Column│新しいライフスタイルのご提案や、子育て、オーナーさまのこだわりのお宅拝見、
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いいまち見つけて豊かな暮らし街と住まいの解説者中川寛子

住まい選びは街選びから始まる。どんな街に住み、どんな人たちとふれあうかによって、毎日の過ごし方も家族の思い出も変わる。将来にわたって安心して心地よく暮らせる街選びの秘訣を中川寛子さんに伺った。

住民に大事にされているか、実際に街を歩いて観察する

足まわりの便が良く、買い物にも便利な街が一般的には住みやすい場所だと考えられるが、街選びの基準は利便性だけではない。家族構成やどんな暮らし方、どんな人間づきあいがしたいかなどによっても街に求めるものは変わる。我が家にふさわしい街かどうかを見極めるには、その地を訪れて自分の目で街並みや人々の営みを観察することが大切だ。どんなタイプの人たちが多いのか、住んでいる人たちが自分の街を大事に思っているかどうか、歩道や公園、商店街などを散策すればそれとなく感じることができる。
「並木がきれいに保たれている、道路にゴミが散らかっていないなど、住民に大切にされている街は古くてもきれいですね。また、みんなが協力して掃除やイベントをするといった地域活動を通してお互いの交流があります。そうした街の住民は夜中に大きな音を立てるような近所迷惑になる行為はしないものですし、不審な人物や不届き者は自ずと入りにくい雰囲気になります。子育て世代の方にとっては公園が交流の場になるので、公園にいる親子がどんな言葉遣いでどんな会話をしているのかもさりげなく確かめてみましょう」と中川さんは語る。
一方、まとまって開発された分譲住宅には、古くからある住宅街では得られない魅力がある。
「統一された街並みが美しいですし、近隣との距離感や視線の外し方、エリア内の道路の作り方、防災、植栽、ゴミ置き場など、計画的に開発されているからこその住みやすさがあります」と中川さん。
同じタイミングで入居する家族が多いため、子どもに友達ができやすく、親同士のコミュニティが作りやすいのもメリットだろう。

地震に強い街選び、地盤の強さも要チェック

災害時、住まいは家族を守るシェルターとなる。特に地震国日本では、建物の耐震性と同時に立地の地盤についても知っておきたい。中川さんによると、地形と地質、地盤の固さには関連があり、単純に言えば新しい地形は軟らかく、古い地形は固い。従って土地がいつ作られたかを知れば、地盤の固さが想定できるという。
「最近では地盤調査の結果がインターネットも含め、多く公開されていますから、そこから推察するといいですよ。たとえば物件を見に出かけた先で、その土地の地盤が心配になったら、今はその場でスマホやタブレットで検索して調べることもできるのです」
そう言って中川さんが勧めてくれたのは、「20万分の1日本シームレス地質図」(産業技術総合研究所)だ。サイトを開き、「地質図の表示」をクリックして見たい地域をクローズアップする。そして画面右下に出てくる方位マークをタップすると現在地にマーカーが立ち、そのマークをタップすると解説文が出てくる。
国土交通省のサイトで各種自然災害のハザードマップも見ておこう。自然災害による被害を予測して、その被害範囲が地図上に表わされている。いずれにしても、土地の特性を知った上で、適切な対処をして家を建てることが重要だ。

我が子にとっての故郷になるという視点

子どものいる家庭であれば、子育てがしやすい街かどうかも気になるだろう。ただ、何をもって子育てに良いと判断するか、答えは一律ではない。たとえば自治体のサポートを見ても、乳幼児への子育て支援が手厚い場所もあれば、教育に力を入れている場所もある。近くに伸び伸びと子育てができる大きな公園がほしい人もいるだろう。まずは自治体のホームページでどんなサービスや施設があるのかを調べてみたい。複数を見比べると、自治体ごとに差があることがわかるはずだ。
「ただし、子どもを巡る状況は、乳幼児、小学生、中学生、高校生と成長するにつれてニーズが変わるので、子育てに関しては短期的な視野に陥らないことが大事です」と中川さん。

