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住まいができる防犯対策を知ろう!一級建築士・総合防犯設備士相川 隆

1日あたり約101件※も発生しているという、住宅を対象とした侵入窃盗被害。
ふだんの暮らしのなかで、どのように住まいの防犯対策に取り組めばいいのだろうか。
防犯について、専門に研究を続けているミサワホーム総合研究所の相川隆主幹研究員にうかがった。

──最近の被害の実態を教えていただけますか。

相川  住宅が対象の侵入窃盗の認知件数は平成16年から減少傾向にあります。 とはいえ、平成29年の認知件数は約3万7千件。 約15分に1件のペースで被害が発生している計算ですから、誰にとっても他人事ではないですね。

──減少理由を教えてください。

相川  警察庁や国土交通省がともに「安全・安心まちづくり」の推進をしてきていますが、平成15年以降、官民協力して「防犯性能の高い建物部品」の開発が進み、平成18年度の住宅性能表示制度の改定では、評価項目に「防犯に関すること」が追加されました。 現在では、一定の基準を満たしたサッシやドアなどに、「官民合同会議」で認定された「防犯性能の高い建物部品」のみ使用できる「CPマーク」が貼付されるようになりました。 今も、住宅機器メーカーは防犯性能に目を向けた開発に力を入れています。 また、自主的にまちの見回りを行う防犯ボランティアの方々が増えたことなど、幅広い取り組みが減少の理由として考えられますね。

──具体的な防犯対策として思い浮かぶのは、高い塀にぐるりと囲まれ、他人が容易に侵入できない家ですが。

相川  そのような家は、いったん敷地に入ってしまえば、周囲の視線を気にすることなく犯行が可能ですから、むしろ狙いやすい家といえます。 侵入盗は人に見られることを最も嫌います。 そのため、敷地に入ってから建物内に侵入するまでの一連の動作が、周囲から見えにくい家を狙うのです。

──防犯ボランティアなどの地域のつながりが被害件数の減少に貢献するのは、侵入盗が人の目を恐れるからなのですね。

相川  たとえば、外構がオープンな作りになっている家は、道路からの見通しが確保されているため、周囲の人の目が届きやすいですよね。 侵入盗にとっては、狙う家を物色するための敷地内の様子をうかがう行動や、敷地に入り込もうとする不自然な姿、敷地に入って建物に侵入する行動も周囲から見えやすくなってしまうわけです。

──ブロック塀で囲んだ閉じた作りだと、夜も窓の明かりが塀で遮られて道路が暗く、侵入盗が姿を隠しやすいですね。

相川  家人の不在を周囲から不審に思われずに確認できる家も、狙われやすいといえます。たとえばインターホンの位置。 門扉についていれば、インターホンを押す姿が周囲から見えます。返事がないのにもかかわらず、敷地に入って行けば、当然不審に思われてしまいます。 対して玄関にインターホンがあると、侵入盗は誰からも不審がられずに玄関の前にたどり着くことができます。 そこからさらに、侵入しやすい箇所を探すために家の裏手に回ろうとする場合も、途中に木戸などがあれば、入ることに抵抗を感じますが、何もなければ、すっと入って行けます。 侵入盗はそうした違いを一つひとつ見ながら、狙う家を定めるのです。

──侵入盗側の視点に立つと、狙われやすい家がわかりますね。

相川  プライバシーを守ることも大切ですから、オープンにすることに限界がある場合は、防犯カメラの設置もおすすめです。 侵入盗は光や音も嫌います。センサーライトや警告音で侵入盗を威嚇するとともに、音声で知らせるセンサーや受信機なども有効ですね。

──防犯カメラ作動中というステッカーも効果がありそうですね。

相川  狙われにくくする以外にも、防犯性能の高い建物部品を使うなど、建物の中に入りにくくする工夫も大切です。 また、侵入盗は、なるべく短時間で犯行を済ませたいと考えますから、貴重品は探すのに時間がかかる場所にしまったり、分散したりしておけば、万が一侵入されても、被害を最小限に食い止められます。

──侵入窃盗の被害に遭うのは、〝運〞の問題だけではないのだと感じます。

相川  被害に遭っても対策をせず、再び侵入されてしまったという例もあります。ちょっとした防犯対策の積み重ねによっても、侵入盗に狙いにくいと思わせる効果があるのです。

