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環境・健康・安心をつくるエクステリアの役割1級造園施工管理技士鷲見 法泰

ミサワホームにおけるエクステリアのスペシャリスト(1級造園施工管理技士)鷲見法泰さんに、エクステリアの役割や、エクステリアを整える意味、そして、ミサワホーム独自のエクステリアの設計手法についてうかがった。

── エクステリアとは、住まいに対してどのような役割を果たすものなのでしょうか。

鷲見 ひと言でいうと、住まいをより心地よい空間にすることです。「住まいに対して」とおっしゃいましたが、そもそもエクステリアと建物とを分ける必要はありません。作業の効率や専門性などから便宜的に分けているだけで、本来は建物の設計と一緒に考えることが理想です。たとえば庭に植えた樹木の緑は、それだけでも自然の心地よさを味わえますが、室内からどのように見えるかを想像しながら間取りや窓の大きさを設計することで、住まいという空間が、さらに心地よいものになるのです。

── ミサワホームが考えるエクステリアには、どのような特長があるのでしょうか。

鷲見 環境をデザインすること、健康をデザインすること、そして安全・安心をデザインすること。この3つの要素を大きな柱としていることが特長です。「微気候デザイン」という設計手法を取り入れていることも他にはありませんね。微気候デザインでは、陽射しや風などの住まい周辺の局地的な気候をコントロールしたり、植物に備わる温度調節機能を利用して、空気を冷やしたり、風のないところに風をつくり出したりということも行っています。庭と建物を一体として設計すれば、樹木がつくり出した風を室内に送ることができますし、それによってエアコンの稼働率を下げられますから、より健康的な暮らしができます。

── まさに環境と健康をデザインしているわけですね。

鷲見 五感で四季を楽しみ、身近な自然に親しむことのできる住まいは、ストレスを軽減し、地域のコミュニケーションも育みます。これもまた健康をデザインすることのひとつですね。

── 安全・安心のデザインは、どのようなことなのでしょうか。

鷲見 防犯性を高める工夫をトータルで考え、法令や設計基準書を遵守し、外からは見えない構造部にも目を配った安全設計などを行っています。わかりやすい例を挙げるなら、たとえばブロック塀ですね。弊社の場合、ブロック塀でも必要に応じてしっかりと構造計算を行った断面図を使用し、施工をしています。そうした安全性へのアプローチも、住宅メーカーだからできることのひとつといえるでしょう。

── 他にも住宅メーカーとして大切にしていることはありますか。

鷲見 植物が生きるのにもっともよい土壌である「表土」の保全ですね。1cmの表土ができるまでには100年以上もの時間が必要です。住宅の建替えの際、一般的には表土が捨てられるケースが多いのですが、土壌育成のために可能な限り表土は残したいですね。

── 都市部の住まいのエクステリアについてはいかがでしょうか。敷地面積に制約があることも多く、緑を取り入れることをあきらめている方もいらっしゃいます。

鷲見 たとえば、駐車スペースのコンクリートにスリットを入れて、そこに緑を植えるだけでもずいぶんと違います。また、駐車スペースやアプローチなどに透水性、保水性のある素材を使えば、雨水が浸透することで地下水の枯渇を軽減して環境保全になったり、水が蒸発するときの気化熱で温度を下げることができたりします。これも微気候デザインの応用です。

── 自然をうまく取り入れた快適なエクステリアは、環境保全にもつながりますね。本日はありがとうございました。

写真は、海外の一流ガーデンデザイナーたちと競い合った浜名湖花博ワールドコンペティションで、グランプリを受賞した鷲見さんデザインのエクステリア。禅の思想「和敬清寂」をキーワードに、「本来の自分に還る場所」「日本人の心の奥底」「日本の美しい景色」を表現している。

鷲見法泰 (すみ・のりやす)

ミサワホームのエクステリア部門を担当する、ウィズガーデン(株)設計建設部部長。2004年の浜名湖花博で開催された「ワールドガーデンコンペティション」に日本代表として参加、グランプリ(しずおかガーデン日本大賞)を受賞。

住まいの「レジリエンス」はどう備えるべきか東京大学大学院教授清家 剛

レジリエンス性にすぐれた住まいとは、具体的にどのような家なのか。 求められる性能や、必要な機器、ZEHとレジリエンスの密接な関係性などの話を 官公庁の建物における耐震基準の策定にも携わる東京大学大学院の清家教授にうかがった。

