大きく変わりつつある社会のなかで、これからの住まいは、子育ての場としてどうあるべきなのだろうか。 育児誌の編集長として、専門家や子育てファミリーへの豊富な取材実績を持つ江口祐子さんにお話しを伺った。
── コロナ禍の社会変化は、親子の関係にも影響を与えているのでしょうか。
江口 確実に影響していると思います。在宅ワークの増加などで親子が一緒にいる時間が長くなったため、以前よりも仲良くなったという家庭があります。その一方で、今までは気にならなかった細かいことまで目についてしまい、つい子どもを叱りすぎたり、親子げんかが増えてしまったりという家庭もあるようです。家族のあり方が二極化しているという印象です。
── 子育てには親子の距離感が大切といわれていますが、大人にとってもストレスを溜めない程よい距離感が必要かもしれませんね。
江口 他にも、ある程度のルールを決めておくことが必要だと思います。こういうときは叱るけど、こういうときは見守っていようといったルールです。今は家事も子育ても夫婦でシェアする時代ですから、そのためのルールづくりも大切ですね。また、夫婦といえども育った環境は違いますし、あえて口にしてこなかった小さな生活習慣の違いなどもあると思います。そうした価値観の違いを見直すためにも、たとえば、我が家にとっての新しい常識、我が家の信念のようなものを、「家訓」としてつくってみるのもいいでしょう。
── 社会の変化に伴い、子育てについてもこれまでとは違う意識が必要なのでしょうか。
江口 家事や子育てをみんなでシェアする。それが一つのキーワードになると思います。親子で家事を楽しくシェアできれば、会話も増えますよね。また、子育てについても、家族という単位を超えて、たとえばママ友など、共感できる人をどんどん巻き込んでシェアする。そうすることで親も気持ちが楽になり、子どもも親以外の大人と触れ合うことで成長します。
── ママ友同士で、何かを頼み合ったり、子どもを預け合ったり。
江口 それが気軽にできるためには、子育てや家事をシェアしやすい環境が住まいにあること。たとえば、人が入りやすい少しオープンな家の方がいいでしょうね。
── 人を迎えやすい家とはどんな住まいでしょうか。
江口 子どもがいれば絶対に散らかりますから、来客時に片付けやすい家がいいですよね。一気に片付けられる大きな収納があると便利だと思います。けれど、完璧にキレイにしなければと気負う必要はありません。子どものいる家の片付けが大変なのは、ママ友同士なら理解し合えます。プロの家庭教師のなかには、部屋が適度に雑然としている方が、子どもが伸びるとおっしゃる先生もいます。本やおもちゃなど、知的好奇心を喚起するものが子どもの視界にあるような、そんな環境ですね。
江口 最近の取材では、多くの先生が「今は正解のない時代だ」とおっしゃっています。そんな時代を生き抜いていける子に育てること。それがこれからの子育てのテーマです。目標を立ててゴールを目指しても、それが正解とは限りませんから、失敗しても、もう一回立ち上がっていけることが大事です。そこで必要なのは、大人が安全で安心な環境をつくり、失敗しても笑顔で見守ってあげること。失敗しても、大丈夫、また挑戦すればいい。そんなふうに思わせてあげることが大切です。
── リラックスできる家なら、大人にも、笑顔で見守る余裕をもたらしてくれそうです。
江口 子どもにとって住まいが果たす役割は、食事や睡眠、学びの場などさまざまですが、何よりも大事なのは、子どもの心が安定し、心身ともに健やかに育てられる場所であることだと思います。
── 心から安心できる家。それは社会がどんなに変わっても、変わらない住まいの役割なのかもしれませんね。
江口祐子(えぐち・ゆうこ)
生活情報誌や一般書籍の編集を経て2009年より「AERA with Kids」編集部へ。教育専門家、小学生を持つ読者の取材を重ねる。2018年より編集長。中学2年生の女子の母。
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