──日頃から防犯意識を持つことはとても大切ですね。本日はありがとうございました。

※「平成29年の刑法犯に関する統計資料」(警察庁)より作成

相川 隆(あいかわ・たかし)

株式会社ミサワホーム総合研究所フューチャーセンター 市場企画室スマートホーム研究PJ 兼デザインセンター 空間デザイン研究室主幹研究員 一級建築士・総合防犯設備士

将来も安心できる賢い住宅ローンの借り方ファイナンシャルプランナー久谷真理子

さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っている今、住宅ローンの選択肢も広がっている。
とはいえ、どんなことに気をつけて選べばいいのかわからないという方も多いはず。
住宅ローンの選び方や資金計画について、ファイナンシャルプランナーの久谷真理子さんに伺った。

●住宅ローンを利用する際に、気を付けておきたいポイントとは何でしょうか。
久谷 利用する際の大切なポイントは4つあります。1つめは「条件のいい住宅ローンを選ぶ」ことです。金融機関ごとに、金利はもちろん、ローン保証料や事務手数料、団体信用生命保険の保険料やその商品内容などが異なります。借入後のメンテナンスのしやすさにも着目することをおすすめします。たとえば、繰り上げ返済の手数料を確認することも大切です。住宅ローンは、金利以外の面でも差が出ます。きちんと比較して賢く選びたいですね。
●住宅ローンとひとくちに言っても条件が違うのですね。

久谷 2つめは「使い勝手のよい住宅ローンを選ぶ」ことです。土地を購入して住まいを建てるという場合には、建物工事着手前の土地代金の支払いをはじめ、建物工事請負契約の契約金、着工金、中間金や最終金など、工事状況の各タイミングで支払いが必要になります。融資が実行されるタイミングも各金融機関や住宅ローン商品によって異なりますので、それぞれの特長をよく把握して、使い勝手のよい住宅ローンを選びましょう。

●初めての住宅ローンでは、必要な手続きを把握するだけでも大変です。ひとつの窓口ですべてが行えるのは、とても安心です。
久谷 最近では金融機関の顧客獲得対策の一環として、住宅ローン商品にもさまざまな工夫が行われています。たとえば、住宅ローンの返済を一定期間保障したり、残債をゼロにする疾病保障付き団体信用生命保険や、若年子育て世帯や地方への移住世帯等に対し、一定期間借入金利を引き下げる制度を用意した住宅ローンもあります。金融機関ごとのこうした特長も、住宅ローンを選ぶときのポイントですね。
●人生100年時代と言われている中、人生に訪れる予期せぬ転機も増えていると言えます。そうした事態にも対応できる住宅ローンは、ときに人生の選択肢を増やしてくれる頼もしい味方にもなりそうですね。
久谷 3つめは「ライフプランをしっかりと立てる」ことです。子どもの成長に伴う教育費の負担、定年によるリタイヤなど、人生にはさまざまなライフステージの変化があり、収支のあり方も変わってきます。子どもが幼いときは家計に余裕が生まれやすいものですが、そのときの余裕に合わせてローンを利用すると、教育費の負担が増えるにつれてローン返済を負担と感じる可能性があります。

●支出のピークがどのタイミングに訪れるのか、ピーク時にゆとりを持って対応できるか。そうしたことを考えておくべきですね。
久谷 40代で35年ローンを利用する方は少なくないですが、完済時の年齢は70代後半になります。ローン自体は繰り上げ返済や退職金で返せたとしても、老後の生活費についてもしっかりと考えておくべきです。将来の見通しを立て、それに合わせた資金計画を立てることが大切ですね。
●ライフプランは一人ひとり違うもの。住宅を手に入れることは、自身のライフプランを改めて見直すよい機会にもなりそうです。
久谷 4つめのポイントは、資金に優先順位をつけることです。住宅ローンを最優先にしてしまうと、たとえば家族の一番の趣味だった旅行を我慢しなければならなくなるなど、楽しみの少ない生活を強いられることになってしまうかもしれません。また、住宅ローンを払っているから貯蓄ができないといった状態には要注意です。お金の使い道は他にもあることを考えて、住宅ローンと貯蓄はセットで行うという気持ちをもちたいと思います。
●暮らしを豊かにするためにも、万が一に備えるためにも、ゆとりを持った資金計画が大切なのですね。ありがとうございました。