──2019年度の国のZEH支援策の中に「ZEH+R(レジリエンス)」という新しい区分ができるなど、今、「レジリエンス」という言葉が注目されています。レジリエンス性にすぐれた住まいとは、どのようなものでしょうか。

清家 ひと言でいえば「しぶとい家」です。理想をいうならば、普段の快適性を緊急時でも維持できる住まいなのですが、実際に実現するのは簡単ではありません。現実的に考えると、普段は快適で、その快適性をもたらした実力で非常時にもなんとかしぶとく暮らせる家、それがレジリエンス性の高い住まいといえるでしょう。

──具体的にはどのような性能が必要でしょうか。

清家 まずは高い耐震性ですね。かつては建築基準法で定められた基準さえクリアしていればいいという考え方が多かったため、すぐれた耐震性の家を建てようとすると、大きなコストがかかるといった問題がありました。ですが、阪神・淡路大震災以降、世の中の防災意識が非常に高まったこともあり、近年では、単に基準を満たすだけでなく、地震時の建物の変形を少なくして、内装もめったに壊れないという高いレベルの耐震性能をめざしている住宅メーカーも増えてきました。耐震性にすぐれた住まいが以前よりも手に入れやすくなっていると思います。

──耐震性能の他に求められる性能は何でしょうか。

清家 高い断熱性も大切な要素です。たとえば冬季に災害が発生して電気などのインフラが停止した場合でも、断熱性の高い建物なら人が発する熱だけでもある程度の室温が確保できます。直前まで稼働させていた暖房の熱で夜をしのいだりすることも可能です。

──先生は実際に被災地に赴いて被災状況を検証する機会も多いそうですが、やむなく避難所に避難される方と、自宅でなんとか過ごせる方とでは、暮らしにはかなりの違いがあるのでしょうか。

清家 違いはとても大きいですね。常に他人と一緒にいる避難所の暮らしは、精神的にも肉体的にも大きな負担になります。仮設住宅に移れるとしても、早くて3カ月後。移った後も、仮設住宅では、広さも限られていますし、隣家の物音が壁を通して聞こえやすいため、なかには隣に遠慮してトイレを我慢するといった方もいて、皆さんご苦労されています。

──自宅での避難生活と比べると、非常に厳しい環境といえますね。

清家 レジリエンス性にすぐれた住まいに必要な要素はもうひとつあります。太陽光発電などの創エネ機器ですね。普段はつくった電気を売電することで家計の助けになり、インフラが停止した災害時には、電源となって電気製品が使えます。再生可能エネルギーを使用することで環境保護に貢献できるというメリットもありますね。

──断熱性や創エネなどは、世界的な住まいの潮流となっているZEHにも必要な要素ですね。

清家 レジリエンス性にすぐれた住まいとZEHは、とても親和性が高いといえます。言い換えると、ZEHはレジリエンス性にすぐれた住まいにしやすいということです。ちなみに、ゼロ・エネルギー住宅という考え方は、再生可能エネルギーの拡充にシフトするという世界的な流れのなかで、住まいに何ができるかという観点からスタートしたもので、国も本格普及に向けた後押しをしています。最終的にめざしているのは、「LCCM住宅」ですが、ZEHはゼロ・エネルギー住宅のいわば標準という位置付けといえるでしょう。

──先生は一般社団法人日本サステナブル建築協会の「レジリエンス住宅チェックリスト※」の監修もなさっていますね。

清家 平常時の「免疫力」、災害発生時の「土壇場力」、災害後の「サバイバル力」という3つの観点から住まいのレジリエンス度を確認しようというチェックリストです。

──チェックリストには、「災害時に出先から帰宅する方法を検討しているか」や、「階段や廊下で転ばないための対策の有無」、「運動や体力維持に努めているか」など、防災や健康に対する意識を確認する設問も多いですね。

清家 たとえば、災害時に冷静な判断を下して、瞬発力のある対応をするためにも、健康は大切です。インフラの復旧を待つ間も、体力的な不安を感じにくくなるはずです。普段暮らしている家の中には、身体に負担をかけていたり、思わぬ事故の原因が潜んでいたりすることがあります。防災や日頃の健康に意識を向けることも、住まいのレジリエンス性を高めることにつながるのです。

──平常時、災害発生時、災害後と、それぞれの健康リスクや災害リスクを理解して、その備えとなるよう考えて住まいを設計することが大切といえそうですね。本日はありがとうございました。

※ 健康を支え災害に備える住まいと暮らし「CASBEE レジリエンス住宅チェックリスト」
http://www.ibec.or.jp/CASBEE/cas_home/resilience_checklist/index.htm