乳幼児に手厚いけれど、学童保育が少ない自治体の場合、子どもが小学校に入ったら共働きを続けるのが大変になることもある。将来を見据えて、我が家ならどこを一番手厚くしてもらいたいかを明確にした上で、その条件にふさわしい街を選ぶといい。
「子育て世代の方にお話しするときに私が必ず言うのは、『選んだ街がお子さんにとっての故郷になる』ということです。街にはそれぞれ違った景色や人間関係、お祭り、神社、食べ物などがあります。それらが子ども時代の原風景となり、後の人生に影響を与えます。ですから、大人になって子どもの頃を懐かしむとき、心温まる楽しい思い出がたくさん蘇るような街を選んであげてほしいのです」
自分の子どもの故郷になるなら、あなたはどんな街がいいだろうか。 また、理想の街が見つかったからといって、どんな家でもいいわけではない。安心できる性能や将来の資産価値を見据えた住まいを選ぶことも大切である。

中川寛子(なかがわ・ひろこ)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。その後、一戸建て注文住宅の情報誌の編東京都大田区生まれ。早稲田大学教育学部社会学科卒業。株式会社東京情報堂代表取締役。約30年に渡り、不動産関係の雑誌、書籍、WEBで取材、執筆を続け、セミナーも開催して、地盤・街選びや住まいの買い方、暮らし方についての提案を行っている。著書に「『この街』に住んではいけない!」(マガジンハウス)、「キレイになる部屋、ブスになる部屋」(梧桐書院)、「住まいのプロが教える家を買いたい人の本」(翔泳社)など。日本地理学会会員。日本地形学連合会員。

20年後、30年後を見すえながら、永く快適に暮らせる住まいの条件住まいのナビゲーター大塚有美

分譲住宅を賢く選ぶために、どんな視点で考えたらいいのだろうか。
永く快適に暮らせる住まいの条件について、多くの住まいを精力的に取材している大塚有美さんに伺った。

●分譲住宅の場合、「まち」選びも大切です。ポイントとなるのはどんなことでしょうか。

まず、周辺環境ですね。通勤・通学などの交通面、医療や教育など生活に必要な要素が点在し、まちが将来も成長し続けるかどうかがポイントです。気をつけたいのは、分譲地周辺の用途地域。準工業地域などに指定されている地域があると、将来、周辺の環境が変わる可能性があるからです。
また、昨今は大きな自然災害が多発しています。分譲地はあらかじめ地盤が整備され、インフラも整えられていますが、そこがどんな地盤なのかをしっかり把握しておくことも必要でしょう。
さらに、自治体によっては子育て支援に力を入れている場合がありますから、そうしたサポート体制を活用するという視点で選ぶのもいいですね。

●住まいを選ぶ際、何を基準に考えたらいいでしょう。

やはり、基本性能がしっかりしているかどうかを見極めることでしょう。日本の住宅も品質が向上しており、今は、建築基準法を上回る家も珍しくありません。さらに厳しい基準も設けている「住宅性能表示制度」を利用した家や「長期優良住宅」の認定を受けている住宅は、基本性能が客観的に判断できますから、安心できます。
また、住まいは建てたときがマックスではありません。そこから暮らしがスタートし、住まいも歳月とともに成長していきます。その間には当然メンテナンスも必要ですから、保証やサポート体制が充実しているかも大きなポイントとなるでしょう。

●では、永く快適に暮らすことができる住まいの条件について教えていただけますか。

それには、6つの条件があると考えています。
❶ まず基本性能ですね。耐震・耐風性、耐久性、耐火性、断熱・気密性、防音・遮音性、防犯性など、先ほど述べた住宅性能表示制度を利用したり、長期優良住宅の認定を受けることもその一つです。
❷ 快適な暮らしのための通風・採光も大切です。住まいは何より快適でなくてはなりません。窓の位置や大きさに工夫がある、中庭などを設けるなど、光や風といった自然を感じながら暮らすことも、快適性につながります。
❸ 広がりを感じられる空間づくりも必須条件。個室は狭くても家族が集まるリビングは広いなど、メリハリがあると空間が豊かに感じられます。
❹ 将来のリフォームに対応できる構造であることも重要ですね。家族構成や暮らし方が変化したときに、制約が多いと必要なリフォームが実現できません。
❺ 性能を保つための適切なメンテナンスも必須条件。耐久性の高い素材を使っていても、メンテナンス次第で寿命が変化します。先ほども述べたように、定期点検から補修まで、きちんと対応してくれる体制が整ったメーカーなら、より安心でしょう。
❻ そして、6つめは住まいに対する愛着です。分譲住宅も、間取りに工夫が施されています。そこにお気に入りを見つける、あるいは全体として飽きのこないデザインになっていれば、愛着も深まり、住まいを大事にしようという気持ちが保てるはずです。

