Column│新しいライフスタイルのご提案や、子育て、オーナーさまのこだわりのお宅拝見、
著名人によるコラムなど、毎月厳選した住まいに関する情報をお届けいたします。

街や自然とほどよくつながる住まいアーバンデザイナー猪狩 達夫

心地よい暮らしは、外とのつながりを抜きにしては考えられない。エクステリアの植栽計画にはどんな工夫が必要なのだろう。エクステリア&ガーデンアカデミー前学長の猪狩達夫さんにお話を伺った。

個人、家族、近隣、3つの小風景づくり

エクステリアデザインの目的は、①個人単位の小風景づくり、②家族単位の小風景づくり、③近隣単位の小風景づくりの3つに大きく分けられると猪狩達夫さんはいう。
「1つ目は、庭やバルコニーなど、個人と自然が対話できる空間づくり。植物を愛で、水やりや土いじりでやすらぐ『癒やしの景』です。窓辺に置く寄せ植えやハンギングバスケットもこれに入るでしょう。2つ目は、『団らんの景』。家族で屋外生活を楽しむスペースづくりです。みんなで菜園や花壇をつくったり、屋外パーティーなどミニイベントも開ける活動的なシーンですね。そして3つ目は、花と緑に彩られた街並みづくり。地域に根ざす『社会の景』です。家の前庭や花台・バルコニーを植栽や花鉢で飾り、隣人たちと共同で道路に面した生垣等を剪定管理することで、美しい街並みを創り出すことができます」。

常緑樹と落葉樹をバランス良く配置する

エクステリアをプランニングするときは、まずアプローチ、駐車場、門扉やフェンスなどの要素と住まいのつながりを考えて、機能的な動線を決めたい。ただし、アプローチは住まいの顔になり、街並みにも影響を与える存在なので、「路」としてとらえるだけでなく、潤い豊かな「空間」として演出することも大切だ。屋内の窓からどう見えるか、あるいは歩いてくる人の目にどう映るかなど、景色を意識して、アプローチを含めた庭づくりを進めたい。
「エクステリアに命を吹き込むのが植栽の緑ですが、ここで大事になるのが樹種の選定です。常緑樹ばかりを植えると暗さや圧迫感が生まれ、うっとうしくなりがちですし、かといって落葉樹だけだと冬は葉が落ちて寂しい風景になってしまいますから、バランス良く配置したいですね。花や実が楽しめる樹種を植えると、より豊かな表情になって楽しいですよ」

猪狩さんは「マイ・アウテリア」と称し、パーゴラ、デッキ、テラスなどを使った自然浴や団らんが楽しめるスペースづくりを提唱している。住宅まわりの空き空間を活用して、「瞑想空間」「夫婦の対話空間」「ミニパーティースペース」など、自分たちのライフスタイルに合ったスペースを創り出そうという提案だ。
「庭にウッドデッキやテラスを設ける場合は、どんな使い方がしたいのか、具体的なシーンを思い浮かべて計画すれば失敗がありません。たとえばバーベキューを楽しむなら、緑陰や日除けはどうしようか、何人集まるのか、テーブルからの眺めはどうか、水場は必要か...というふうに課題を明確にしていくのです」
また、隣地や道路との境界に塀をつくるときは、高さに気をつけたい。高いほど防犯に効果的だと考えがちだが、実はそうではない。いったん侵入されてしまうと外部から中が全く見えなくなるため、かえって逆効果になりかねない。透過性のあるフェンスや生け垣で、乗り越えにくい程度の高さにするのがおすすめだ。

壁面を上手に活用すれば、狭くても豊かな緑化が叶う

植物は温度が上がれば葉から水分を蒸発させ、気化熱によって周囲の温度を下げる働きがある。従って庭に樹木を植えたり、屋上緑化をすることによって冷暖房エネルギーが節約でき、都市のヒートアイランド現象の緩和にも役立つ。地表を低く覆う性質を持つササやシバなどの地被植物を植えるのも緑化に効果的だ。
また、落葉樹を窓の近くに植えれば、夏場は繁った葉で強い陽射しや放射熱の室内への侵入を防ぐことができ、冬場は落葉して暖かな陽だまりを室内に取り込めるので、エアコンだけに頼ることなく快適に暮らせる。