清家 剛(せいけ・つよし)

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 教授・博士(工学)建築構法を専門分野として、建築生産に関わる環境負荷評価に関する研究などを手掛ける。官庁施設の総合耐震計画基準など、公的な基準類の制定に関わる多くの委員を歴任。

住まいができる防犯対策を知ろう!一級建築士・総合防犯設備士相川 隆

1日あたり約101件※も発生しているという、住宅を対象とした侵入窃盗被害。
ふだんの暮らしのなかで、どのように住まいの防犯対策に取り組めばいいのだろうか。
防犯について、専門に研究を続けているミサワホーム総合研究所の相川隆主幹研究員にうかがった。

──最近の被害の実態を教えていただけますか。

相川  住宅が対象の侵入窃盗の認知件数は平成16年から減少傾向にあります。 とはいえ、平成29年の認知件数は約3万7千件。 約15分に1件のペースで被害が発生している計算ですから、誰にとっても他人事ではないですね。

──減少理由を教えてください。

相川  警察庁や国土交通省がともに「安全・安心まちづくり」の推進をしてきていますが、平成15年以降、官民協力して「防犯性能の高い建物部品」の開発が進み、平成18年度の住宅性能表示制度の改定では、評価項目に「防犯に関すること」が追加されました。 現在では、一定の基準を満たしたサッシやドアなどに、「官民合同会議」で認定された「防犯性能の高い建物部品」のみ使用できる「CPマーク」が貼付されるようになりました。 今も、住宅機器メーカーは防犯性能に目を向けた開発に力を入れています。 また、自主的にまちの見回りを行う防犯ボランティアの方々が増えたことなど、幅広い取り組みが減少の理由として考えられますね。

──具体的な防犯対策として思い浮かぶのは、高い塀にぐるりと囲まれ、他人が容易に侵入できない家ですが。

相川  そのような家は、いったん敷地に入ってしまえば、周囲の視線を気にすることなく犯行が可能ですから、むしろ狙いやすい家といえます。 侵入盗は人に見られることを最も嫌います。 そのため、敷地に入ってから建物内に侵入するまでの一連の動作が、周囲から見えにくい家を狙うのです。

──防犯ボランティアなどの地域のつながりが被害件数の減少に貢献するのは、侵入盗が人の目を恐れるからなのですね。

相川  たとえば、外構がオープンな作りになっている家は、道路からの見通しが確保されているため、周囲の人の目が届きやすいですよね。 侵入盗にとっては、狙う家を物色するための敷地内の様子をうかがう行動や、敷地に入り込もうとする不自然な姿、敷地に入って建物に侵入する行動も周囲から見えやすくなってしまうわけです。

──ブロック塀で囲んだ閉じた作りだと、夜も窓の明かりが塀で遮られて道路が暗く、侵入盗が姿を隠しやすいですね。

相川  家人の不在を周囲から不審に思われずに確認できる家も、狙われやすいといえます。たとえばインターホンの位置。 門扉についていれば、インターホンを押す姿が周囲から見えます。返事がないのにもかかわらず、敷地に入って行けば、当然不審に思われてしまいます。 対して玄関にインターホンがあると、侵入盗は誰からも不審がられずに玄関の前にたどり着くことができます。 そこからさらに、侵入しやすい箇所を探すために家の裏手に回ろうとする場合も、途中に木戸などがあれば、入ることに抵抗を感じますが、何もなければ、すっと入って行けます。 侵入盗はそうした違いを一つひとつ見ながら、狙う家を定めるのです。

──侵入盗側の視点に立つと、狙われやすい家がわかりますね。

相川  プライバシーを守ることも大切ですから、オープンにすることに限界がある場合は、防犯カメラの設置もおすすめです。 侵入盗は光や音も嫌います。センサーライトや警告音で侵入盗を威嚇するとともに、音声で知らせるセンサーや受信機なども有効ですね。

──防犯カメラ作動中というステッカーも効果がありそうですね。

相川  狙われにくくする以外にも、防犯性能の高い建物部品を使うなど、建物の中に入りにくくする工夫も大切です。 また、侵入盗は、なるべく短時間で犯行を済ませたいと考えますから、貴重品は探すのに時間がかかる場所にしまったり、分散したりしておけば、万が一侵入されても、被害を最小限に食い止められます。

──侵入窃盗の被害に遭うのは、〝運〞の問題だけではないのだと感じます。

相川  被害に遭っても対策をせず、再び侵入されてしまったという例もあります。ちょっとした防犯対策の積み重ねによっても、侵入盗に狙いにくいと思わせる効果があるのです。