久谷真理子(くたに・まりこ)

相続・不動産コンサルティングのFP会社「株式会社フリーダムリンク」専務取締役。住宅ローンや相続・不動産などの相談および実行支援業務のほか、各種セミナーの講師を務める。ミサワホームのWebサイトでも「住まいとお金」について連載あり。

住まいの「強さ」を実現する技術とは明治大学梶川久光准教授

住まいにおける強さとは? そしてその強さを実現する構造とは?
木質構造を専門分野として研究を続けている明治大学の梶川久光准教授に、
強さを実現するための技術について、基礎的なことから教えていただいた。

●固さイコール強さではない?

強い住まい。その表現は、住まいづくりを検討している方なら、一度は聞いたことがあるはずだ。けれど、住まいの強さとは何なのだろう?具体的に考えようとしてみても、頭に浮かんでくるのは、ガチガチに固められた塊のような漠然としたイメージだ。
「固さイコール強さといったイメージを抱いている方は、確かに多いかもしれませんね。けれど、住まいの強さに必要なのは、固さよりもバランスなのです」
 そう語るのは、明治大学理工学部で木質構造建築物を研究している梶川准教授である。
「ひと口に住まいの強さといっても、何に対して強いのかという前提によって強さの種類が違ってきます。地震や台風、大雪に対する強さなのか。あるいは、傾斜地などで高い部分から低い部分にかかる『土圧』に対する強さなのか。住まいにはさまざまな強さが求められます。そういう意味では、ありとあらゆるものに対する強さが必要といえるでしょうね」
 梶川准教授の専門分野は「主に木質構造」である。強い住まいには、どのような構造体が適しているのだろうか。梶川准教授から返ってきたのは、「真のモノコック構造である木質パネル接着工法」という答えだ。
「モノコック構造とは、力を全体で瞬時に分散して受け止める『一体構造』を指します。ジェット機などにも採用されていますが、実は自然界にもある構造なのです」
 卵もそのひとつ。大事なヒナを守る卵の殻は、自然界が生み出した精緻なモノコック構造だ。

●適度な柔らかさが強さを実現

「モノコック構造は、固すぎると、全体でバランスよく外からの力を受け止めにくくなります。少しだけ柔らかいことが必要なのです。ジェット機がしなるようにつくられているのも、それが理由です」
 ジェット機のアルミ合金製の外板は、厚さがわずか1〜2㎜程度。あの巨大なボディの安全性が、そんな薄い外板で実現できるのはなぜなのだろう?
「外板ばかりが強すぎると、外からの力で接合部が先に破損してしまいます。一体構造として最大限の強さを発揮するには、全体でバランスが取れた強さが必要です」
 あの薄さだからこそ、構造体全体での強さを実現できているというわけだ。
「木質パネル接着工法のすぐれた点は、パネル同士を接着剤で強固に面接合していることと、パネルに使用している構造用合板の厚さが絶妙であることですね。加工しやすいギリギリの厚さであり、なおかつ接合部分との強度のバランスも最適になる厚さです。木質パネルはそれ自体の剛性※がきわめて高いですから、構造用合板をこれ以上の厚さにしてしまうと、外力に対して結合部が破損してしまいます。実に絶妙なバランスです」

 2×4工法(枠組み壁工法)や木造軸組み工法でもモノコック構造と呼ばれるものがあるが、違いはあるのだろうか。 「それらは構造部材が面ではなく、点で接合されています。そのため、外力が点接合部分に集中し、全体で分散して受け止めることができません。住まいにおける真のモノコック構造と呼べるのは、木質パネル接着工法だけだと思います」
 モノコック構造となる住まいは、素材に鉄を使っても実現できるのだろうか。
「0.1㎜といった薄い鉄板に置き換えれば不可能ではありません。ですが、重量はかさみますし、熱を伝えやすいため、大量の断熱材が必要になってしまいます。現実的には難しいでしょうね。その点、木は面接着も容易ですから、モノコック構造に向いた素材といえますね」
 木質パネルの強度に着目し、新構法の研究にも取り組んでいる梶川准教授。木質パネル接着工法は、これからも新たな可能性を見せてくれそうだ。

