、侵入盗に狙いにくいと思わせる効果があるのです。

──日頃から防犯意識を持つことはとても大切ですね。本日はありがとうございました。

※「平成29年の刑法犯に関する統計資料」(警察庁)より作成

相川 隆(あいかわ・たかし)

株式会社ミサワホーム総合研究所フューチャーセンター 市場企画室スマートホーム研究PJ 兼デザインセンター 空間デザイン研究室主幹研究員 一級建築士・総合防犯設備士

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
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