●6つの条件を満足する分譲住宅を見つけるために、アドバイスをお願いします。

20年後、30年後を意識して住まいを考えていただきたいですね。できれば、家族みんなで将来について話し合い、どんな暮らしが望ましいのか、そのためにどのような住まいがいいのかを確認しておくことをおすすめします。
また情報収集をして、住まいについて勉強することも大切でしょう。それが自分たちにふさわしいまちや住まいを見極める目を養うことになるからです。

大塚 有美(おおつか・ゆみ)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。その後、一戸建て注文住宅の情報誌の編集部門で家づくりの流れを解説する企画をはじめ、住宅メーカーの情報、インテリア、設備機器などを取材しながら、多数の建て主に接し、生活者、住む人の視点で、「いい家」とは何かを追求。独立後、「住宅とその周辺」をテーマに取材、執筆活動を行う。住む人、使う人の立場に立ってやさしく解説することを心がけている。

片付け上手になるヒケツは?建築家多田祐子

モノが捨てられなくて収納に困っている、片付けが苦手で何から手を付けていいかわからない...。
そんな悩みを解決して、すっきり美しい暮らしを実現するために、まずは頭の中の整理整頓から始めよう。

好みの住空間イメージを言語化して明確に把握する

 気がつくといつのまにかモノが増えてリビングにあふれ、いつも雑然としている...。そんな状態に悩む家庭は多いだろう。話題の「断捨離」を決行し、不要なモノを思い切って処分したいけれど、どれを残してどれを捨てればいいのやら迷うところだ。
 それに、家族の思い出の品や滅多に使わなくてもずっと大事にしたいものだってある。モノと上手に付き合って、美しく快適に暮らすためには、どんなことを心がければいいのだろうか。
 建築家であり、セラピストとしても活躍する多田祐子さんは、自分がどんな空間で暮らしたいのかにまず気づいてほしいという。
「部屋が片付かないのは、実は頭の中が雑然としているからなのです。まず頭の中を片付けるために、自分が憧れる住まいのイメージを言語化してみましょう。たとえば『白い雰囲気の清々しくて透明感がある部屋に住みたい』、『アンティークな家具や調度品が似合うダークな雰囲気の部屋が好き』というふうに。するとその空気に似合わないモノが浮かび上がり、必要なものと不要なものを取捨選択できるようになります」

 多田さんは自分が目指したい暮らしのスタイルを見極める練習として、雑誌やネットで見つけたいろんなお気に入りの住空間の写真を切り抜き、スケッチブックに貼ってみることも勧めている。写真に添えられたタイトルやフレーズなど、空間を形容する文章も一緒に切り貼りしておくのがコツ。こうすることで今まで漠然としていた自分の好みの空間イメージが具象化され、明確に把握できるようになる。そしてインテリアに対する感性も磨かれていくという。
「センスを磨くとは、ムダをそぎ落としていくことに他なりません。頭の中が整理整頓されると、モノを選ぶときも軸がぶれなくなり、結果として家の中に余計なものが増えなくなります」

「小掃除」「中掃除」で生活を見直す習慣を

 上手な整理整頓の秘訣は、時間を区切って所有しているモノを見直し、未来を見つめながら過去を整理することだと多田さんは考えている。そこで年末の大掃除だけでなく、一日の締めくくりに「小掃除」、四季折々に「中掃除」をする習慣も提唱している。
「その日の終わりにほんの10分でいいから、散らかった部屋をざっと片付ける小掃除の習慣をつければ、毎日に区切りが生まれ、生活を見直すことができます。また、昔の日本は季節ごとに床の間の掛け軸を掛け替え、夏と冬で建具も取り替える伝統がありました。これに習い、四季の節目に中掃除と称して、衣替えだけでなく、季節物の調度品やしつらえを手入れし、入れ替える文化の日にしてはどうでしょう。たとえば『蔵』のような大収納空間があれば、我が家の文化の懐も深くなりそうですね」