※構造物・構造部材が変形に対して示す抵抗の度合い。荷重と変形の関係を示す曲線の傾きで表される。

梶川久光(かじかわ・ひさみつ)

明治大学理工学部建築学科専任准教授。工学博士。建築構造分野における木質構造建築物に関する研究や、被災度判定計を用いた建築防災技術の研究などを手掛ける。

これからの時代に求められる「金融力」のある家移住・住みかえ支援機構大垣尚司

時代が大きく移り変わるなか、住宅を取り巻く環境はどのように変化しているのだろう。
そして今、どんな住まいをどのように手に入れるのが得策なのだろうか。
これからの時代に求められる住まいと取得方法について、住宅金融の第一人者にうかがった。

●将来への課題

── 価値観の多様化が進み、時代が大きく変わりつつある今、住まいや暮らし方についてはどんな変化が起こっているのでしょうか。
大垣 かつて家を買うことは、人生における「お約束」のひとつでした。30歳頃までに結婚して子どもができたらアパート・社宅を出て家を買うのが人生双六におけるお定まりの通過点だったのです。
これを支えたのは自分に対する「成長への期待」です。国税庁の給与統計をみると、1980年代前半に入社した新入社員時の収入は、家を買う30代の後半には3倍近くに増えています。終身雇用・年功序列の給与体系が維持されていたこともあって、家を安心して買うことができたのです。
しかし、今は違います。同じ統計で、1995年に社会人になった人をみると30代の後半になった時点の収入は約1.6倍にすぎません。最近はもっと悪化しているかもしれません。当然そこから先も以前のように楽観できません。

── 現在は、将来の見通しが立てにくい時代というわけですね。
大垣 そのことに拍車をかけているのが、長寿化と高齢化です。1940年代後半と比べ、日本人の平均寿命は約20年も延びています。女性は半数、男性は4分の1が90歳まで生きる時代になったのです。ところが、働いて収入を得る期間はそれほど延びていないわけですから、生涯支出が単純に20年分増えたことになります。なかでも特に問題となるのが住居費です。将来が見通せないからといって家を買わなければ、引退後も家賃がかかる。そもそも、60歳以上の人の入居を認めてくれる賃貸住宅が不足しているという問題もあります。
それでは家を買えばよいのかというと、そうでもありません。実は、国の住宅法制は家の標準的な耐用年数を一世代25年程度と想定しています。これは戦後まもない時期において平均的な日本人が家を買ってからの余命がだいたいその程度であったことを念頭においたものです。しかし、人生90年を前提にしますと、家の耐用年数は少なくともその倍の50年程度なくては困るということになります。
このように、今、家を買うことを考えていらっしゃる世代の人たちは、将来を見通せないなかで、家を買うことのリスクを意識せざるをえないにもかかわらず、老後に家を持たないことのリスクはむしろ増えているという、大変難しい状況に置かれています。

●優れた投資商品

── 家を買うことが当たり前という時代は終わっても、所有する意味はむしろ今の方が大きくなっているといえそうです。
大垣 そうですね。特に、金利が歴史的に低い現在に限っていえば、家を資産として購入することにはそれなりの経済合理性があります。
上部の表は、35歳で住宅ローンを借りて住宅を購入した人が90歳で亡くなった場合と、家を買わずに一生賃貸した場合とで、死亡時の財産状況を比較したものです。大雑把に言うと、持ち家派はローン金利が負担となる反面、老後の住居費が不要で最後は土地が残ります。一方、賃貸派は老後に家賃負担がかかる反面、引退までにより多くの金額を運用できます。細かい想定についていろいろな考え方があるので一概には言えませんが、現在のようにローン金利がきわめて低い一方で、金融資産の運用利回りが見込めないという環境ですと、持ち家派のほうが経済的に有利になるわけです。
実は、かつてのように、高いローン金利の下で同じ計算をすると、家を買わないほうがかなり有利ということになります。それでも家を買ったのは、たぶん地価上昇への期待があったということではないかと思います。これに対して、今は客観的には買ったほうが有利なのですが、将来不安からなかなか踏みきれない。逆に言えば、将来不安を払拭できる仕組みさえあれば、借入による住宅購入は、消費者が低金利の恩恵を資産形成に活用する最も確実な方法だと言うことができます。