ただ、ゆとりのない植栽スペースに無理をして植物を植えても、環境が整わず立ち枯れさせてしまう恐れもある。そんな場合は、壁面を活用すると効果的だ。フェンスやブロック塀にツタなどのツル性植物を絡ませてもいい。
「壁から離してワイヤーメッシュを張り、緑化植物を這わせれば、小さな地面でも豊かな緑化ができますし、植物の根で建物を傷めることもありません」と猪狩さんはアドバイスする。
エクステリアと建物は切り離せない関係だ。一体にデザインすることで美しいハーモニーが生まれ、心地よい住環境が得られる。敷地条件や建物の設計にマッチした外構プランを描き、枕木やレンガ、テラコッタといったエイジングが美しい素材と植栽を組み合わせて、年月を経るほどに味わいを増す佇まいを創り出してはいかがだろう。

猪狩 達夫(いかり・たつお)

アーバンデザイナー。エクステリア&ガーデンアカデミー前学長。1959年早稲田大学建築学科卒業。菊竹清訓設計事務所に入所。カナダに渡り、トロント大学大学院アーバンデザイン専攻修了後、ロンドン滞在を経て帰国。1968年より大阪で都市計画に携わる。1972年、(株)イカリ設計を設立。2000年、兵庫県より「人間サイズのまちづくり・街並み設計賞」受賞。著書『戸建て集合住宅による街づくり手法』、編著『イラストでわかるエクステリアデザインのポイント』など。

広々快適にくつろぐ工夫に満ちた究極の「狭小邸宅」クルーザーデザイナー薄 雅弘

海の上を走りながら、贅沢な気分でゆったりとくつろぎの時間を楽しめるサロン・クルーザー。限りあるスペースに上質の居住空間を創り出す薄 雅弘さんのデザインには、視線の広がりと心地よさを生むヒントがいっぱい!

サロン・クルーザーは洋上のコンドミニアム

シャチを思わせる流麗なボディの後部にあるアフトデッキから船室に入ると、そこには6〜7人がくつろげる本革シートを備えたリビングが広がっていた。約8畳大のスペースに操縦席、キッチン、シャワールーム&トイレまでもが配置されているにも関わらず、窮屈さを全く感じさせない。まさに「洋上のコンドミニアム」である。
限りあるスペースをいかにデザインして、ゆったりと快適に過ごせるラグジュアリーな空間に仕立てるか。サロン・クルーザーは、いわばその大命題をクリアした究極の形と言えるだろう。

このクルーザーをデザインしたのは、薄 雅弘さん。ヤマハ発動機株式会社で25年のキャリアを持つボートデザインの第一人者だ。船とはいえ、ソファの座り心地からキッチンの使い勝手まで、オーナーから求められる機能や美しさは住まいと同じレベル。IHクッキングヒーターは2口、電子レンジ、温水器、エアコンはもはや当然の設備である。高価なものだけに、洗練されたインテリアや素材の本物感、上質のくつろぎと空間のゆとりも欠かせない。こうした難しい課題を薄さんはどんな風にクリアしたのだろうか。
「このクルーザーの場合は、壁面や建具に鏡面加工を施した黒檀の銘木をあしらい、横目の木目柄で水平ラインを強調することで視線の広がりを演出しています。キッチンなど目に入る設備は同じ黒檀の扉で高級家具のように見せてすっきりと統一させました」

茶室の知恵を取り入れて、寝室に視覚的な広がりを

船の前部に設けた主寝室もひとひねり。入口を狭くして奥に行くほど幅広く、天井高くする遠近法で開放感を生んでいる。
「実はこれ、茶室のにじり口から得た発想なんです」と薄さん。
狭い空間を上手に間取って端正で居心地のいい住まいを創り出す日本古来の知恵や美意識を、クルーザーにもさりげなく取り入れているのである。また、壁の一部をミラー貼りにすることでも、視覚的な広がり効果を出している。
照明にも目を向けてみよう。
「最近はクルーザーもLED照明がトレンドです。ただしLEDの光は冷たくなりがちなので、白い色に負けないよう暖色系のインテリアコーディネートをしたり、電球色に近い暖かみのある色を選んだりすることが多いですね」
天井のFRPがパール素材入りのホワイトで塗装されているのも見どころだ。ダウンライトの光が当たると反射で拡散し、明るさと広がりが生まれる仕掛けである。また、ラウンジシートの下にはテープライトを組み込むなど、間接照明のあしらいも優美である。

