新型コロナウイルスの影響が、社会に大きな変化をもたらしている。
人々の意識や生活はどう変わり、これからの将来はどうなっていくのだろうか。
東京ガス都市生活研究所の研究員お二人にお話しを伺った。
▲東京ガス都市生活研究所では、2020年4月24日~27日で、1都3県在住の男女1,200名を対象に、コロナ禍の暮らしの変化について調査を実施。約75%以上の人が変化を実感という結果に。
── 東京ガス都市生活研究所では、緊急事態宣言下の4月下旬、人々の暮らしの変化についての調査を実施したそうですね。
小泉 仕事や家事、子育て、入浴や睡眠などの日常生活、余暇の過ごし方などを中心にアンケートを取ったのですが、全体の約75%の方が変化を実感していると回答しています。ステイホームが求められ、人に会えない、遊びに行けないなどこれまで普通にできていた生活ができなくなったことにストレスを感じている方が多いですね。
── 具体的にはどのようなストレスなのでしょう。
小泉 年代・性別を問わず、多いのは運動不足によるものです。在宅ワークが必要になったのに自宅に仕事をする環境がないことも。既婚女性からは料理頻度が増えたことという回答も多かったですね。
▲「ストレスに感じていること」という質問に対して、全体の1位は「運動量が少ないこと」だったが、40代既婚女性では「料理頻度が増えたこと」が1位に。家事の負担が女性に偏っていることが見えてくる。
── 外出自粛で家での食事が増えたけれど、その負担が女性に偏ってしまっているのですね。
木村 既婚女性からは、一人になる時間や場所がないということも、ストレスとして挙がっています。どんなに仲のよい家族でも、やはり一人になって気持ちをリセットする時間が必要ですよね。けれど、家族みんなが協力して事態に立ち向かわなければいけないという状況から、一人になりたいという気持ちを持つことにすら罪悪感が生まれているのかもしれません。
小泉 家族が1階にいるときに、自分が2階にいるといった、ちょっとした距離があるだけでもストレスが和らいだりしますから、住環境も影響しそうですね。
▲調査結果から見えてくるのは、ストレス軽減には「ひとりになれる場所・時間を作る」ことが重要と考えながら、実際にはできていないという実情だ。解決には、家事や育児の分担など、家族の協力が必要だろう。
── 暮らしの変化を好ましくないと捉えている方が多いようですね
木村 ですが、自由な時間が長くなったことから、睡眠や入浴の時間などは、むしろ以前よりも取りやすい状況になりました。それをストレス解消の手段としている方も多いですね。
── 家の中でいかにストレスを解消できるか。ステイホームでは非常に重要ですね。
木村 料理時間の増加がストレスになっている一方で、アンケートではおいしいものを食べることがストレス解消の上位になっています。家族で一緒にお菓子作りや料理をするなど、暮らしの変化を楽しもうという姿も見られました。
── 工夫次第で、ストレスの原因が楽しさにもなるわけですね。
小泉 そのための試行錯誤を始めた方も多いです。家の中に仕事のネット環境を整えたり、新しい家具や室内で使える簡単な運動器具を購入したり。楽器などの趣味のモノも売れているようです。
── 一方で、ごみ処理施設に持ち込まれる粗大ごみの急増など、いわゆる断捨離も話題になりました。
木村 自分にとってネガティブなモノを手放して、ポジティブな気持ちになれるモノを手元に置きたいということでしょう。収納にしまう場合も、モノの数をある程度絞ったほうが、使いたいと思ったときに出しやすくなります。使い勝手をよくするためにも断捨離が必要だったのではないでしょうか。
小泉 モノを詰め込んだ収納は、中に何があるかさえ忘れてしまいがちです。しまったモノが見えるかどうかはすごく重要。使うことを目的にしないと、せっかくの収納が活かせなくなります。
── 家族が一緒になってゲームを楽しむために、リビングを片付けた人がいるという話も聞きました。
小泉 自分が一番楽しめることにスペースを割きたいということですよね。私たちの過去の調査では、2017年頃から仕事よりも余暇を大切にするという流れが明確になっています。家での暮らし方が以前にも増して重要になりつつあります。今回の事態は、それを一気に加速させたといえるでしょう。
── 増加する「おうち時間」が、快適になるのか、ストレスになるのか、住まいの役割は今後ますます重要になりそうです。
小泉貴子(こいずみ・たかこ)
東京ガス都市生活研究所 統括研究員 一級建築士
生活者行動・意識を基にした住宅空間、空間コンセプト提案に従事。
現在は、住まい、働き方、生活者に関する研究を担当。
木村康代(きむら・やすよ)
東京ガス都市生活研究所 研究員
2007年より東京ガス都市生活研究所にて生活者研究を担当。
主な研究テーマは、生活定点観測調査、都市生活研究所オリジナル世代区分『食・世代』など。
東京ガス都市生活研究所
東京ガスの社内シンクタンクとして1986年に発足。
「生活者にとって本当に価値がある暮らし」のための研究・調査や提言を行っている。
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