●長寿命住宅

── 今は、家を購入したほうが将来的にも得策だということですね。
大垣 そうです。ただ、90歳まで生きるとなると、そこまで長持ちする家が必要です。多少高額でも、いわゆる100年住宅(認定長期優良住宅)を選んでおけば、安心なだけでなく、生涯コストも抑えられ、結局安くつく可能性が高いということができます。
それから、環境問題も家とは切り離せない課題のひとつです。日本の総CO2排出量のうち、住宅は実にその30%を占めています。すでに自動車メーカーは、ガソリン車から電気自動車へという過激な方針転換を余儀なくされているわけですが、その波は確実に住宅にもやって来ます。家の場合、CO2は新築時に最も多く排出されますので、何よりも長持ちさせることが最も効果的なのです。
── 環境問題にも、住宅が長寿命であることが重要なのですね。

●住まいにも金融力を

── 先ほど、将来不安を払拭できる仕組みさえあれば、借入による住宅購入は低金利の恩恵を資産形成に活用する最も確実な方法だと言われましたが、実際に、そういう仕組みはあるのでしょうか。
大垣 みなさんの人生に今後何が起こるかは誰にもわかりません。でも、もし土地と家の価値がローンの残高を常に上回っているなら、万が一のときは家を手放せばよいわけです。一方、一生同じ家に住み続けるとは限りませんから、住みかえたときは家が年金になるような仕組みがあると理想的です。ただ、家や土地がいつでも希望する価格で売れるとは限りません。そこで、優良な住宅の持つ「賃貸価値」を国の支援を得て保証すれば、住宅を安定的にお金に変える仕組みが提供できるのではないか。そういう考え方に立って10年前に設立されたのが、「移住・住みかえ支援機構(JTI)」です。
JTIは、マイホーム借上げ制度を通じて、シニア層の住みかえ支援をすると同時に、基本性能が高い長寿命住宅については、利用者の年齢を問わずいつでも一定金額以上で借り上げることを長期間保証する「かせるストック証明書」を通じて良質な住宅ストックを循環させることを推進しています。JTIの支払う家賃には国の基金による債務保証がなされていますので、かせるストック証明書の発行を受けた住宅は、将来住みかえたときには公的年金と似た役割を果たすことになります。
また、2017年10月からは、住宅ローン債務の履行をJTIが引き受けることで、万が一住宅ローンの返済が困難になった場合のセーフティネットを提供する「かeせるオプション証明書」の発行がスタートしました。
「かせるストック証明書」と「かeせるオプション証明書」は、家に「金融力」があることの証明書と言うことができます。

── 「リタイヤ後は自宅を賃貸することで家賃収入という「私的な年金」を得ることができる家。万が一のときは住宅ローンを返すこともできる家。家に利用する価値が生まれ、それが暮らしの資金になる。まさに家の金融力ですね。これからは、金融力があるかどうかが住宅取得の新しい決め手になるということでしょうか。
大垣 はい。長寿化が進み、将来の見通しが立てにくい時代において、良い家とは、単にハードとして優れているだけでなく、そのハードが持つ金融力が目に見えるかたちで保証されているというソフトが優れているものであることが不可欠です。言いかえれば、あたかも家の部材のひとつとして「金融力」を組み込んだ、ハード・ソフト一体のシステムとしての家を提供していくことが求められているわけです。
実は、ミサワホームは、こうした私どもの考えにいち早く共鳴され、先ほどお話した「かせるストック証明書」と「かeせるオプション証明書」の両方を日本で最初に取り入れた「ライフデザインシステム」を制度開始と同時に導入されました。この名前には、家を売ることは、買う方の人生に対してコミットすることだという企業としての矜持(きょうじ)がはっきりと現れていると思います。
家は人生最大の買い物です。どうか、ハードだけでなく、金融力とそこに込められたつくり手のコミットメントをよくみた上で、歴史的な低金利の恩恵を十二分に活用し長い人生に備えていただきたいと思います。
── 「金融力」のある家に期待が高まります。本日は、ありがとうございました。

大垣尚司 (おおがき・ひさし)

青山学院大学法科大学院教授/一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事 東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在職。2006年に「一般社団法人 移住・住みかえ支援機構」の代表理事に就任。日本モーゲージバンカー協議会代表理事、金融審議会専門委員、独立行政法人住宅金融支援機構評価委員等を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金-住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