船の設計者と二人三脚で、理想の空間を創っていく

サロン・クルーザーの設計デザインでむずかしいのは、海の上を走る乗り物としての性能と、「邸宅」としての心地よい居住性を両立させることだ。
「船は自動車やモーターサイクルのデザインとアプローチが全く異なります。自動車やモーターサイクルの構造は内骨格で、外装は風を防ぐなどの役割はあっても、主機能を有していませんから、そこでデコレーションができます。でも、船の場合は外骨格で、いわば昆虫と一緒なんです。ボディがない限り、浮かぶことも進むこともできません。走るという性能を外骨格でしっかりと実現しつつ、内部を快適なサロンに創り上げていかなければなりませんから、まさに船の設計者と二人三脚の仕事になります」と薄さんは語る。

たとえば海の眺めと開放感を楽しむために窓が重要な役割を果たすのは住まいと同様だが、船は波を乗り越えて着水したとき、最大で自重の20倍の荷重がかかるため、普通の窓では耐えきれず、壊れてしまう。そのため構造解析をして強化ガラスを使い、補強材で固定しつつ、思い通りの広い視界をデザインしていく。
また、居住空間をデザインするとき、設計者がエンジンを据えたいと思う位置が、薄さんにとっては避けたい場所だったりすることもある。「もっと後ろに持っていけない?」、「いや、これ以上は無理かな」。そんなせめぎ合いはしょっちゅうのこと。エンジン音を防ぐために吸音材を入れ、壁の角を丸くして音が響かないようにするなど、コンビを組み、頭を突き合わせて対策を考え、どちらにとってもベストのレイアウトを生み出していくという。

サロン・クルーザーには、狭小・変形地での上手な家づくりのヒントがたくさん隠れている。たとえば色の使い方ひとつで、空間を広く見せられると薄さんは言う。
「一番低い床の部分を濃い色にして、そこからベージュ、ホワイトとグラデーションをつけるなど、足元から上にいくに従って明るい色にしていけば、実際よりも広さと高さを感じることができます。また、狭い部屋でも家具の高さを5センチ下げるだけで、空間は広く見えるものです」
これから家づくりをお考えの方は、頭の隅に残しておきたいワンポイント・アドバイスである。

薄 雅弘(うすき・まさひろ)

桑沢デザイン研究所プロダクトデザイン卒。1987年、ヤマハ発動機入社後60モデル以上もの数多くのボート&ヨットをデザイン。ヤマハ発動機退社後、現在は株式会社Markes 代表取締役。

いいまち見つけて豊かな暮らし街と住まいの解説者中川寛子

住まい選びは街選びから始まる。どんな街に住み、どんな人たちとふれあうかによって、毎日の過ごし方も家族の思い出も変わる。将来にわたって安心して心地よく暮らせる街選びの秘訣を中川寛子さんに伺った。

住民に大事にされているか、実際に街を歩いて観察する

足まわりの便が良く、買い物にも便利な街が一般的には住みやすい場所だと考えられるが、街選びの基準は利便性だけではない。家族構成やどんな暮らし方、どんな人間づきあいがしたいかなどによっても街に求めるものは変わる。我が家にふさわしい街かどうかを見極めるには、その地を訪れて自分の目で街並みや人々の営みを観察することが大切だ。どんなタイプの人たちが多いのか、住んでいる人たちが自分の街を大事に思っているかどうか、歩道や公園、商店街などを散策すればそれとなく感じることができる。
「並木がきれいに保たれている、道路にゴミが散らかっていないなど、住民に大切にされている街は古くてもきれいですね。また、みんなが協力して掃除やイベントをするといった地域活動を通してお互いの交流があります。そうした街の住民は夜中に大きな音を立てるような近所迷惑になる行為はしないものですし、不審な人物や不届き者は自ずと入りにくい雰囲気になります。子育て世代の方にとっては公園が交流の場になるので、公園にいる親子がどんな言葉遣いでどんな会話をしているのかもさりげなく確かめてみましょう」と中川さんは語る。
一方、まとまって開発された分譲住宅には、古くからある住宅街では得られない魅力がある。
「統一された街並みが美しいですし、近隣との距離感や視線の外し方、エリア内の道路の作り方、防災、植栽、ゴミ置き場など、計画的に開発されているからこその住みやすさがあります」と中川さん。
同じタイミングで入居する家族が多いため、子どもに友達ができやすく、親同士のコミュニティが作りやすいのもメリットだろう。