包容力のある収納空間が心にもゆとりをもたらす

「蔵」のような大収納をつくるという発想は、日本の伝統でもあると多田さんは言う。
「昔の日本家屋には、季節物やふだん使わないものをまとめて収納しておくために、蔵や納屋のような別棟の大収納がありました。また、武家屋敷を見るとわかりますが、和室の天井が低く、屋根裏が今でいうロフトのような収納空間になっています。ミサワホームの『蔵』は、こうした役割を住まいの内部に取り込んだもので、日本の暮らしの理にかなっています」
 それに、散らかったものをきちんと分類して適所に収納しなければならないと思うと、片付けが億劫になるものだ。とりあえず一時的にでもいろんなものを一緒くたに放り込んでおけるこんな「何でも部屋」がひとつあれば、掃除もしやすいし、気持ちもラクになる。
「たとえばリビングのそばに大収納があれば、散らかっているときに突然の来客があっても慌てないですみます。そこにザザッとモノを押し込んで、何気ない顔をしてゲストをお迎えすればいいんですから」と多田さん。
 包容力のある収納空間が拠り所となってストレスが解消され、日々の暮らしにも住む人の心にもゆとりをもたらしてくれるのだ。

多田祐子(ただ・ゆうこ)

2000年、多田建築設計事務所を設立。お客様の思いを読み取り、7年先のライフスタイルを見据えた設計に定評がある。和の造作を色や音楽に落とし込み現代の空間に融合させカタチにできる数少ない建築家として活躍。街を活性化させていく「地域住民の交流」や「文化活動の拠点」となる空間づくりにも力を注ぐ。「美しく住まう」「整理整頓をしながらセンスを磨こう」などをテーマとした講演家としても活躍。

都市での快適な住まいづくりの秘訣建築家松永基

都市部の住宅地では広い敷地を確保できず、十分な採光・通風や、思うような眺めが得られないことが多い。
そうした状況の中で理想の家をつくるにはどんな知恵と工夫が大切になるのか。
建築家の松永基さんにお話を伺った。

確保したい3要素は採光、通風、プライバシー

都市での住宅建設は、用途地域・防火地域、建ぺい率・容積率、道路との接地状況、高さ規制、北側斜線といったさまざまな建築規制に縛られる。そうした制約をクリアしながら、住宅密集地の限られた敷地であっても明るく、気持ちよく、ゆったりとリラックスできる空間を創り出すポイントは、どこにあるのだろうか。
まず考えたいのは採光、通風、プライバシーの3要素である。建築家の松永基さんは、開口部=窓を高い位置に設けることで、これらの問題は解決できることが多いと語る。トップライト(天窓)やハイサイドライト(高窓)を上手に配置することで、周囲の視線を気にすることなく、心地よい光と風を採り入れたい。夏は天井近くに溜まる熱気を外に逃がすことができ、防犯面でも心配が少ない。

「明るく暮らすために窓はなるだけ大きく取りたいと思うでしょうが、ちょっと考えてみてください。窓の外に見えるのが不快な景色だったら嫌でしょう? また、隣の家や通りから丸見えだと、せっかくの窓もカーテンを閉めっぱなしにするしかありません。だったら思い切って壁でふさいでしまって、天井からすぐ下の壁にハイサイドライトを設けた方が快適です。外からの視線を遮りながら十分な自然光を採り入れることができ、室内からは空の眺めが楽しめますから」と松永さん。
大きな窓は設けても、その向こうの外塀をかなり高くして通りから目隠しし、塀の上部の青空だけが見えるようにする方法もある。