日常を疎かにしない防災のすすめ朝日新聞一色清

報道を通してさまざまな分野を取材し、提言を続けてきた一色清さん。
自然災害については高を括らず、「日常と備えのバランス」が大切だと語る。
ここではご自身の身近な状況も含め、防災についてのご意見を伺った。

身近で進む耐震化制度が後押し

── 東日本大震災から8年。防災や減災について、身近に感じられていることは何でしょう。
一色 2013年に、国土交通省が「建築物の耐震改修の促進に関する法律」の改正法を施行しました。主なポイントは、不特定多数が利用する病院や店舗、旅館などの旧耐震基準建築物に対し、15年末を期限に耐震診断と結果報告を義務づけるというものです。また、それまで規定のなかったマンションや戸建て住宅などにも、旧耐震基準建築物については耐震診断と耐震改修の努力義務を求めています。
こうした制度により、私の身近でも耐震改修工事を施す建物が増えてきました。最も身近なところでは、妻の実家が耐震補強を目的にリフォームしました。最初は躊躇していましたが、自治体からの助成もあり、少ない負担でより暮らしやすい環境を手に入れたと、今ではとても喜んでいます。また近所のボウリング場も耐震基準に満たないとして、建て替えられることになりました。さらに言えば、実家のある松山では、明治期に建てられた「道後温泉」をどう上手く耐震改修工事するのか、これが話題を集めています。今、日本中でそうした耐震改修工事が進んでいるのではないでしょうか。

日常を疎かにしない防災が必要

── 一方で、東日本大震災直後には高まった防災意識も、今はかなり薄れているように思います。
一色 実は先日、妻と我が家の防災について話す機会がありました。東日本大震災時に水を確保するのが大変だったこともあり、その後、かなりの量の飲料水や食料を買い込んだとのこと。ところが、それらがそっくりそのまま保管されていることがわかりました。災害用につくられた水でも賞味期限は5年だそうですから、我が家の備蓄品はかなり怪しい(笑)。唯一、上手く使用と備蓄が循環できているのが、カセットコンロ用のガスボンベでした。これは、ふだん鍋料理にある程度の頻度で使用するからなんですね。
逆に関心したのは、各部屋に懐中電灯を吊るし、閉じ込められたときのために浴室とトイレに笛を置いていること。また、寝室に履き物を備えていることでした。
── 防災について家族と話し合うことは大事ですね。
一色 そうなんです。備蓄品の確認だけでなく、こういう場合は何をして、どう避難するのか。あるいは家族が離れているときに、どう連絡を取り合うのか。災害時のシミュレーションをして、それを家族が共有することが大切だと思います。

── 住まいは家族の防災拠点でもあります。今後は何が求められるのでしょうか。
一色 東日本大震災後の調査で、メディアで最も役立ったものは何かという問いに、被災地以外の人は「テレビ」と答えたのに対し、被災地の人は「ラジオ・新聞」でした。「ラジオ・新聞」は、電気がなくても情報の受発信が可能です。その例からも、大規模災害時は「電気が使えない」ことを前提に考える必要があります。
長期に自宅で避難する場合を考えると、太陽光発電と蓄電池などを備えて、電気の「自産自消」を図ることも考えなくてはならないと思います。そうした創エネ、蓄エネはふだんの暮らしにとってもメリットがありますね。また、電化製品も、停電時に稼働できるバックアップシステムがあるとうれしい。家電が使用できるだけで、本格的な支援を待つ間も日常に近い形で生活できて、ストレスも軽減されるはずです。
これからの防災の要は、日々の暮らしを快適にしたうえで、何ができるのか。日常を疎かにしない防災。そんな視点が大切なのではないでしょうか。

一色清(いっしき・きよし)

1956年、愛媛県松山市生まれ。東京大学法学部卒。78年朝日新聞社に入社し、福島、成田支局を経て、東京本社経済部。証券、農林水産、エネルギー、自動車、貿易、大蔵などを担当後、94年に『アエラ』編集部へ。2000年より『アエラ』編集長。『be』エディター、出版本部長補佐などを経て、08年10月からテレビ朝日『報道ステーション』コメンテーターを務めた。12年1月まで『WEBRONZA』編集長。現在、教育総合本部 教育コーディネーター。

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
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