──日頃から防犯意識を持つことはとても大切ですね。本日はありがとうございました。

※「平成29年の刑法犯に関する統計資料」(警察庁)より作成

相川 隆(あいかわ・たかし)

株式会社ミサワホーム総合研究所フューチャーセンター 市場企画室スマートホーム研究PJ 兼デザインセンター 空間デザイン研究室主幹研究員 一級建築士・総合防犯設備士

将来も安心できる賢い住宅ローンの借り方ファイナンシャルプランナー久谷真理子

さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っている今、住宅ローンの選択肢も広がっている。
とはいえ、どんなことに気をつけて選べばいいのかわからないという方も多いはず。
住宅ローンの選び方や資金計画について、ファイナンシャルプランナーの久谷真理子さんに伺った。

●住宅ローンを利用する際に、気を付けておきたいポイントとは何でしょうか。
久谷 利用する際の大切なポイントは4つあります。1つめは「条件のいい住宅ローンを選ぶ」ことです。金融機関ごとに、金利はもちろん、ローン保証料や事務手数料、団体信用生命保険の保険料やその商品内容などが異なります。借入後のメンテナンスのしやすさにも着目することをおすすめします。たとえば、繰り上げ返済の手数料を確認することも大切です。住宅ローンは、金利以外の面でも差が出ます。きちんと比較して賢く選びたいですね。
●住宅ローンとひとくちに言っても条件が違うのですね。

久谷 2つめは「使い勝手のよい住宅ローンを選ぶ」ことです。土地を購入して住まいを建てるという場合には、建物工事着手前の土地代金の支払いをはじめ、建物工事請負契約の契約金、着工金、中間金や最終金など、工事状況の各タイミングで支払いが必要になります。融資が実行されるタイミングも各金融機関や住宅ローン商品によって異なりますので、それぞれの特長をよく把握して、使い勝手のよい住宅ローンを選びましょう。

●初めての住宅ローンでは、必要な手続きを把握するだけでも大変です。ひとつの窓口ですべてが行えるのは、とても安心です。
久谷 最近では金融機関の顧客獲得対策の一環として、住宅ローン商品にもさまざまな工夫が行われています。たとえば、住宅ローンの返済を一定期間保障したり、残債をゼロにする疾病保障付き団体信用生命保険や、若年子育て世帯や地方への移住世帯等に対し、一定期間借入金利を引き下げる制度を用意した住宅ローンもあります。金融機関ごとのこうした特長も、住宅ローンを選ぶときのポイントですね。
●人生100年時代と言われている中、人生に訪れる予期せぬ転機も増えていると言えます。そうした事態にも対応できる住宅ローンは、ときに人生の選択肢を増やしてくれる頼もしい味方にもなりそうですね。
久谷 3つめは「ライフプランをしっかりと立てる」ことです。子どもの成長に伴う教育費の負担、定年によるリタイヤなど、人生にはさまざまなライフステージの変化があり、収支のあり方も変わってきます。子どもが幼いときは家計に余裕が生まれやすいものですが、そのときの余裕に合わせてローンを利用すると、教育費の負担が増えるにつれてローン返済を負担と感じる可能性があります。

●支出のピークがどのタイミングに訪れるのか、ピーク時にゆとりを持って対応できるか。そうしたことを考えておくべきですね。
久谷 40代で35年ローンを利用する方は少なくないですが、完済時の年齢は70代後半になります。ローン自体は繰り上げ返済や退職金で返せたとしても、老後の生活費についてもしっかりと考えておくべきです。将来の見通しを立て、それに合わせた資金計画を立てることが大切ですね。
●ライフプランは一人ひとり違うもの。住宅を手に入れることは、自身のライフプランを改めて見直すよい機会にもなりそうです。
久谷 4つめのポイントは、資金に優先順位をつけることです。住宅ローンを最優先にしてしまうと、たとえば家族の一番の趣味だった旅行を我慢しなければならなくなるなど、楽しみの少ない生活を強いられることになってしまうかもしれません。また、住宅ローンを払っているから貯蓄ができないといった状態には要注意です。お金の使い道は他にもあることを考えて、住宅ローンと貯蓄はセットで行うという気持ちをもちたいと思います。
●暮らしを豊かにするためにも、万が一に備えるためにも、ゆとりを持った資金計画が大切なのですね。ありがとうございました。

久谷真理子(くたに・まりこ)

相続・不動産コンサルティングのFP会社「株式会社フリーダムリンク」専務取締役。住宅ローンや相続・不動産などの相談および実行支援業務のほか、各種セミナーの講師を務める。ミサワホームのWebサイトでも「住まいとお金」について連載あり。

住まいの「強さ」を実現する技術とは明治大学梶川久光准教授

住まいにおける強さとは? そしてその強さを実現する構造とは?
木質構造を専門分野として研究を続けている明治大学の梶川久光准教授に、
強さを実現するための技術について、基礎的なことから教えていただいた。

●固さイコール強さではない?