地震に強い街選び、地盤の強さも要チェック

災害時、住まいは家族を守るシェルターとなる。特に地震国日本では、建物の耐震性と同時に立地の地盤についても知っておきたい。中川さんによると、地形と地質、地盤の固さには関連があり、単純に言えば新しい地形は軟らかく、古い地形は固い。従って土地がいつ作られたかを知れば、地盤の固さが想定できるという。
「最近では地盤調査の結果がインターネットも含め、多く公開されていますから、そこから推察するといいですよ。たとえば物件を見に出かけた先で、その土地の地盤が心配になったら、今はその場でスマホやタブレットで検索して調べることもできるのです」
そう言って中川さんが勧めてくれたのは、「20万分の1日本シームレス地質図」(産業技術総合研究所)だ。サイトを開き、「地質図の表示」をクリックして見たい地域をクローズアップする。そして画面右下に出てくる方位マークをタップすると現在地にマーカーが立ち、そのマークをタップすると解説文が出てくる。
国土交通省のサイトで各種自然災害のハザードマップも見ておこう。自然災害による被害を予測して、その被害範囲が地図上に表わされている。いずれにしても、土地の特性を知った上で、適切な対処をして家を建てることが重要だ。

我が子にとっての故郷になるという視点

子どものいる家庭であれば、子育てがしやすい街かどうかも気になるだろう。ただ、何をもって子育てに良いと判断するか、答えは一律ではない。たとえば自治体のサポートを見ても、乳幼児への子育て支援が手厚い場所もあれば、教育に力を入れている場所もある。近くに伸び伸びと子育てができる大きな公園がほしい人もいるだろう。まずは自治体のホームページでどんなサービスや施設があるのかを調べてみたい。複数を見比べると、自治体ごとに差があることがわかるはずだ。
「ただし、子どもを巡る状況は、乳幼児、小学生、中学生、高校生と成長するにつれてニーズが変わるので、子育てに関しては短期的な視野に陥らないことが大事です」と中川さん。

乳幼児に手厚いけれど、学童保育が少ない自治体の場合、子どもが小学校に入ったら共働きを続けるのが大変になることもある。将来を見据えて、我が家ならどこを一番手厚くしてもらいたいかを明確にした上で、その条件にふさわしい街を選ぶといい。
「子育て世代の方にお話しするときに私が必ず言うのは、『選んだ街がお子さんにとっての故郷になる』ということです。街にはそれぞれ違った景色や人間関係、お祭り、神社、食べ物などがあります。それらが子ども時代の原風景となり、後の人生に影響を与えます。ですから、大人になって子どもの頃を懐かしむとき、心温まる楽しい思い出がたくさん蘇るような街を選んであげてほしいのです」
自分の子どもの故郷になるなら、あなたはどんな街がいいだろうか。 また、理想の街が見つかったからといって、どんな家でもいいわけではない。安心できる性能や将来の資産価値を見据えた住まいを選ぶことも大切である。

中川寛子(なかがわ・ひろこ)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。その後、一戸建て注文住宅の情報誌の編東京都大田区生まれ。早稲田大学教育学部社会学科卒業。株式会社東京情報堂代表取締役。約30年に渡り、不動産関係の雑誌、書籍、WEBで取材、執筆を続け、セミナーも開催して、地盤・街選びや住まいの買い方、暮らし方についての提案を行っている。著書に「『この街』に住んではいけない!」(マガジンハウス)、「キレイになる部屋、ブスになる部屋」(梧桐書院)、「住まいのプロが教える家を買いたい人の本」(翔泳社)など。日本地理学会会員。日本地形学連合会員。