空間を立体的に使って縦・横・斜めの広がりを

次に考えたいのが、広がりを感じる住まい。限られた敷地を有効活用してゆとりのある住空間を生み出すには、家を間取り(平面)ではなく空間(縦・横・高さ)で考えることが重要になる。そこで松永さんは狭小住宅を設計するとき、建物の床の高さをずらして住空間を立体的につくっていく「スキップフロア」という手法をよく活用する。
「空間を立体的に使うことで、見上げたり、見下ろしたり、視線が斜めに抜けて長くなります。すると視覚的な広がりが生まれるのです。一方で、各フロアはオープンにつながりながらも、段差で視界が適度に遮られるため、それぞれの独立感覚も確保できます」
空間が壁で仕切られずにつながっているから、家族の気配がほどよく伝わってくるのもうれしい。

間口に対して奥に長い敷地など、採光が難しい立地の場合は、スキップフロアの住まいの中央に吹き抜けをつくり、最上部の天窓から光を採り入れて「光井戸」にすることで十分に採光できるという。いわば立体で構成された現代の町家の発想。「光井戸」を町家の「坪庭」のように利用するわけだ。
「部屋に吹き抜けがつくれなくても、住まいの中心に蹴上げの部分がないスケルトンの階段を設けて、階段室を光井戸にすれば、家全体に明るく自然光が届き、縦、横、斜めに視線が抜ける開放的な暮らしが楽しめます」

また、インテリアによる視覚効果でも、住空間を広く見せることができる。
「狭い空間を広く見せたいなら、白一色で内装をまとめるのが効果的です。あるいは壁の一面だけ色を変えてアクセントウォールにすると、メリハリが生まれて広がりを感じます」

限られた敷地のため、庭が取れないのも都市の住宅ではよくある。そんな場合は屋上にルーフバルコニーをつくり、庭感覚で楽しむのもいい。青空の下でお茶を飲んだり、バーベキューをしたり、都市の暮らしでリゾート気分が味わえる。

スキップフロアの床下を利用して大収納を実現する

都市型住宅で、もうひとつ頭を悩ませるのが収納の確保だろう。収納スペースはたくさんほしいけれど、そのせいでリビングが狭くなるのは避けたいもの。この点もスキップフロアにすれば、階の上下に生まれるデッドスペースを収納にフル活用できる。
たとえば半階あがった床の下を利用して、延床面積に参入されない(※)天井高1.4メートル未満の大収納空間にすれば、かさばるモノもまとめてたっぷりと収納でき、すっきり広々と暮らせる。ロフトのようにはしごを使わないから安全・便利で出し入れもスムーズだ。
※自治体により、参入する場合もあります。

さらに壁一面に収納を設ける、ソファの代わりになるベンチ収納を造り付ける、小上がりの和室の下を引き出しにするなど、なるべく後からかさばる家具を置かないですむように造作しておきたい。
敷地が限られているからといって、理想の暮らしをあきらめることはない。むしろ、知恵を凝らすことで我が家のライフスタイルに合ったオリジナリティのある住まいづくりを楽しむことができる。

「秘訣は間取りではなく、暮らし方から考えることです。たとえば子どもの勉強部屋をどうしても個室にする必要はありますか?『寝るだけだから2畳あればいい。勉強する場はリビングの一画に設けよう』というように、家族の暮らしをイメージするとうまくいきます」と松永さん。
まずは自分たちがどんな生活がしたいのかを見つめ直し、空間を二次元ではなく三次元で考えて、我が家らしい個性と楽しさに満ちた住まいをつくりたい。

松永 基(まつなが・もとし)

1958年神奈川県横浜市生まれ。1982年日本大学理工学部建築学科卒業。1991年有限会社エムズワークス設立、佐賀和光に従師する。現在、エムズワークス主宰。1989年日新工業建築設計競技3等賞、1992年逗子市公衆トイレコンペ最優秀賞、1996年INAXグリーンカップ銀の鉢賞、2000年リビングデザイン賞「縁側」グランプリ、2007年鎌倉市常盤住宅設計競技優秀賞、2007年JIA(日本建築家協会)「建築家のあかりコンペ」最優秀賞受賞。日本建築家協会(JIA)会員。神奈川建築士会会員。

優良ストック住宅の普及で住まいの資産評価はどう変わる?住宅再生推進機構高橋正典

価値あるものを永く大切に使うストック型社会を迎え、良質の中古住宅を資産として評価し、流通を促進する「スムストック」の取り組みが注目されている。中古住宅市場の活性化に努める高橋正典さんにお話を伺った。