強い住まい。その表現は、住まいづくりを検討している方なら、一度は聞いたことがあるはずだ。けれど、住まいの強さとは何なのだろう?具体的に考えようとしてみても、頭に浮かんでくるのは、ガチガチに固められた塊のような漠然としたイメージだ。
「固さイコール強さといったイメージを抱いている方は、確かに多いかもしれませんね。けれど、住まいの強さに必要なのは、固さよりもバランスなのです」
 そう語るのは、明治大学理工学部で木質構造建築物を研究している梶川准教授である。
「ひと口に住まいの強さといっても、何に対して強いのかという前提によって強さの種類が違ってきます。地震や台風、大雪に対する強さなのか。あるいは、傾斜地などで高い部分から低い部分にかかる『土圧』に対する強さなのか。住まいにはさまざまな強さが求められます。そういう意味では、ありとあらゆるものに対する強さが必要といえるでしょうね」
 梶川准教授の専門分野は「主に木質構造」である。強い住まいには、どのような構造体が適しているのだろうか。梶川准教授から返ってきたのは、「真のモノコック構造である木質パネル接着工法」という答えだ。
「モノコック構造とは、力を全体で瞬時に分散して受け止める『一体構造』を指します。ジェット機などにも採用されていますが、実は自然界にもある構造なのです」
 卵もそのひとつ。大事なヒナを守る卵の殻は、自然界が生み出した精緻なモノコック構造だ。

●適度な柔らかさが強さを実現

「モノコック構造は、固すぎると、全体でバランスよく外からの力を受け止めにくくなります。少しだけ柔らかいことが必要なのです。ジェット機がしなるようにつくられているのも、それが理由です」
 ジェット機のアルミ合金製の外板は、厚さがわずか1〜2㎜程度。あの巨大なボディの安全性が、そんな薄い外板で実現できるのはなぜなのだろう?
「外板ばかりが強すぎると、外からの力で接合部が先に破損してしまいます。一体構造として最大限の強さを発揮するには、全体でバランスが取れた強さが必要です」
 あの薄さだからこそ、構造体全体での強さを実現できているというわけだ。
「木質パネル接着工法のすぐれた点は、パネル同士を接着剤で強固に面接合していることと、パネルに使用している構造用合板の厚さが絶妙であることですね。加工しやすいギリギリの厚さであり、なおかつ接合部分との強度のバランスも最適になる厚さです。木質パネルはそれ自体の剛性※がきわめて高いですから、構造用合板をこれ以上の厚さにしてしまうと、外力に対して結合部が破損してしまいます。実に絶妙なバランスです」

 2×4工法(枠組み壁工法)や木造軸組み工法でもモノコック構造と呼ばれるものがあるが、違いはあるのだろうか。 「それらは構造部材が面ではなく、点で接合されています。そのため、外力が点接合部分に集中し、全体で分散して受け止めることができません。住まいにおける真のモノコック構造と呼べるのは、木質パネル接着工法だけだと思います」
 モノコック構造となる住まいは、素材に鉄を使っても実現できるのだろうか。
「0.1㎜といった薄い鉄板に置き換えれば不可能ではありません。ですが、重量はかさみますし、熱を伝えやすいため、大量の断熱材が必要になってしまいます。現実的には難しいでしょうね。その点、木は面接着も容易ですから、モノコック構造に向いた素材といえますね」
 木質パネルの強度に着目し、新構法の研究にも取り組んでいる梶川准教授。木質パネル接着工法は、これからも新たな可能性を見せてくれそうだ。

※構造物・構造部材が変形に対して示す抵抗の度合い。荷重と変形の関係を示す曲線の傾きで表される。

梶川久光(かじかわ・ひさみつ)

明治大学理工学部建築学科専任准教授。工学博士。建築構造分野における木質構造建築物に関する研究や、被災度判定計を用いた建築防災技術の研究などを手掛ける。

  • 連載「住まいとお金」ファイナンシャルプランナー 久谷真理子
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