20年後、30年後を見すえながら、永く快適に暮らせる住まいの条件住まいのナビゲーター大塚有美

分譲住宅を賢く選ぶために、どんな視点で考えたらいいのだろうか。
永く快適に暮らせる住まいの条件について、多くの住まいを精力的に取材している大塚有美さんに伺った。

●分譲住宅の場合、「まち」選びも大切です。ポイントとなるのはどんなことでしょうか。

まず、周辺環境ですね。通勤・通学などの交通面、医療や教育など生活に必要な要素が点在し、まちが将来も成長し続けるかどうかがポイントです。気をつけたいのは、分譲地周辺の用途地域。準工業地域などに指定されている地域があると、将来、周辺の環境が変わる可能性があるからです。
また、昨今は大きな自然災害が多発しています。分譲地はあらかじめ地盤が整備され、インフラも整えられていますが、そこがどんな地盤なのかをしっかり把握しておくことも必要でしょう。
さらに、自治体によっては子育て支援に力を入れている場合がありますから、そうしたサポート体制を活用するという視点で選ぶのもいいですね。

●住まいを選ぶ際、何を基準に考えたらいいでしょう。

やはり、基本性能がしっかりしているかどうかを見極めることでしょう。日本の住宅も品質が向上しており、今は、建築基準法を上回る家も珍しくありません。さらに厳しい基準も設けている「住宅性能表示制度」を利用した家や「長期優良住宅」の認定を受けている住宅は、基本性能が客観的に判断できますから、安心できます。
また、住まいは建てたときがマックスではありません。そこから暮らしがスタートし、住まいも歳月とともに成長していきます。その間には当然メンテナンスも必要ですから、保証やサポート体制が充実しているかも大きなポイントとなるでしょう。

●では、永く快適に暮らすことができる住まいの条件について教えていただけますか。

それには、6つの条件があると考えています。
❶ まず基本性能ですね。耐震・耐風性、耐久性、耐火性、断熱・気密性、防音・遮音性、防犯性など、先ほど述べた住宅性能表示制度を利用したり、長期優良住宅の認定を受けることもその一つです。
❷ 快適な暮らしのための通風・採光も大切です。住まいは何より快適でなくてはなりません。窓の位置や大きさに工夫がある、中庭などを設けるなど、光や風といった自然を感じながら暮らすことも、快適性につながります。
❸ 広がりを感じられる空間づくりも必須条件。個室は狭くても家族が集まるリビングは広いなど、メリハリがあると空間が豊かに感じられます。
❹ 将来のリフォームに対応できる構造であることも重要ですね。家族構成や暮らし方が変化したときに、制約が多いと必要なリフォームが実現できません。
❺ 性能を保つための適切なメンテナンスも必須条件。耐久性の高い素材を使っていても、メンテナンス次第で寿命が変化します。先ほども述べたように、定期点検から補修まで、きちんと対応してくれる体制が整ったメーカーなら、より安心でしょう。
❻ そして、6つめは住まいに対する愛着です。分譲住宅も、間取りに工夫が施されています。そこにお気に入りを見つける、あるいは全体として飽きのこないデザインになっていれば、愛着も深まり、住まいを大事にしようという気持ちが保てるはずです。

●6つの条件を満足する分譲住宅を見つけるために、アドバイスをお願いします。

20年後、30年後を意識して住まいを考えていただきたいですね。できれば、家族みんなで将来について話し合い、どんな暮らしが望ましいのか、そのためにどのような住まいがいいのかを確認しておくことをおすすめします。
また情報収集をして、住まいについて勉強することも大切でしょう。それが自分たちにふさわしいまちや住まいを見極める目を養うことになるからです。

大塚 有美(おおつか・ゆみ)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。その後、一戸建て注文住宅の情報誌の編集部門で家づくりの流れを解説する企画をはじめ、住宅メーカーの情報、インテリア、設備機器などを取材しながら、多数の建て主に接し、生活者、住む人の視点で、「いい家」とは何かを追求。独立後、「住宅とその周辺」をテーマに取材、執筆活動を行う。住む人、使う人の立場に立ってやさしく解説することを心がけている。

片付け上手になるヒケツは?建築家多田祐子

モノが捨てられなくて収納に困っている、片付けが苦手で何から手を付けていいかわからない...。
そんな悩みを解決して、すっきり美しい暮らしを実現するために、まずは頭の中の整理整頓から始めよう。