中古住宅を適正に評価し永く住み継ぐ時代が来た

日本の住宅は寿命が短く、30年も経てば建て替え時期と言われてきた。長く新築偏重の時代が続き、建てては壊す「スクラップ&ビルド」の考え方が主流だったからだ。実際、中古住宅は優良物件であっても評価が低く、中古流通市場において築20〜25年の木造物件の建物評価はゼロ。減価償却に関する省令でも、木造住宅の法定耐用年数は22年と定められている。
「古いというだけで資産価値がないと評価されるのはどう考えてもおかしいでしょう。まだ十分使用できるのに取り壊すのは、地球環境保護の視点からも間違っています」と高橋正典さんは語る。
 きちんとメンテナンスをして住宅の価値を守り、永く大切に住み継ぐことは、産業廃棄物を減らすことにもつながる。そこで高橋さんが専務理事を務めるNPO法人「住宅再生推進機構」では建物再生支援を行い、「良質中古住宅Ⓡ認定制度」を設けて安心・安全な中古住宅の普及を推進している。

 政府もこうした状況を改善しようと、中古住宅を有効な住宅資産として活用するための仕組み作りに動き出した。国交省では平成25度から「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」という会合を開催。建物価値が消滅するのを防ぎ、中古住宅市場を活発化させるために、どのような市場環境の整備と制度が必要なのかを議論している。
「今や総住宅数は世帯数を大きく上回り、空き家は過去最多となる820万戸と増加の一途を辿っています。お金にならないから売りに出されず、空き家になったままの物件も多いのです。住宅資産を資金化できれば、こうした空き家問題の解消にもつながるでしょう。高齢者が自宅を担保に年金の形で借り入れができるリバースモーゲージも本格的に普及するかもしれません」と高橋さんは期待する。

スムストック条件を満たす資産価値ある家づくりを

 住宅メーカーでもすでに新築物件の開発・販売だけでなく、既存の住宅を社会共通の資産にするための取り組みに力を入れている。2008年にはミサワホームを含む9社が参加して「優良ストック住宅推進協議会」を設立(現10社)。良質な中古住宅を「スムストック」として評価し、広く流通させようと努めているところだ。
 スムストックは、「住宅履歴情報の保有・管理」、「50年以上の点検制度・メンテナンスプログラム」、「新耐震基準レベルの耐震性能」という3つの条件を満たす住まい。査定は構造躯体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)に分けて行われるので、住宅の価格がより明確になる。販売時には土地の価格と別々に表示される。また、リフォーム履歴やメンテナンス記録も含めて査定されるので、売り主は手入れした分、価格面でも高く評価されるメリットがある。

「中古住宅の購入の難しさは、建物がどのような状態なのか、わかりづらいことでした。なかには『古い味わいが好き』といった理由で中古を選ぶ方もいますが、住宅はビンテージの家具を買うのとわけが違います。家族の安全を守るシェルターですから、耐震性など構造がきちんと評価されている点は何よりも納得ですね」と高橋さん。
 目に見えない性能や住まいの履歴がきちんと把握でき、築50年以上のメンテナンスプログラムも継承できるとなれば、買う側の安心感は大きく高まる。
「終身雇用制度が崩れ、将来の保証が見えない今、長期の住宅ローンを安心して組むためにも、資産価値を高く保てる家づくりは不可欠だと思います。また、住宅は人よりもずっと長生きします。『スムストック』のお墨付きがあれば、お子さんにも喜んで住み継いでもらえるのではないでしょうか」

高橋正典(たかはし・まさのり)

NPO法人「住宅再生推進機構」の専務理事として、『ストック住宅』の流通促進や「長期優良化」に関する活動を行う。国土交通省 長期優良住宅先導事業採択による「住宅履歴書」に関する講演・セミナーや、不動産会社と建築・リフォーム事業者、並びにファイナンス事業者との事業者連携コンサルティングの実績多数。また、不動産業界を単なる紹介ビジネスではないエージェント企業とすべく、株式会社バイヤーズスタイルを設立し、業界初全取扱い物件に「住宅履歴書」を導入、顧客の資産価値の向上を図る。その後、社名を価値住宅株式会社として「住宅価値創造企業」を目指す。

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
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