好みの住空間イメージを言語化して明確に把握する

 気がつくといつのまにかモノが増えてリビングにあふれ、いつも雑然としている...。そんな状態に悩む家庭は多いだろう。話題の「断捨離」を決行し、不要なモノを思い切って処分したいけれど、どれを残してどれを捨てればいいのやら迷うところだ。
 それに、家族の思い出の品や滅多に使わなくてもずっと大事にしたいものだってある。モノと上手に付き合って、美しく快適に暮らすためには、どんなことを心がければいいのだろうか。
 建築家であり、セラピストとしても活躍する多田祐子さんは、自分がどんな空間で暮らしたいのかにまず気づいてほしいという。
「部屋が片付かないのは、実は頭の中が雑然としているからなのです。まず頭の中を片付けるために、自分が憧れる住まいのイメージを言語化してみましょう。たとえば『白い雰囲気の清々しくて透明感がある部屋に住みたい』、『アンティークな家具や調度品が似合うダークな雰囲気の部屋が好き』というふうに。するとその空気に似合わないモノが浮かび上がり、必要なものと不要なものを取捨選択できるようになります」

 多田さんは自分が目指したい暮らしのスタイルを見極める練習として、雑誌やネットで見つけたいろんなお気に入りの住空間の写真を切り抜き、スケッチブックに貼ってみることも勧めている。写真に添えられたタイトルやフレーズなど、空間を形容する文章も一緒に切り貼りしておくのがコツ。こうすることで今まで漠然としていた自分の好みの空間イメージが具象化され、明確に把握できるようになる。そしてインテリアに対する感性も磨かれていくという。
「センスを磨くとは、ムダをそぎ落としていくことに他なりません。頭の中が整理整頓されると、モノを選ぶときも軸がぶれなくなり、結果として家の中に余計なものが増えなくなります」

「小掃除」「中掃除」で生活を見直す習慣を

 上手な整理整頓の秘訣は、時間を区切って所有しているモノを見直し、未来を見つめながら過去を整理することだと多田さんは考えている。そこで年末の大掃除だけでなく、一日の締めくくりに「小掃除」、四季折々に「中掃除」をする習慣も提唱している。
「その日の終わりにほんの10分でいいから、散らかった部屋をざっと片付ける小掃除の習慣をつければ、毎日に区切りが生まれ、生活を見直すことができます。また、昔の日本は季節ごとに床の間の掛け軸を掛け替え、夏と冬で建具も取り替える伝統がありました。これに習い、四季の節目に中掃除と称して、衣替えだけでなく、季節物の調度品やしつらえを手入れし、入れ替える文化の日にしてはどうでしょう。たとえば『蔵』のような大収納空間があれば、我が家の文化の懐も深くなりそうですね」

包容力のある収納空間が心にもゆとりをもたらす

「蔵」のような大収納をつくるという発想は、日本の伝統でもあると多田さんは言う。
「昔の日本家屋には、季節物やふだん使わないものをまとめて収納しておくために、蔵や納屋のような別棟の大収納がありました。また、武家屋敷を見るとわかりますが、和室の天井が低く、屋根裏が今でいうロフトのような収納空間になっています。ミサワホームの『蔵』は、こうした役割を住まいの内部に取り込んだもので、日本の暮らしの理にかなっています」
 それに、散らかったものをきちんと分類して適所に収納しなければならないと思うと、片付けが億劫になるものだ。とりあえず一時的にでもいろんなものを一緒くたに放り込んでおけるこんな「何でも部屋」がひとつあれば、掃除もしやすいし、気持ちもラクになる。
「たとえばリビングのそばに大収納があれば、散らかっているときに突然の来客があっても慌てないですみます。そこにザザッとモノを押し込んで、何気ない顔をしてゲストをお迎えすればいいんですから」と多田さん。
 包容力のある収納空間が拠り所となってストレスが解消され、日々の暮らしにも住む人の心にもゆとりをもたらしてくれるのだ。

多田祐子(ただ・ゆうこ)

2000年、多田建築設計事務所を設立。お客様の思いを読み取り、7年先のライフスタイルを見据えた設計に定評がある。和の造作を色や音楽に落とし込み現代の空間に融合させカタチにできる数少ない建築家として活躍。街を活性化させていく「地域住民の交流」や「文化活動の拠点」となる空間づくりにも力を注ぐ。「美しく住まう」「整理整頓をしながらセンスを磨こう」などをテーマとした講演家としても活躍。

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
  • わが家の建てどきガイド
  • 資金計画タイプ別診断 あなたの資金の傾向をタイプ別で診断!

PAGE TOP